映画美学校アクターズ・コース ブログ

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『革命日記』アフタートーク 松井周*山内健司*近藤強

3/22(金)〜3/24(日)に上演されましたアクターズ・コース第2期初等科修了公演「革命日記」の、上演後のアフタートーク採録です。

3月22日に行われたのは、演出を担当した松井周、アクターズ・コース講師で俳優の山内健司、近藤強の回です。

3名はみな、劇団青年団の俳優でもあり、『革命日記』という作品の上演史には、それぞれの立場で関わってきました。

お楽しみください!

 

【松井周☓山内健司☓近藤強】

 

それは果たしてトシなのか

 
松井 今日のゲストは、青年団の俳優、山内健司さんと近藤強さんです。まずは作品についての話をしたいんですけど。

山内 最初は「P4」という、4劇団の合同公演としてやったんですね。そのあと、まさにこの春風舎で、劇団の若手公演としてやりました。

松井 僕がちょうど青年団に入った頃でした。では、感想などをお聞きしてもいいでしょうか。

山内 僕はね、この作品、泣いちゃうんです。いろんな人が、この部屋に闖入してきますよね。町内会とか、支援者とか。もうこれで終わりかと思ったら、「柳田」の亡くなった姉、つまり死者が訪れる。その、喪失感がゴーッと来ちゃって。トシですかね。

松井 トシですね(笑)。

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(『革命日記』乱入者の一人、支援者の山際と杉本、柳田/撮影:下江隆太)


近藤 僕は「佐々木」役で舞台に立ってもいたので、いろいろ新鮮でした。「こんな話だったんだ!」と思って。同じ戯曲でも、演じる人でこんなに変わるものなんだ、と。へえー!と思って観てました。まぬけな感想しかなくて申し訳ないんだけど(笑)。

松井 2008年に『革命日記』が上演されていた頃、僕はサンプルで『地下室』という作品を書いていて。集団がぎくしゃくしていく話が好きだなあと思っていた頃に、この作品を観たんですね。平田オリザさんの戯曲の中でも熱すごく熱くて、それが新鮮で、いつかやりたいと思っていたんです。だから映画美学校で何をやろう、となった時に、若い人たちと一緒にやるなら『革命日記』だな、と思ったんです。

山内 よくぞここまでやった、と思いますね。1ヶ月半で。

松井 実際は1年間の授業の中で、お二人を始めとする青年団の俳優が講師となって、まず俳優としての基礎をつくるというところから始まってるとも言えるわけですけどね。

山内 とは言いつつ、今回の公演は松井くんの作家性というか、この芝居における劇世界観みたいなものを色濃く感じましたよ。

松井 あんまり考えてないんですけどね僕は(笑)。

近藤 考えてないから、違いがにじみ出るんだよね。松井くんのは、人の生理寄りというのかな。人間のリズムってこうも違うんだ、と思った。

松井 たぶん、オリザさんの方が小気味いいんだと思います。計算して、うまく編集してる感じ。僕はどっちかというと、垂れ流し……って言うと言葉が悪いですけど(笑)、
そこが難しさでもあるんですよね。オリザさんのやり方の方が、打率はいいかなと思う。オリザさんは秒数とかトーンとか人の位置関係まで、厳密に決められた演出なんですね。だから演じ手の生理がすべてではないんですけど。僕は結構、その人の存在をまるごと出してる感じはあります。

「ベクトル」の行方

近藤 演出中によく「ベクトル」という言葉を出していたじゃないですか。「その瞬間の欲望のベクトルはどっちを向いている?」というような。あれはどういった経緯で?

松井 俳優として、オリザさんの演出を受けた時から感じていたことですね。せりふじゃなくて、自分が何かに誘われて、それに引っ張られている感じというか。「水を飲みたい」なら、話の途中についそっちに関心が向かってしまうとかね。

山内 今年の学生たちは、どうだったですか。

松井 単純に、仲がいいんですよ。仲がいいし、個性的だし。この作品をやる時に思っていた、なるべくその人そのままの味を引き出すという作業は、すごく早い段階でできた気がします。

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(撮影:下江隆太)


山内 僕ら講師陣が交代で、彼らの土壌を耕してきたわけですが、それについては何か?

松井 最初に、みんなで戯曲を読み合わせた時に、みんな、思い込みが激しくないんですね。客観視力がちゃんとあって、しかもせりふだけで何かを作ろうとはしていなくて。せりふをどう言うかよりも、その人との距離やフィーリングの方を大事にしながら、いろんなアプローチをができました。

山内 普通、こういう養成機関って、演出家が教えることが多いですよね。青年団でも、俳優が自分たちの方法論みたいなことを伝える機会がなかったなあと思って。

松井 俳優の生理を尊重する演出家ももちろんいるし、逆もいると思うんですけど。その場合、演出家の世界が面白ければいいわけですよね。

近藤 僕はアメリカで演技を学んだんですが、俳優の講師が結構いるんですね。俳優は、演技術を与えるコーチ。ムチャぶりを受けたときに、どうそれに応えるかを教わったり。台本の読み方だったり、その瞬間ごとに反応する方法だったり、相手のせりふを聞く術だったり。

松井 つまり、どんな演出家にも対応できるような。

近藤 全部の演出家に対しては無理だろうけど、コアな部分の筋肉を鍛えるというのが、コンセプトとしてあるというか。だから日本でいろんな劇団の芝居を観ていると、みんな大丈夫かなって心配になったりする。こんなに特化した演出にずっとついてて、大丈夫なのかな、って。

松井 それって結構、大きな問題な気がするんですよね。自分の劇団のメソッドが染み付いてしまった場合、演技のレンジ(幅)をいつどのように広げたらいいのか。

山内 今回のみんなもそうだけど、一人の演出家を前にして、劇場の暗闇で何かを考えたり、言ったり言われたりに、本気で取り組むと、俳優の身体はやっぱりどこか変調をきたすんですよ。でも、変調をきたしても、やるんだ。必ず生きて帰ってこいよということを伝えたいですよね。

【質疑応答】

――たとえば一般人が訪れてくる前後で、登場人物たちの空気の読み合いが印象的でしたが、あれも脚本に指定されてのことでしょうか?

松井 そこに結構力を入れていました。俳優が、それぞれにやっていることです。もちろんその中で、やりすぎたら切ったりもしますけど。

――アゴラ劇場で一度拝見して、学生運動の少し後に青春時代を行なっていたので、とても懐かしさでいっぱいになりました。今回も、まったく見劣りがしなかったです。キャスティングは、俳優からの希望があったんですか。

松井 完全に僕の独断です。何度もローテーションで、いろんな役を皆にやってもらって、5日くらいかけて決めました。ほぼ、直感です。うまくできてなくても、なんかこの人の持つ味がハマるんじゃないかな、と思って決めました。役って、演技どうこうよりも、その場に順応してなじんでいる人がいれば、その俳優のキャラクターや役柄設定というものを超えて存在できると思うんですよ。ちゃんと居る、っていうことですかね。そうすると、「この人はこういう人なんだな」というふうに、お客さんの方が観てくれるような気がするんですよね。

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