【講師リレーコラム】入る前にこれを見ろ!|深田晃司
俳優を志す、あるいは既に俳優である何者かに何を勧めるべきか。
うーん、脳細胞を回転させるがこれがなかなか難しい。考えれば考えるほど「なんでもいい」と思えてくるのだ。なげやりな訳ではない。俳優は結局、その人の人と成り、歩いてきた人生の層の厚みみたいなものが滲み出てしまう職業だと思う。
だから、どんな映画でも演劇でも文学でも漫画でも美術でも音楽でも、味わっておいて無駄にはならないはずだ。面白くなくたっていい。あなたにとって何がつまらないかを知るのも有意義な経験のはずだから。そういう意味では、一番大事なのは心が死なないこと、あちこちに好奇心を向けて生きることだと思う
ということを大前提にして、直感的に思いついた作品を書きます。
・ 『アメリカの夜 映画に愛をこめて』(74年・フランス)
出演:ジャン・ピエール・レオ、ジャクリーン・ビセット、ジャン・ピエール・オーモン、ナタリー・バイ、アレクサンドラ・スチュワルト、フランソワ・トリュフォー 監督:フランソワ・トリュフォー
これはもう、俳優だからとかあまり関係なく、映画に関わりたいと思っている若者たちにはすべからく見て欲しい作品。映画を作ることの楽しさ、苦労、狂気、狂気! そのすべてがここにある。そして何より、映画への無尽蔵な愛がある。
どんなに現場がつらくてもこの映画のことを思い出せば、そしてあの多幸感に満ちた金管の音が聞こえれてくれば、もう乗り切れそうな気がしてくる。
(深田 晃司)