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映画美学校アクターズ・コース ブログ

映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。映画・演劇を横断し活躍する「俳優養成講座 」 2016年9月2日(金)開講決定!

アクターズ・コース修了生と行く『石のような水』稽古場見学 第2回(浜田みちる)

今回の見学者は、写真左から、古川博巳さん、柏原隆介さん、永山由里恵さん。
前回の茶円さんと同じアクターズ・コースの1期生で、修了公演では松井周さん演出の『カガクするココロ』に、映画では万田邦敏監督の『イヌミチ』や、鈴木卓爾監督の『ジョギング渡り鳥』に出演しました。
永山さんと柏原さんは、この4月からこまばアゴラ演劇学校・無隣館に通い、古川さんは柏原さんとの共同企画映画の出演を控えています。

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この日は、前日の通しを受けた駄目だしから始まりました。
通しで3時間かかったものを「本番には2時間半か、2時間にしたい」と言う松井さん。
「1つのシーンをなくすと全体に影響するホンなので、難しいけど少しずつやってみましょうか」と、短くする箇所や、気になったところを、最初のシーンから順に伝えていきます。

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そのあとは衣裳合わせ。そして稽古は、もう一度最初のシーンから。同じ箇所を何度も修正していき、4期生は必死についていきます。松井さんは、はじめはいつもの場所に座って、言葉によるアプローチを続けていました。そしてしだいに立ち上がって見ることが多くなり、やがて机のある場所を越えてみんなのそばに行き、ついには隣に立って「こういうふうに身体を開いて言うとどうでしょう」と、実際にその役を演じる場面も見られました。

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その様子を、稽古中も休憩中も変わりなくじっと見つめ続けていたのは古川さん。永山さんは脚本も熱心に読みながら、そして松井さんや4期生が笑うときには、ほがらかに一緒に笑顔になっていました。柏原さんは4期生に話しかけてみたいと思いつつ、できなかったようです。

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稽古を見て

永山 場面転換の仕方が面白いな、と思った。椅子とか置きっぱなしで、そこが部屋になったりカフェになったり。
古川 俺は普段の4期生を知らないから、稽古で緊張して固くなっているのか、休憩時間との兼ね合いを見ていたんだけど。いやあ、休憩時間は楽しかったですよ。この人はこういう反応をするんだな、とか4期どうしの会話の様子をずっと見ていました。
永山 反応の強弱がバラバラな感じがした。すぐに反応する人とじっくり考えている人と。それは良い悪いじゃなくて。
古川 自分たちの修了公演のときって、緊張感があってこうだったのかなあ、って思い出しながら観てたね。
柏原 大谷(ひかる)さんがマイクを持って登場するときに、スイッチを入れるカチッという音を気にして、それを自分でどうにかしようとしていたり、みんなそれぞれに、芝居以外のことにも神経を使っているなあ、と思った。
永山 そうだね。
古川 俺らは場面転換もなかったもんね。
永山 舞台自体が、段取りも含めて芝居にしよう、っていう感じになってるよね。(自分のシーンが終わって)はけても、壁際の椅子に座って舞台の上にずっといるってことだよね? ああいう感じは、わたしたちのときはなかったね。

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1期のときのこと

――自分たちのときを思い出しました?
永山 思い出しながら見ていました。みんな緊張しているなあ、とか。やっぱり、駄目だしをされている子の顔を見ちゃう。どうやって聞いてるのかな、って。みんな、松井さんの言葉を自分の中に落とし込もう、落とし込もう、としていた。すごいな、と思いました。

――誰かが駄目だしをされているときは、どういう気持ちになるものですか?
永山 やばい、言われてる! 頑張れ! と思う。わたしも気をつけようとか、ほかの人が指摘されていたことで、自分も同じようにしてるなあ、って気付くことがあります。
古川 今日、お兄ちゃん役の人が言われていた駄目だしは、俺のときとすごく近かった。声が息まじりになっちゃうとか、無駄な動きはいらないとか、俺もすっごい言われたから。普段はこういう声だけど、演技に入るときには息が混ざって、はは、って感じで喋っちゃう、っていうのが昔あったので、この人は俺と同じタイプか! と思って見ていましたね。だから彼がうまくいくように、応援しています。
永山 無声音ね。
古川 そう、無声音が入っちゃう。
永山 わたしたちも言われてたことだったね。
古川 ああ、言われたなあ、これ言われたよね、って思いながら聞いていた。
永山 反応をしていないのは、松井さんはすかさず見付けるよね。今日は高校生役の子の、細かいといえば細かいところ。こっちから見ていてテンパっていることもわかるし、本人もわかっているのにできないところも、松井さんの言いたいこともわかるし。
古川 やっぱり、松井さんの言うベクトルの感じというか、それがある人とない人とでは、面白さが違うかもしれない。
永山 でも、そのベクトルをどこに向けていいかわからない子が、どっか指をさせば? とか、身体を開げて、とか松井さんが言ったあとにした演技は、ちゃんと身体を開くことができていたし、ちゃんとセリフを言えるようになっている瞬間があって、おお、すごい! と思った。ほんとにちょっとしたきっかけで変わっていた。

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ベクトルとは?

――ベクトルって、アクターズの共通語ですか?
古川 鈴木知史さんと小田原(直也。同1期生)さんのブログにも書いてありましたよ。
永山 ベクトルの秘密が書いてありました。リンクを貼ってみますか(笑)?

――わたしにも教えてください。
永山 まあ、いまこうして話しをしているけど、ご飯も気になって食べたいっていうベクトルがある。その加減っていうか。
古川 ご飯もおいしいし、話も聞かなきゃだけど、ここで店員さんが話しかけてきたら急にベクトルがそっちに行っちゃうから、俺への反応が遅れるよね、とか。
永山 そう。自分の興味がいまどこを向いているのかっていう方向性。ご飯を食べているんだけど、いまわたしが話してるから、ご飯のほうを見られない、みたいな。

――あ、いま、早く食べてメモをとらなきゃ、と思っていました。
永山 そう、そういうメモをとりたいっていうのがベクトルっていうか、焦ってる気持ちとか。それが脚本とかキャラクターの中であるじゃないですか。
古川 役の欲求ですよね。
永山 そう、それをみつける、っていうことをよく言われた気がするし、やろうとしてた気がします。
古川 人間って自分の一番興味のあることに反応してるし、そういうのがあると人間らしさが出る、みたいなこと。

――それは誰に教わったの?
永山 わたしは松井さんに言われた。
古川 それこそ修了公演の稽古でね。
永山 そうそう。ベクトルっていう言葉は、松井さん。
古川 うん、言われたなあ。
永山 それが多分、修了公演を経てみんなの共通語になっていくんだと思う。
古川 ベクトルがないと、ただホンをなぞっているだけみたいになっちゃう。セリフのなかにも、反応の引き金みたいのはあると思うんですよ。こうやって話しているのを聞いていても「引き金ってなんだろう?」みたいに、頭に浮かぶじゃないですか? そういうのがないと、相手がこのセリフを言い終わったから自分がこのセリフを言う、みたいな段取りになっちゃう。

――さっきも、その駄目だしがありましたね。ゾーンでの牛乳瓶の使い方について説明を受けている役の人に「牛乳瓶? なんで? とか、頭の中に思い浮かべながら聞いていますか?」とか「セリフの直前で動いて欲しいわけじゃないです」って、松井さんが声を掛けていたことですよね。
永山 うん。ちゃんと思う、ってことだよね。
古川 そうそう、気になっていることとかをね。
永山 そう。そういう反応ができていると、ちゃんとこの人いるよね、っていう立体感が出て来るんじゃないかな。この人、生きてるよね、っていうのが。

――ベクトルと反応はセットですか?
古川 ベクトルがあるから反応できるんでしょうけど。
永山 ベクトルは、欲望の方向、意識の方向。それがあって反応する、みたいな。

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修了公演の経験

古川 修了公演は大きかったよね、経験値として。かっしー(柏原)はどうなの? 修了公演を経て、外部の「Q」の舞台とかに出たじゃない? ちゃんと舞台上にいられましたか? あなた、一人だけで立ってる時間があったじゃないですか?
柏原 ……わかんない。
永山 かっしーの場合は「わかんない」とか言って、持ってく感があるんだよなあ。
古川 うらやましいよ(笑)。
永山 今日は松井さんが「(自分の芝居を)ビデオで見て演技を確認して」って言ってたよね。わたしたちのときはやらなかったけど、それも大事かな、と思いました。言われて修正していても、自分がどうなっているかはわからないから。
古川 やってるつもり、だもんね。
永山 そう。客観的にはわからないから、ビデオで見る、っていう言い方をしてるんだなあと思った。
古川 1期の修了公演の記録映像で自分の具体的な動きを見たときに、これが松井さんが言ってた俺の駄目だしなのか、とよくわかった。「大きい紙があって、こうやっておさえながら切ってたら、間違えて足を切っちゃった」っていうセリフを言うときに、自分の(役の)経験談なんだから、記憶があってその話をしているはずなのに、古川博巳にはそんな記憶がないから「こーんな大きな紙が」って適当に言ってるみたいに見えた。いまやれば、ちゃんと大きい紙を存在させられるんじゃないか、と思う。

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松井さんの演出と駄目だし

永山 4期のみんなは、ちゃんとセリフが入っていましたね。長セリフを話す人が多いのに。
古川 大変そうだな、と思いますけどね。
永山 楽しそうだった、うらやましかった。みんなで作ってる感じがうらやましい。それだけでうらやましい気持ちになる。あの感じを思い出すと懐かしい、みんなで一致団結していて。いまは1期のみんなはそれぞればらばらにやっているし、一緒になにか作るっていうのはなかなかできないことだから。あとは、ホンを読みながら、このセリフは自分だったらどう言うかな、あっ、あの人はそういうふうに言うんだ! とか、こういう反応をするんだ! とか思いながら見てた。
古川 稽古がはじまってから? それとも駄目出しのとき?
永山 稽古がはじまってから。でも駄目出しのときもホンは追いながら見てた。見ていて、なんか気になるなあ、って思ったところで松井さんが駄目出しをすることが多くて。なんていうか、自分も同じところが気になるというか、やっぱりそこは反応していない、っていうふうに見えるんだなあ、と思った。
古川 そう、自分が演出家の立場みたいな感じで見てたよね。
柏原 ぼくもなんか、そういう感じに近かったかも。
古川 演出家じゃないし、俺が実際に演じるときはそうできないだろうけど。
永山 そうそう、わたしもできないけれども、それは気になるよね、っていうところで駄目だしが入ってた。
古川 多分、俺らの糧になっているんだろうね。
永山 そう。反応していない、っていうのはわかるかな、と思う。

――外部で演じるときも意識しますか?
永山 偉そうなこと言ってますけど、自分がやってるときは、もうわからなくなる(笑)。
古川 外部の知らない演出家とは擦り合わせが要るから、このくらいのベクトルの方向でいいのかな? とか探りながらやりますね。でも実際できているかどうかはわからない。
永山 反応っていうのは、いつでも意識するように心がけてはいるけれども、果たしてそれができているか、っていうとわからないです。それこそビデオとか撮って自分で見なきゃいけない気がするし。いろんな劇団があるし、いろんな芝居の仕方があるから。
古川 だから緊張するよね。
永山 うん。でも、反応する、って根幹な感じがします。どこにでも行ける感じはする。どの演劇のところでも行ける気がする。
古川 何に反応するか、っていうだけですから。

――「演劇とは、何に反応するか」ということ?
古川 演劇とは、なんて言ってないよ(笑)。
永山 スタニスラフスキーみたいに、フルカワスキーみたい(笑)。
古川 やめて、これを山内(健司)さんとかが読んだら、俺、殺されちゃう。

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松井さんと古川さん

――今日は松井さんが「トラウマだったんだって?」 って、古川さんに声を掛けていましたね。
永山 古川さんは、得難い経験をしましたよね。

――『カガクするココロ』では、松井さんが演じたのと同じ役をしたんですよね?
古川 そうです。今日の稽古は、松井さんてこんなに優しい人だったっけ? って思った。
永山 優しかった?
古川 今日は優しく見えたんですよ。稽古の前半は特に。でも、後半は結構、違うよ、違うよ、って盛り上がってきてたじゃないですか? ああいう駄目だしの部分を、俺はずっと受けていました。
永山 多分、本人はすごく記憶に残っているんだと思う。
古川 うん。言われた記憶は残るよね。
永山 今日は、駄目があるシーンをある程度繰り返すなあ、と思った。5回も6回も、気になるところは徹底的に慣れさせている感じはしましたね。

――古川さんの「トラウマ」は解消したのですか?
古川 うーん。いまならもっとうまくやれるかなあっていう変な自負はあるけど、当時は、言われたことをやってるはずなのになんで駄目だしをもらうのかな、と思ったり、経験がないからどのくらい変えていいかとかがわからなかった。松井さんが、稽古で駄目だしをしたあとに、休憩時間の俺を見て「いやあ、休憩中の君は、ほんとに戸田という役そのままなんだけどなあ」みたいなことを言ってくれたんだけど、なんで稽古のときはできないのか、わからなくて。多分、自分のなかでそれがどうしてか、っていうのが理解できていないから駄目だったんだと思う。

――また松井さんと勝負したいですか?
永山 勝負。どっちが勝つか(笑)。
古川 勝負っていうか、最後の最後に松井さんの演出に帰るときがあれば。やっぱりラスボスですよね。どのくらい僕は成長しましたか、っていうのを見せたいのは、松井さんです。どうだコノヤロー、って(笑)。

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永山さんと柏原さん

――永山さんと柏原さんは、無隣館に通っているんですよね?
永山 同期になります。

――それは、松井さんや平田オリザさんの授業の影響などが大きくて、入ることにしたんでしょうか?
柏原 オーディションを頑張ろうと思って、受けてみたんです。
古川 でもかっしーは、7月に落とされるんじゃないかって、ずっと言ってる(笑)。
永山 足切りがあるからね。

――柏原さんは、監督した作品を、映画祭に応募するんですよね?
永山 ぴあとかに?
柏原 札幌国際短編映画祭です。英語字幕付けなきゃ応募できないから、いま自分で翻訳機にかけたりしていて大変です。

――では柏原さんは、無隣館で演技の勉強を続けつつ、映画も作って応募する、と。
柏原 わかんないっす。
永山 なに、奥歯にものがはさまったみたいな言い方(笑)。
古川 次回作も早く撮って欲しいよ。

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――永山さんはどうですか?
永山 無隣館に入ったので、そのことと、仕事の両立をしたいですね。
古川 会社で仕事をしつつ、舞台に何本か出てるじゃない? 次もまた出るわけでしょ? 
永山 そうですね。「Q」に出させてもらえるので。その稽古もあるから、結構休みがなさそうなんですけど、とにかく精一杯頑張ってベストを尽くしたいです。仕事をしているからって演技も妥協したくないのはもちろんだし、仕事も妥協したくない。欲張りだから大変な時はありますけど、その大変さは引き受けて、何事にも貪欲でありたい。ちゃんと自分の納得する結果を出したいですし、挑戦していきたいです。

――かなり忙しいのでは?
永山 忙しいのは自業自得なので文句はありません。周りの優しさに感謝しながら、日々、貪欲に頑張るだけです(笑)。
柏原 永山さんは、(時間の節約のために)特急電車に乗って会社に通ってるんです。
古川 どこかの事務所に入りたいとか、青年団の人がたくさんいる事務所に入りたいとか、ありますか?
永山 チャンスがあれば入りたいですね。これからも、映画や演劇を通じて、いろんな出会いがあったらいいな、と思います。

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