映画美学校アクターズ・コース ブログ

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映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。アクターズ・コース俳優養成講座2023、9/1(金)開講決定!

【講師リレーコラム】演じることについて|深田晃司[映画監督]

今回の講師は、最新作『淵に立つ』が第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞された深田晃司さん。
俳優養成講座では、俳優自身が創作し、撮り/撮られる「映画創作ワークショップ」を担当します。

私たちはなぜ映画を作るのか?なぜ演じるのか?なぜ表現するのか? そこには目に見える成果を得るだけではない何かがありそうです。

映画監督の目から見た「演じること」の魅力について、深田さんが語って下さいました。
それではどうぞー!

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 以前、ある映画で身体障害者の役をオーディションで募集したことがあった。  
 それは全身麻痺に近い状態、正確には遷延性意識障害というのだけど、そういった障害を持った十代の女性の役で、おかげさまでオーディションにはたくさんの応募を頂き、二日に分けて数十人の俳優たちと対面することとなった。  

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アクターズ歴代TA座談会!佐野真規さん(第1期TA)、石川貴雄さん(第2期TA)、しらみず圭さん(俳優育成ワークショップTA)その1

こんにちは、広報アシスタントの川島です。

今回はアクターズ・コース生をサポートしてくれる頼れる味方、TA(ティーチング・アシスタント)を務めて下さったみなさんにお話を伺いました!

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集まっていただいたのは、フィクション・コースの修了生であり、第1期TAの佐野真規さんと第2期TAの石川貴雄さん、アクターズ・コース第4期修了生であり、俳優育成ワークショップTAのしらみず圭さん。そして俳優育成ワークショップ修了生である私、川島を含めて、アクターズ・コースの裏話をたっぷりお話ししてまいりました。

それではどうぞ~!

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7/9俳優養成講座募集ガイダンスレポート

 7月9日、俳優養成講座第2回目の募集ガイダンスが行われました!

この日の担当講師は、脚本家・映画監督であり、アクターズ・コース主任講師の井川耕一郎さん。また、修了生として4期修了生のしらみず圭さん、俳優育成ワークショップ修了生の私・川島が登壇いたしました。

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登壇された講師は井川さんお一人だったのですが、現在、青年団第75回公演『ニッポン・サポート・センター』本番中である俳優講師の山内健司さんと兵藤公美さんからもメッセージビデオをいただき、上映いたしました。直接お話していただくことはできませんでしたが、熱い思いを感じていただけたのではないでしょうか。

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Acting In Cinema 2016 映画の演技を学ぶワークショップ 2016/7/6(水)スタート!

 7/6(水)「Acting In Cinema 2016 映画の演技を学ぶワークショップ」が開講いたしました!

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講師は西山洋市さん(映画監督/『運命人間』『kasanegafuti』『瑠璃道花虹彩絵』 )と万田邦敏さん(映画監督/『接吻』『イヌミチ』『シンクロナイザー』)です。
現役映画監督である講師の演出による、本番さながらのリハーサルと撮影を通して、「映画の演技」をクリエイティブに体得するこの講座。
どなたでもご参加いただける講座となっておりますので、すでに俳優として活動されている方や、フィクション・コースの修了生の方など様々な方々にご参加いただいております。 もちろんアクターズ・コース修了生も参加できますので、修了後、「もう少し映画の演技について学んでみたいな…」という方にも最適な講座です!
今回はその模様について、少しご紹介いたします。

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2016年度オープンスクール・体験レッスンレポート② 6/29「なじむ」松井周

6月29日(火)、映画と演劇を横断し活躍する俳優養成講座第2回目のオープンスクールが行われました。担当講師は俳優であり、作・演出家でもある松井周さん。今回のテーマは「なじむ」。なじむ、とは一体どういうことなのか?松井さんの講義を少し体験していただきました!

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お芝居は、基本的に他人の言葉をしゃべります。現代口語劇の場合、普段話している言葉に近いので、何気なく発することができるかもしれません。しかし、あくまでそれは脚本家など自分以外の誰かの書いた言葉です。では、自分の言葉であるかのように、なじませるにはどうすればいいのか。普段はどのようにして、言葉になじんでいるのか。
個性や味といったものは、もしかしたら「才能」と呼ばれる、人から教えてもらうことのできないものかもしれません。しかし、「なじむ」ということは、才能とは関係ない技術であると松井さんは話します。普段やっていることを、意識的にどれだけなじませてできるか。俳優は基本的には「なじむ」ことができていれば、技術として通用すると言います。

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言葉と言っても、セリフのことだけではありません。例えば、今この記事を読んでくれているあなたは、どんな環境にいるでしょうか?パソコンの前でしょうか?スマートフォンを持っているのでしょうか?どちらにしろ、画面から出る光を感じているはずです。キーボードやスマートフォンの固くて冷たい感触を感じているかもしれません。そのように、空間には光・温度といった五感で感じる言語が溢れています。脚本にはセリフと動作などを表すト書きが書かれているだけですが、実際はそういったあらゆる言語が訴えかけてくる中で芝居をします。もちろん、設定上の環境と実際に置かれている環境が異なることもあるでしょうから、時には邪魔になることもあるかもしれません。しかし、それらを遮断するのではなく、取り入れることで、その空間になじむ助けになることもあります。

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さて、前置きが長くなりましたが、この日最初に行ったエクササイズは、2人組になって、1人が目を瞑り、もう1人が声のみでスタートからゴールまで誘導するというもの。スタートとゴールの間には椅子をランダムに配置し、それらに当たらないように進まなくてはいけません。これ、昨年の松井さんの講義でも行ったのですが、誘導するのが思った以上に難しい。「ちょっと右」と言っても、人によって「ちょっと」の基準は違います。また、誘導される側は不安でいっぱい。視覚が使えない分、ほかの感覚が敏感になっています。誘導する側は、その不安を解いてあげられるような声がけも大切です。コミュニケーションの難しさを感じさせられるこのエクササイズ。角度などの数値で的確に指示をする人や、優しく呼びかける人など、ペアによって方法も様々でした。
すべてのペアが終わった後、松井さんがこのエクササイズにタイトルをつけるならどうする?とみなさんに問いかけました。「線になるまで」「声ラジコン」などユニークな回答がたくさんあげられます。松井さんは「親子」というタイトルをあげました。タイトルがつくと途端に、先ほどの2人のやり取りに物語が見えてきませんか?ここで何かが起きていて、登場人物が必死でコミュニケーションしている。そこにタイトルをつければ、それでもう演劇だと松井さんは言います。

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次に行ったのは、有名な古典戯曲、アントン・チェーホフの「かもめ」のテキストを、今までの人生で使ったことのある言葉に変換して話す、というもの。国籍も時代も異なるこの戯曲に書かれている言葉は、普段話している言葉とは程遠いものです。それを慣れ親しんだ言葉で話し、与えられた状況を成立させていきます。最初はぎこちなかった長い独白も、相手が相槌を打ったり、言葉を補うことで、友達同士の会話のように見えてくるので不思議です。また、抽象的な表現をどのような言葉に変換するかで、その人の解釈が見えてくるのが興味深かったです。実際の現場でこのようにセリフを変換するわけにはいきませんが、なじんだ言葉でやり取りをした時に動いた感情を、自分から遠い言葉に戻した時にも持っていることができれば、シーンを成立させる助けになるかもしれません。

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松井さんの講義では、今回体験していただいたような「なじむ」ということに加え、受講生それぞれの味や個性を引き出してあるシーンを作るといったことも行います。講義の内容について詳しく知りたい!と思った方は、ぜひ募集ガイダンスにお越し下さいませ~!

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映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座
〜演技を通じた新しいクリエーター創出を目的とする〜
募集ガイダンス7/9(土)14:00〜
受講生出演作品上映会7/9(土)19:00~
映画演出ワークショップ7/17(日)13:00〜 開催決定!
http://www.eigabigakkou.com/course/actors/outline/

 

【講師リレーコラム】あなたのオススメってなんですか? |古澤健[映画監督]

今回は監督として、そして最近では俳優としても活動し、大忙しの日々を送る古澤健さんからメッセージをいただきました!

映画『アナザー Another』や『クローバー』、テレビドラマ『37.5℃の涙』など、監督作をご覧になったことのある方も多いのではないでしょうか。

今回はそんな古澤さんからの「オススメ映画」についてのお話。
それではどうぞ〜!

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ひとにオススメの映画や本を紹介するのは難しい。あるいは、「あなたのいちばん好きな映画はなんですか?」という質問には途方に暮れてしまう。 
答えられるけどね。 
難しい理由について書いてみようと思う。 

高校生のとき、ロードショーに飽き足らず、いわゆる「名作」と呼ばれる映画も観てみようと思った。でも、この「名作と呼ばれる」というのがクセモノだ。誰がそれを「名作」と呼んでいるのか。本屋や図書館に行くと、映画史上の名作100選みたいなタイトルの本が何冊かある。あるいは「70年代ベスト10」とかそういうの。高校生だから、手持ちのこづかいは少ない。なるべく無駄づかいはしたくない。少ない投資で多くの見返りが欲しい。というわけでそういうガイド本の情報は必要だと思った。 
あるとき、池袋の文芸坐という映画館で『第三の男』がかかっていた。これは当時どのベスト本にもタイトルが上位にあがっていた。名作といえばこれ、みたいな扱い。だったら観るしかない。文芸坐は名画座だから二本立てだ。それも高校生には嬉しい。 
帰り道、すごいすごいと興奮したのは、『第三の男』ではなく、併映の『暗黒街の弾痕』だった。これだって名作中の名作だ。でも、当時僕が目を通していた本ではそのタイトルがあまり見当たらなかった。なんでだろう。 
1 僕が読んでいた本の執筆者・編集者がサボっていた。 
2 その当時の流行りではなかった(古典にも流行りすたりがある、ということを後に知る)。 
3 僕の調査能力が劣っていた。 
この三つの要因が重なっていたのだろう。まあそれでも、いまでも僕は『暗黒街の弾痕』をスゴい映画だと思っていて、そういうスゴい映画と出会えたという意味で結果オーライだ。 

当時こういうこともあった。 
テレビで『雨月物語』が放映されるというので予約録画をして観てみた(いまでは信じられないが、80年代には地上波で溝口やフェリーニタルコフスキーが当たり前のように流れていて、僕はその恩恵にあずかった)。が、どうしても面白いと思えなかった。ヨーロッパで高く評価されている、と聞いても、それはきっと単なる東洋趣味なんだろう、と思った(紋切型のイチャモンですね)。いわゆる「名作」というのは、どうも選んだ連中が自分の教養の高さを披露するためのツールなんじゃないか、と疑ってもみた。その後、大学生になって、銀座の並木座溝口健二特集に行くことになる。今回は完全に「勉強」モードだった(その理由はあとで書く)。つまらなくても頑張って観る!くらいの気持ちだった。が、『近松物語』『夜の女たち』『祇園の姉妹』『赤線地帯』どれもめちゃくちゃ面白いじゃないか! 興奮しっぱなしだった。その後しばらくして『雨月物語』を再見してひっくり返ることになる。 
このときの問題。 
1 出会うタイミング 
2 溝口健二といえばまず『雨月物語』を紹介する怠惰 
このふたつの体験を経て思ったことがある。自分が好きな映画に出会うためには、もったいないとか言っていたらダメなんだ、と。ひとが勧める映画が自分に合うかはわからないのだから、映画の大海に飛び込んでもがき続けるしかないんだ。ガイド本はほとんど役には立たない。 

それとまた別の話。 
高校のとき、現代国語の最初の授業で先生が「あれ、ほら、ラストで犬のウンコ食っちゃう映画……」と思い出せないでいるときに、真っ先に手をあげて「それって『ピンクフラミンゴ』ですよね!」と言った。その先生とは『ゼイリブ』やら松苗あけみの話でも気があった。と、その先生のことを思い出すと、中1のときの塾の先生のことも思い出す。僕に「人肉食っちゃう小説読むか」と『野火』を勧めてくれた。先生なんてろくでもないな、と当時思っていたし、いまも思っているが、そのふたりの先生は僕にとって年上のいい友人だったと思う。 
高校のときの現国の先生にはその後、19世紀のロシア小説は読んどけよ、と言われて、素直に従って、その結果ゴーゴリといい出会い方ができた。 
初めてつきあった女の子はアメリカ文学を専攻していて、彼女の影響でバロウズを読み、挫折して、でも現代アメリカ文学とは出会えた。 
誰がガイドになってくれるかは大事だ。ガイドがいらない、ということでもないんだな。 

最後に。 
なんだかんだ言って、僕は権威に弱い(ここまで読んだら伝わると思うけど)。自分が大好きな『バタリアン』や『悪魔のいけにえ2』や『グレムリン』や『スプラッシュ』のことを堂々と「好きだ!」とずっと言えなかった。大学の映画サークルに入って、先輩たちに「お前、教養がないな」と笑われたのが結構ショックだったから。だから並木座に通ってもみたし、ブレッソンを観てわかったふりをしてみたりした。しばらくロメロやフーパーやクローネンバーグの名前を出すのを控えてしまった。 
でも、自分が同時代で出会ってしまったものこそ自分を作り上げている、ということを実作をするようになって強く感じるようになった。たとえば僕にとっては『家族ゲーム』は映画版ではなくて、長渕剛主演のテレビ版だ(しかも『2』)。 
新しい作品を生み出すときは毎回迷ってしまう。映画とはなんだろう?と本気でわからなくなる。そういうときは、自分の出発点に戻るしかない。 
同時に、自分の視野の狭さにも気づいている。同時代的な感性や、自分の趣味や興味だけでは出会えなかったたくさんの作品と出会ってしまっているから。 
ひとりの人間が一生で観られる映画の本数なんてたかがしれている。みんなで手分けをしなければ、どこにどんな映画があるのかすらわからない。 
あなたのオススメと僕のオススメが違うことで、そこから対話を始めて一緒に世界の広さを感じられたら、と願っている。 

 

古澤健

【修了公演演出家決定!】俳優養成講座募集ガイダンス始まりました

6月18日、俳優養成講座第1回目の募集ガイダンスが行われました!
この日は、俳優講師の近藤強さんから直接、カリキュラムについて説明がありました。
また、飛び入りで同じく俳優講師の山内健司さんが登壇!6月23日から公演している青年団第75回公演『ニッポン・サポート・センター』に出演中の山内さん、本番直前だったにも関わらず駆けつけて下さいました。

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まず、近藤さんから俳優講師それぞれの講義について、実際にどのようなことを行うのか、詳しい説明がありました。俳優としての実感を踏まえた説明で、この講座でどんなことを学んでいくのか、イメージしていただけたのではないでしょうか?

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続いて、フィクション・コースとのコラボレーション実習である映画演技実習(ミニコラボ実習)について。短編映画に出演することで、映画の演技を学ぶ実習なのですが、スタッフはフィクション・コース初等科生、監督はフィクション・コースの講師です。
近藤さんは、この実習が映画美学校の特色を表しているカリキュラムではないかと話します。担当するフィクション・コースの講師は現役の監督であり、一緒に映画を作る仲間になり得るフィクション生と交流することができる。確かに映画を作るコースがある映画美学校ならではの実習かもしれませんね。

 

そして、この日、修了公演を担当する演出家が発表されました。
その演出家とは…リクウズルーム主宰の佐々木透さんです!

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リクウズルームは劇作家・演出家である佐々木さんのソロユニットです。
今年5月に上演された『見えないスンマ』には、修了生の田中孝史さん(第2期修了生)も出演していました。この作品は、劇団という組織・団体の運営と、会計をテーマにした「会計演劇」というリクウズルームの人気シリーズの第2作目。
修了公演ではどんな演劇をみせてくれるのでしょうか?楽しみです!

 

質疑応答では、カリキュラムについてだけではなく、「演劇と映像のお芝居の違いは?」「演出家・監督からのダメ出しに瞬時に対応するには?」など演技についての質問も。 青年団の俳優として活躍し、映像作品への出演経験もある近藤さんは、ひとつひとつ丁寧に回答していました。もちろんこれが正解!という回答があるわけではなく、人や場合によっても様々ですが、講師の考え方を感じ取っていただけたのではないかと思います。

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もしかしたら10年後に俳優を続けている修了生は、1人2人かも知れません。では、何のためにやっているのか?近藤さんは、色んなことに興味を持ち、探求し続ける姿勢を破片でも見つけられる場を作れたらと話します。
また、俳優養成講座では「自分で作れる俳優になる」ということを大切にしています。それは自分から作品を発信していくということもありますが、演技をする上でも言えることです。山内さんからは、人に何かを言われても、「私はこうです」と言えるように、自分で演技を作っていくことが必要だというお話がありました。それと同時に「仲間と作る力」を養って欲しいと言います。俳優は脚本と向かい合っている時は個人作業ですが、実際に演技をする時は、相手役や観客、スタッフと作り上げていきます。半年間、同じ受講生や講師と演技について考えることで、他者とひとつのものを作る難しさと楽しさを体験してください!

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このように、映画美学校の募集ガイダンスでは、カリキュラムの説明だけではなく、実際に講義を担当する講師から実感や考え方が伝わるようお話をさせていただきます。
次回は7/9(土)14:00~です!迷っている方はぜひ一度お越し下さい!お待ちしております。

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映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座
〜演技を通じた新しいクリエーター創出を目的とする〜
募集ガイダンス7/9(土)14:00〜
オープンスクール6/29(水)14:00〜 松井周「なじむ」
映画演出ワークショップ7/17(日)13:00〜 開催決定!
http://www.eigabigakkou.com/course/actors/outline/