映画美学校アクターズ・コース ブログ

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俳優という乗り物たちに乗って(なかむらなおき)

※掲載が遅くなりましたが、2週間前に行われた「石のような水」本番に向けての連続批評その1となります。是非ご一読ください。(編集担当)

 

 2015年04月05日の15時。映画美学校の稽古場で、アクターズ・コースの修了公演「石のような水」の稽古が行われました。04月06日はアトリエ春風舎の劇場入り。稽古場での最後の稽古となります。

 稽古されるのはクライマックスの夫婦が言い争うシーンです。なるほど、シーンに迫力が出てきている。2週間前とは全然違います。稽古で積み重ねてきたものが分かります。

「そのシーンであなたはどのように考えている?」

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松井さんは2人に質問を投げかけました。その質問は2週間前とは違ってとても迫力があるものでした。強制力がありました。そして夫婦を演じる2人の役者がどのように思って演じているのか答えます。彼らもどのように考えているのかをしっかりと述べるのです。

「ここのシーンは喧嘩腰じゃないんだ」

松井さんはさらに自分のイメージを伝えます。そしてそのイメージが2人の役者に浸透するように、確信できるように例を出しながら説明していきます。2週間といえども完全にイメージを共有できているわけではありません。なので同じシーンを何度も何度も繰り返していきます。そして役者が何かを掴むのを待っています。

「では、次に行きます」

松井さんは納得したのか、それとも時間の関係で先延ばしにしたのか分かりません。でも、私の目には夫婦の言い争いがより深いものになったように感じました。

 

 松井さんは映画美学校のサイトにある、本公演のページにこのようなことを書いています。

 

これで四度目となったアクターズ・コースの公演ですが、思っていることはいつも同じで、俳優を乗り物に例えて考えています。自分という乗り物をコントロールしつつ、フィクションの世界をドライブして、ゴールに辿り着いて欲しいということです。これは簡単なようで難しいです。何故なら、「現実の世界では、みんなそんなにうまく自分を乗りこなしていないはず。ふとしたことに驚き、怒り、笑い、悲しみ、戸惑うはず」という条件も僕が付け加えるからです。つまり、「乗りこなせない部分も含めて乗りこなして欲しい」という矛盾したリクエストです。「石のような水」という戯曲において、登場人物たちは、うまく自分を乗りこなせない人たちのオンパレードです。空虚を抱えてさまよっています。

 

 なるほどなと思います。俳優を乗り物だとすると、それを運転する人がいなければなりません。その運転する人はカーナビに従って運転するかもしれない。地図を確認しながら運転するかもしれない。道に迷いながら運転するかもしれない。すでに知っている道を運転するだけかもしれないのです。そして、その乗り物が舞台上に現れた時、私たちはそれに乗り込むのです。

 乗り物に乗り込んだからには私たちは運転手にすべてを委ねます。劇世界の中を乗り物は目的地に向かって走り出します。でも、私たちは目的地に辿り着きたいわけじゃありません。車窓を流れていく景色も楽しみたいのです。その世界を観光したいのです。そのためには、私たちの興味に答えられるものを運転手が用意しておかなければならない訳です。そのための直向きな努力が目の前で行われているのです。観客を導くのはなんて大変なのでしょう。そしてその観客を導く運転手を導くのはなんて大変なのでしょう。そう思います。

 

 2015年04月05日の18時。通し稽古が始まりました。テーブル、机、衝立などが置かれた稽古場を、俳優という乗り物たちが3時間ほど駆け巡りました。それはFT13で観た初演とは全く違う世界でした。通して見ることで、ここはこうだよねという景色や、ここはこう変えたんだという景色が見えます。そして俳優を伸び伸びと運転している人、おっかなびっくり運転している人、頑張り過ぎてしまっている人などいろんな姿が見えてきます。乗り物に同乗している私はそれを素直に楽しんだのです。

 通し稽古が終了して、松井さんのダメ出しが始まりました。そのダメ出しは演じられるものをより強固にするための指摘、できていないことへの指摘など多岐に渡ります。松井さんは観客以上に俳優の乗りこなしをチェックしていたのです。演劇とはそこまでして世界を作り上げられるものなのだなと改めて思いしらされました。そして観客を載せた俳優という乗り物がその世界の中を案内するからこそ成り立つのだなと思い知らされました。

 

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 本番の時、俳優の彼らは松井さんの提示した世界の中をどのように駆け回るのだろう。そしてこれからどのくらい変わっていくのだろう。それを本当に楽しみにしています。