映画美学校アクターズ・コース ブログ

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昨年はどんなだったでしょう?〜【再録】カガクするココロ/アフタートーク

映画美学校アクターズコースの講師、山内健司です。ブログの更新が久しぶりになりますね。興味深いアフタートークの記録がありますので再録いたします。前年度のものなのですが、アクターズコース一期生の修了公演『カガクするココロ』(作:平田オリザ)も、松井周の演出で上演され、とても充実したものでした。『革命日記』関連記事とあわせて、どうぞお楽しみください。

さて、当ブログには今後も『革命日記』についての劇評、そして(情報初公開!)松井周と古澤健による『革命日記』をめぐっての対談、さらにアクターズコースについての様々な発信など、幅広く展開していきます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

 

【再録】「映画美学校第1期アクターズ・コース初等科修了公演 『カガクするココロ』アフタートーク(抄録)」

 

松井周(劇作家・演出家/サンプル主宰/アクターズ・コース講師)

深田晃司(映画監督/『東京人間喜劇』『歓待』/アクターズ・コース講師)

 

松井 まず、ご感想から聞かせていただけますか。

 

深田 率直に、面白かったです。私も一応、授業を受け持ったり、見学したりしてきたので、ついつい「あの生徒さんがこんなに……」なんて思いがちなんですけど、途中からはそんなことも全然忘れて、一観客として芝居に集中できました。

 

松井 深田くんは、このコースの立ち上げから関わっていますもんね。

 

深田 東京には俳優養成の学校というのがいくつかありますが、その講師はなぜか映画監督だったり演出家だったりしま すよね。でも本来、プロの俳優は、様々な監督や演出家と横断的に関わっていかなければならないわけです。そういう意味で、映画美学校は実際に、いろいろな 現場で経験を積んできた俳優がメイン講師として顔を揃えている。そこが独特で、でも実は一番正攻法なやり方をしていると思っていて。

 

松井 深田くんの授業では、どんなことをやったんですか?

 

深田 とにかく俳優にカメラを持たせました。演技がどのようにカメラに支配されるかを、体感してもらう授業ですね。

 

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「カガクするココロ」(2012)

 

松井 講師によって、様々な授業があったようですね。山内健司さんは生徒たちにレコーダーを持たせて、町で出会った人にインタビューをして、その声のトーンや間などを完全に真似る、という授業をされていたようです。

 

深田 話し言葉というものを1から愚直に見つめ直して解析する、という作業ですよね。

 

松井 古舘寛治さんはアメリカで勉強してきた「メソード演技」をされていましたね。「メソード」というと、型にはまった演技と思われがちだけど、実は違って。与えられた場所で、いろいろなことに反応しながら、柔軟にその場にいる、存在する、ということを教えておられた。

 

深田 松井さんはこのクラスのトリ(修了公演の演出)を任されて、どうでしたか。

 

松井 最初に読み合わせをしたとき「ちゃんと訓練されている」感じを受けました。たぶん俳優さんの多くは、演技なん て無手勝流というか、適当になんとなく「演技ってこういうことかな」っていうのをやっている、というのが現状だと思うんですけど、ここの人たちはどこか冷 めているというか。演じ手として自分が何をしたらいいのかを、最初からわかっている感じがしたんですね。いろんなことをフレキシブルに吸収しながら調整し ていける能力というか。

 

深田 彼らが入学した当初、僕が見学させていただいた時はみんな、自分の身体をコントロールすることにいっぱいいっぱいでしたね。それが今日お芝居を拝見して、随分ひらかれた身体になったなあと思いました。

 

松井 僕は普段、自分の芝居には少なくとも1ヶ月半、ないしは2ヶ月かけるんです。だけど今回は3週間しかなかっ た。だから今までにないほどスパルタな稽古をしたんですが(笑)、でも彼らは全然揺らがないんです。何を言っても、ちゃんと食らいついてくる。そこが普通 の学生とは違うというか、演技というものにちゃんと取り組みたいんだなという感じがしました。

 

深田 ちなみに今回『カガクするココロ』を選んだのはなぜですか?

 

松井 まず登場人物の年齢設定が生徒たちに近いというのと、状況もある意味、似ているんじゃないかと思って。劇中にも出てくる話ですけど「この先どうなるんだろう、と考え出したら夜も眠れない」という。

 

深田 そうですね、「(妻に)大学に戻るって言ったら離婚されちゃった」というくだりもありますし。

 

松井 それに、この作品はとても空間を意識させる芝居なんですね。座る位置や、出てくるタイミングについて、すべて 戯曲に細かく指定されているんです。演技って、まず感情や心理や内面を作るべし、というような思い込みから脱した方が絶対いいと思うんですよ。結果として “エモーショナルな何か”は生まれてくるかもしれないけど、それは俳優それぞれに起きることであって、わざわざせりふや行動として指示する必要はない。そ の点において、俳優を志す人たちに、このタイミングで取り組んでもらうにはとてもいい戯曲だなと思って。

 

深田 私が青年団演出部に入ったそもそものきっかけは、平田オリザという作家の方法論が、映画の台本作りにも生かせ るんじゃないかと思ったからなんです。この芝居も、一見するとごく普通の会話が続いていくだけなんですけど、その底にある感情のマグマみたいなものをとて も感じるんですね。それを今回松井さんが演出したことで、演出によってマグマの見え方は全然違うんだなあと驚きました。

 

松井 いつも僕は「サンプル」という劇団で、いくつかの物語が交差するうちに、ここがどこだかわからなくなってしま うような、抽象度の高い芝居を作っているんですが、今回は徹底的に「リアリズム」を貫こう、という思いがまずありました。だから「もう少し早めにせりふを 言って」「ここで止まって」「このときは顔を動かさないで」と俳優に次々と枷を課すわけですが、最初は当然みんなカチカチになるんですよ。でもだんだん、 その枷の乗りこなし方、サーフィンのしかたみたいなものを会得していくんですね。そうすると、どんなにがんじがらめの芝居でも、勝手に自分自身の何かが出 てしまう。そこは俳優として経験があるので、信じて稽古をしていました。

 

深田 今回の鍵は、そこでしょうね。松井さんがこの戯曲の強度を信じていて、さらに俳優としての経験から「こうなる はずだ」というのを信じていて。僕は青年団にいながら、演劇を作ったことがないんですが(笑)、いわゆるシネフィルと呼ばれてしまうような育ち方をしてい て、以前はむしろ演劇嫌いだったんですね。学生の頃とか、知り合いから誘われて見に行ってもどうしても違和感を感じてしまうことが多かった。今思うとそれ は、俳優が自力でマグマを演じようとしていたからじゃないかと思うんです。でもそれは結局“マグマ的な何かを説明しようとしている人”にしか見えない。で もこの戯曲には、すでにマグマは関係性の奥に想像できるものとして描きこまれているわけだから、俳優は無理にマグマを演じる必要がなくて、皆あれだけ自由 に、ひらかれているんだろうなあと。

 

松井 たしかに深田くんの映画にも、そういう感じがありますね。

 

深田 いやいや、自分のはともかく、昔の映画にしても演劇にしても、語り継がれる作品というのは、だいたいそうなんじゃないかと思います。その点においても、今日の『カガク~』も本当に、素晴らしい舞台だったと思いますね。

 

(2012年3月25日/採録構成:映画美学校事務局/映画美学校HP掲載のものを再掲載しました)

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