映画美学校アクターズ・コース ブログ

映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。映画・演劇を横断し活躍する「俳優養成講座 」 2017年9月開講決定!

『イヌミチ』アフタートーク、レポートです。

先日ユーロスペースでの3週間ロングランを終え、いよいよいよいよ全国で順次公開いたします『イヌミチ』。4月8日の上映ののち行なわれたトークは「アクターズ・ナイト」。レポートをお届けします、ぜひご覧下さい。(構成:中川ゆかり)

【イヌミチ、全国公開へ】愛知:名古屋シネマテーク4/26(土)〜5/2(金)/大阪:第七藝術劇場 5/3(土)〜5/16(金)/宮城:桜井薬局セントラルホール5/10(土)〜5/16(金)/京都:立誠・シネマ・プロジェクト(5月)/松本:松本CINEMAセレクト(未定)

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【4月8日(火)『イヌミチ』アフタートーク 出演:深田晃司、兵藤公美、永山由里恵、矢野昌幸】

深田:本日は映画『イヌミチ』にご来場いただきありがとうございます。本日は、司会を務めさせていただきます映画監督の深田と申します。本日、主演のお二人と映画美学校のアクターズ・コース俳優講師の兵藤公美さんをお招きしてのトークとなります。よろしくお願いします。

兵藤:この映画にも1シーン出演していました俳優の兵藤公美です。よろしくお願いします。

永山:主人公、黒瀬響子役を演じました永山由里恵と申します。

矢野:西森役を演じました矢野昌幸と申します。よろしくお願いします。

深田:私もアクターズ・コースの講師をしています。アクターズ・コースは初等科では演劇で修了公演、高等科は映画が修了制作となり、『イヌミチ』がそれにあたります。まず最初に僕の感想ですが、初等科の時の修了公演を見たときと感じることは一緒なんです。始まってすぐに、出演しているのが受講生だということを忘れてしまって、作品を見ていて「俳優としてそこにたっている」ということに感動してしまいます。

兵藤さんは講師として2年間彼らに接してきて、率直にどのように見られましたか?

もちろんまだ中継地点というか、発展途上ではあるのですが、この作品は2年間の成果の一つになると思います。兵藤さんにはこれまでの講義でどのようなことを指導されてきたのか、また逆に受講生の二人には本作で教わったことを活かせたか、そうではなかったのか……というところから聞いてみたいと思います。演劇と映画の違いということろも含めてお伺いできればと思います。

兵藤:アクターズ・コースでは、映画と演劇双方に通ずる「演技の基礎」というものを教えています。まずは演劇の仕組み例えば、舞台は「見る見られる」ということ、呼吸の話など……。コミュニケーションに重点を置いた「演技術」を教えていました。

深田:コミュニケーションというと、例えば共演者とのコミュニケーションなどでしょうか?

兵藤:そうですね。相手役、共演者とどういう風にコミュニケーションをとって、それが自分にどのような影響を及ぼすか、どういう構造が生まれて来るか、ということなどを主にやっていました。

深田:指導されたお二人はいかがでしたか?

永山:兵藤さんの授業は初等科の一番最初で舞台作品を作る、というものがありました。

兵藤:初めての演劇、という感じでした。短いテキストをそれぞれのグループに与えて、各グループの作品をつないで一本の舞台作品に仕上げるという内容でした。

永山:私はアクターズ・コースに入るまで演劇経験がなかったので、兵藤さんの授業で初めて舞台をふませてもらいました。初めての経験ですごく緊張しました。台詞を覚えるのも結構大変だったんですけど楽しかった思い出があります。

兵藤:みんなものすごく緊張してました。一回きりの公演で、客席も緊張してたましたね。すごい緊迫感。

深田:アクターズ・コースも1年目で、すごく特別な状況でしたね。

兵藤:ほとんど演技経験のない受講生が多い中で、あの時の状況を考えるとこんな一本の映画になるなんて……。

永山:そうですね、あの時は本当に緊張してました。その時、初めてお客さんに見られているという感覚を経験して、それが印象的でした。すごく覚えてます。

兵藤:私も覚えてる(笑)

矢野:僕は大学時代、演劇サークルに所属していましたが、経験はないに等しかったんです。芝居のやり方がわからなかったのでアクターズ・コースに入ったんですが……本当に基礎を教わった、という実感があります。

深田:そう、基礎、ということですよね。映画美学校のアクターズ・コースが面白いなと思うところは、東京にある普通の俳優向けの学校では、ほとんどは演出家や監督が指導するところが多いんです。ですが、映画美学校では俳優が講師を務めているので、先輩の俳優が経験と実技を通じて後進を指導する、というところがとても面白いんです。3期目が終わりを迎える時期になりましたが、そんな特別な場所になっていると思います。それで、俳優の基礎となる演技指導を経て、2年目は映画の現場を踏んだということなんですが……。アクターズ・コースでは講義も含めて、それほど映画の現場の経験はなかったと思うのですが、これほど大勢のスタッフがいる現場で演技をする機会はこれまでそんなに多くなかったと思うのですが、今回の現場はどうでしたか? 兵藤さんも共演されたことを含めてどうでしたか? 

永山:私は大学のときに映画サークルに入っていて出演や作ったちょっとした経験はあったが、こんなにしっかりとした長い劇映画で役を演じたのは初めての経験だったのですごいプレッシャーでした。舞台なら客席があって、お客さんが見ているということで演じている状況を受け止められるのですが……。映画では、演技中に照明さんの顔がすごく近くにあって、たくさんのスタッフに見られる中で演技をするんだと思うと、見られてることに自意識過剰になってしまって、全然演技に集中できなかったんです。現場では万田監督からもリハーサルから指示をいただいたんですが、パニック状態になってしまって(笑)。そんなところから、初めての映画の現場が始まりました。

深田:それで?

永山:はい、最初はそんな風に自意識過剰になってしまっていたんですが、相手役の矢野くんとのコミュニケーションを考えるようになって、彼との関係を大事にしていくことで、余計な自意識がなくなって見られていることを意識しなくなり、段々演技に集中できるようになったように思います。

矢野:そうですね。演劇もわからないんですけど、映画はもっとわからなくなりました(笑)。そもそも何もわからない状態で学校に入って、基礎をならって、授業を経て、それでも映画はまったくわかりません。何がわからないかもわからないままです(笑)。こんなに大きな劇映画ではなく、授業やフィクション・コースの作品に出演したことはあったんですが、映画はわからないと思い続けていて。今回出演して、何かわかるかなと思ったけど、今も全然わからないんです。

深田:わからない、ということがわかったのは重要かと思います(笑)。

兵藤:私も、永山さんが言う自意識、という話はよくわかります。例えば演劇だと、一ヶ月くらい稽古をして、小道具も一ヶ月使って、段々自分のものにしていって本番を迎えるんですよね。でも、映画だと、撮影日の朝にその小道具を渡されて、3年間使ってる貴方のものです、と言われるんですよね。それに、私はすごく違和感があって。さっき渡されたばかりの鞄なのに、私のものにしてる、というのをみんな(スタッフ)が見てる、っていうのがすごい恥ずかしくて。いきなり彼女面してる、っていう状況に「いいのかな?」と思ってしまって。たぶん演劇を長くやっているから、だと思うんですが……。

深田:(笑)

兵藤:メンタリティは、自意識のような状況というか、恥ずかしさや違和感をすごく感じてました。その辺は演劇と映画は、かなり違うかも、と思います。でも、映画は意外に節操なくていいのかもって途中で気がついて(笑)。コミュニケーションとか言ってるんだけど、いきなり彼女面というか、いきなりそのシチュエーションを信じていいんだ、と気付いたら楽になりました。

深田:映画の場合、良くも悪くもそういう面はありますよね。当日の朝にあって、いきなり20年連れ添った夫婦になってもらうことが普通にあるんですよね。監督としてはそういう状況はなるべく作らないようにしたいな、とも思うんですが……。演劇の様に稽古期間が取れない分、瞬発力が大事なんじゃないかな、と思いますよね。では、実際完成した映画のご自身の芝居を見てどうでしたか? 講師として兵藤さんもどうでしたか?

永山:さきほど、映画と演劇の違いと言う話がありましたけど、今回は、私たちは撮影前に二人で稽古をしました。

矢野:自主練したことで、変わったこともあったかなと。

永山:そうなんです。すごく不安ではあったんですけど、自主練を通じて多少不安を減らして現場に臨むことができました。映画を見て……の感想なのですが、たくさんの人が一つの画面を作るのに関わっていることを改めて実感した気がします。それぞれのポジションの方が最善を尽くして作った画面がこの映画の中に存在していて、その中にいられたことが本当に嬉しいなって思っています。でも自分の演技に関しては、悔しいと思うことがたくさんあります。現場では万田監督が動きをつけてくださって、私は、それをなぞるのが精一杯でした。言われた通りにするというだけで一杯で、自分から演技の提案ができなかったことがいまだに悔しいです。今だったらこう動くのにな、とか、こうした方がよかった、と見る度に反省点が浮かぶんですけど、でも作品としてはこの映画に出られて、よかったと思わない日はない。宣伝まで関わらせてもらって幸せです。

矢野:そうですね、僕は修行したいです。

深田:スクリーンに映った自分を見て、ということですか?

矢野:はい。ただ、一個だけ、自分のシーンでいいと思ったところがあって、鍵を置くシーンがあるんですけど、自分ではいいと思ったんです。そこだけ。でもアフレコになっちゃいましたけど(笑)

深田:高飛車何だか謙遜なんだかわからない(笑)

兵藤:私は、この作品の企画が映画美学校の脚本コース、フィクション・コース、アクターズ・コースの3コースの合同制作というのがすごく面白いなと本当に思います。アクターズ・コース立ち上げの際に、「せっかく他コースがあるんだから、一緒に創作ができたら素敵だな」と思ってたのが実現されたことがとても嬉しいです。その層の厚さというか「映画美学校すごいかも」というのを感じました。脚本もアテ書きという課題で、とはいえオーディションでアテ書き通りにならなかったり。アクターズ・コースの受講生にとっても複雑な思いはあるだろうけど、それでも大きなものになったなということに感動しました。演技については、まだ発展途上のところもあるのかな、とも感じたんですけど、今みんなができる精一杯が詰まってて。それを、万田監督の撮り方で活かしてくれたんだ、と感じました。職場で同僚がちらっと出てくるシーンだけでも、その人や場所の時間を一瞬で想像させてくれる。映画のいいところって、こういう一瞬のシーンがすごく効いてくる、というか想像できるな、と感じて、そんなシーンが散りばめられていて。それは映画ならではだな、とすごく思いました。主演はこの二人だけど、他のアクターズ・コースのメンバーも、演技としての出力は一緒のように感じて、監督がそういう風に撮ってくれたことが嬉しかったです。演劇の一瞬とは見え方とはまた違って、この映画は1シーン1シーンがすごく濃かった。

 

深田:現場での万田監督の印象をお聞きしてもいいですか?

永山:万田監督は、元々私の出身大学の教授をされていて面識はあったのですが、今回初めて役者として現場に入らせてもらったんですが現場の万田さんはすごく厳しかったです(笑)。

矢野:僕は事前に全く接点がなかったので、今回初めて万田さんにお会いしまして。最初から怖いイメージでした(笑)

深田:最初からというのはオーディションから? 今でもですか?

矢野:今は大丈夫かな、と(笑)

深田:何が怖かったんですか?

永山:いえ、怖くはないんですけど(笑)。万田さんは、現場で「こう動いて」とご自身で動かれるんです。あるシーンで響子の動きを万田さんがやってくださったんですけど、それがすごい上手で。それがすごい悔しかった。絶対負けない、と思いました(笑)

矢野:たまにやってくれたんですけど、全部万田さんがめちゃくちゃうまかったんです(笑)。コインのところ、僕が全然できなかったので、実はあれも万田さんにやってもらいました。

深田:実は優しい?

矢野:はい、優しかったです(笑)

兵藤:難しかったのは現場の動きだったんだね? 舞台のセットとは違うからってことかな?

永山:そうですね……結構動いたんですよ。大きな部屋の中で、一つの部屋から次の部屋に……とたくさん動いたんですけど、指示をなぞるだけにならないようにしようと。

兵藤:ポイントが決まってたんだね、ここに行って、次ここに行って……って。

永山:そうなんです。例えば振り向かせる時にこの位置にいなきゃいけない、とかカメラに写る位置関係を意識しながら、段取りにならないようにするのが難しくて……。段取りだけになっているよ、というのも言われたりして……。

深田:今回は脚本コースとのコラボ、ということもありました。脚本コース受講生の伊藤理絵さんが書かれたんですけど、初めて読んだときの印象はどうでしたか?

永山:女の人がイヌになるってどういうことなんだろう、と。あと、自分勝手で性格悪いな、と思えてしまって最初は響子のことが好きになれなかった。でも演じるうちに段々好きになっていきました。

矢野:最初、西森役は自分じゃないなと思ったのでしっかり読めなくて。まさか自分がキャスティングされるとは思わなくて、やべーな、と思って。印象……僕あんまりないんです。

永山:でも、矢野くんは脚本読む度に正の字を書いてたんです。で、私も負けないぞって。二人で競ってました。

深田:お二人は今後のご予定は? 

矢野:6月にお台場で野外劇やりますので、ぜひ。

永山:まだ告知できないですが、私も6月後半に舞台に出演します。告知できるようになったらツイッターで……。あと、『イヌミチ』も今後、大坂、名古屋、京都、仙台、松本など全国にて上映となります。名古屋初日は永山、矢野が舞台挨拶にいきまして、5/2-3も万田監督、永山がおりますのでぜひお知り合いの方にお声かけいただければ。

深田:ありがとうございます。これがゴールではなくて、これからスタート、ということでとても楽しみですね。本日はありがとうございました。(了)

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