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映画美学校アクターズ・コース ブログ

映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。映画・演劇を横断し活躍する「俳優養成講座 」 2016年9月2日(金)開講決定!

修了生トーク(8)大谷ひかる(4期修了生)×中川ゆかり(1期高等科修了生)その5

その4からの続きです!

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(舞台『石のような水』より)

裏と表と、立つ場所と

中川:体はひとつなのに、いろんな時間や場所を通ってここにいて、何にもなかったかのような顔をしてそこに立っている。演出家や俳優たちが起こそうとして、舞台上で初めて起きる出来事を、初めて見る人たちはどう見るか。うーん、ロマンチックですね〜(笑)。

大谷:ほんとおかしいことやってますよ。たまになんでこんなことやってんだろって思います。

 中川:でも、好奇心は尽きない感じですか?

大谷:そうですね、私ほんとに唯一、人に負けないのは好奇心しかないと思ってて。

中川:それは素晴らしいですね。

大谷:いや、素晴らしいとは言えないですよ(笑)。魅力的な俳優にはどうしたらなれるかと考えたときに、やっぱり好奇心しかない。私は舞台上に絶対に愚かな人が立ってなきゃいけないとも思っています。

中川:愚かな人。

大谷:元をたどればギリシャ悲劇ですけど、観客が舞台上に見に来るのは愚かな人だ、と。それが古くから劇場に求められている、演劇の大事な要素だと思っています。そこに立つには技術が必要で、でもそれと同じくらい俳優自身が愚かな人として立つ勇気が必要だと思ってます。って、言いながらこれは多分無理やり言ってて、なんで無理やりかというと、私は小さい頃から台詞読むのも役名もらうのも大好きだったんです。自分じゃない人の人生をやってみるなんて超お得、あたし何人もの人生生きてる!みたいな、小さい頃からそんな感覚がありました。だからこそ、俳優を仕事にしていく時に楽しさの代償として払えるものを考えると、「恥知らずに愚か者になります、私は」っていうことかと思うんです。そんなけりのつけ方でいいか分からないし多分だめなんですけど、私はもうそれしかないんですよね。

中川:素敵!

大谷:大学も歌って踊ることしかしてこなかったので、とりあえず払えるものとして。そこは勇気をもってさらけ出します、というか。だから逆に、これから自分が俳優としてやっていくって時に、このメンタルとどう付き合っていくかっていうのはひとつ課題としてあります。

中川:それってつまり「演じるのが大好き!」ですよね、大前提として。

大谷:ほんとそうです。

中川:それはとてもポジティブなことだと思います。代償って発想からして既に楽しいだけではないわけだけど、それでも楽しめるのが素敵なことだし、何より人生が最高だよ(笑)。もちろんジレンマも、ぶつかる壁もあるとは思うんですけど。

大谷:この間三条会の稽古場で、主宰の関さんが最終的に風呂敷を結ぶのは誰なのかなみたいな話になりました。

中川:どういうことでしょう?

大谷:関さんは、自分が風呂敷を結ぶのが得意っていう事しか言ってなかったんですけどね。つまり、俳優が演出家の前で何かをやって見せる時に、この風呂敷は私が結びますって提示していいのか、最後に結んでもらうのは演出家さんに任せるのか。選択の自由は貰ってると思うんですけど、そういうときに自分が俳優としてどういたいのかが関わってくる気がしています。怖がってる部分もあるかもしれないですが、私は作品そのものを創る意欲より、作品を創ろうとしてる人の隣で面白がっているだけというか。どうしたらここに面白い作品が生まれるかを考えながら、どうしたらここに面白い俳優が居ると思ってもらえるかを考える。今はただ俳優として魅力的になりたいという欲が先にある。そのままでいいのか……それが多分今自分自身が考えていることなんだろうなって、今日話してて気付きました。

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中川:それぞれの方法があると思うんですよね。純粋にプレイヤーに徹したい、それを極めたい人がいる一方で、全体を見ることに、より自分の役割や喜びを見出す人もいる。適性や状況でどちらかになることもあるし、割合はそれぞれ違っても、どちらも兼ね備えていたり、全くそうじゃない道もあるのかもしれない。俳優である以上はプレイヤーとして提案はいつもしているんだろうけど、演出の領分にどれだけ踏み込むかについては関係性によるなあと今は思います。お互いにそれを求めていたら役割が入れ替わる時はあるだろうし、そもそも常にバランスを取り合うものなのかもしれない。

大谷:そうか、そうですね。

中川:私の場合は、小さい頃から物語とかフィクションが好きで、見ることや世界観を作ることへの興味が先にありました。プレイヤーとしては後発組なので、楽しみ方がおっかなびっくりです。だからね、徹するかどうかとか、そんな意識さえなくほんとに楽しいからどんどんそれに向かって行って、ひたすら演技を繰り返しているタイプ……たぶん大谷さんはそうなんだろうと思うんだけど、私からするとなんてステキなんだろうと思います。もうどんどん演技したらいいよ、と。

大谷:そうですかね(笑)。

中川:それに、何か変わる時には自然とそのタイミングがくるんじゃないかな。だから悩みながら続けるものなのかもしれません。そんな中でも、好奇心は一番の強みじゃないかな? それは誰か、他の人からは与えられないものだなと思うので。

大谷:中川さんも、中にいる事での楽しさを感じられるときもあるんですか?

中川:うん、あります。でも、いつでも、はそこに行けない感じがあります。さっき話したように、私の場合は外の環境や関係に大きく左右されます。この理由を、20代の時は完全に自分の怠惰のせいだと思ってました。実際それもあるんですけど(笑)、必ずしもそうでもなくて、自分は自分なりに、身体を動かしやすい場所や方法がある、ということを受け入れたんですよね。

大谷:一つ外から見れるというのはいいですよね。それはそれで強みというか。

中川:どちらかといえば演出家側の言葉がよくわかる気がします。そうはいっても自分のことに関しては客観的にはなれないし、やっぱり俳優としての魅力や技術、それはこれからももっと貪欲に磨きたいとは常に思います。

大谷:中川さんは、もともと、めちゃくちゃ俳優に対して疑いを持ってる感じですよね。

中川:それは、そうですね。

大谷:これは私の勝手な固定観念ですけど、私は自分含めて、俳優をやっていきたい人ほど俳優に疑い持たない人が多い気がしていて。だから、中川さんの話はすごい面白いです。

中川:それはね、疑いを持つというとカッコよく聞こえるんですけど、そんなに信じてないだけです。そもそも、ここに立つ自分への違和感でもあります。それを忘れてるときは楽なんですよね。冒頭の「物」の話で言うと、自分云々を気にせずに、この椅子がここにある、くらいの感じでいられるときが幸せなこと。それは日常的なことも関わってるんですけどね。

大谷:というと?

中川:うーん……フィットする実感を、いつも探してるんじゃないでしょうか。例えば電車に乗ってる人を見て、なんでこんなにみんな安穏と油断して座ってられるんだ、と思ってた時期もあります。まあそういう感覚は、誰しも抱くことがあるんじゃないかな、とも思いますが。

私の場合、最初に俳優や、映画を見たり本を読むのが面白いなって思ったときはそもそも現実逃避でした。普段の自分の文脈から離れて、すこんと別の文脈に入る。そこに没頭していいっていうのは、ご褒美なんです。私、寝る時に夢見るのがたぶんあらゆる行為で一番好きなんですけど、あの「夢を見る」行為を起きてる時間にやれるのがものを作ること。堂々と白昼夢を見れる(笑)。

それに、どうでもいいでしょ、その時間って。今までもこれからも関係ない、その時間だけそこにいてちゃんと目が覚めて終わる感じが、すごいいいなと思います。

大谷:ああ、それ、ものすごい分かります。

中川:“無責任感”に開放感を感じてます。

大谷:ほんとそうですよね。無責任でなんぼですよ(笑)。

「できなさ」を引き受ける

中川:さっき大谷さんが言ってた「愚かさを見せることを引き受ける」というのが立派で、刺激を受けました。私もそう思えるようになりたいです。

大谷:そうやって逃げてるだけなんですよ。それで許してください、ほんとそんな感じですから(笑)。

中川:いえいえ、ほんとにすごい素敵だなと思いました。

大谷:主宰の関さんに言われた言葉の中で、 いまだにわかってるようでわかってないのが「やりたくないことをやる」ってことです。やりたくないことをやってる人の方が面白いと言っていて、そうだなと思うんです。でもそれを意図してやっちゃうとそれはまた違うことになっちゃう。

中川:そうですね。

大谷:さっき話した、疑ってる人がなんでよく見えてくるのか。そこが一つ考えていて、気になっていることです。やりたくてやるのとどっちがいいとかでは全然なく、ただいられるっていうのはすごいことだと思うんです。

中川:確かに、その二つは居方が違う感じがしますもんね。

大谷:どっちの面白さもあるなっていう感じがあって。

中川:大谷さんと私は、入り口が真逆なんでしょうね。感じている俳優の面白さには共通するところがあったけど、入り口と通ってきた場所が大きく違った。でも話していてとても面白いし、これから大谷さんがどうなるんだろうってすごい気になります。いつか機会があったらご一緒したい。

大谷:ほんとですね。

中川:でも私、ご一緒できることあるかな。分かんないけど、制作とか、別の役割で関わってもいいです。応援したいもん、普通に。見たい。

大谷:中川さんはその、一歩下がれる感じが不思議ですよね。私にはその感覚がないんですよね。

中川:いつも最前線にいるんだね(笑)。

大谷:最前線っていうとまた違うんですけど(笑)。

中川:いや、でも繰り返しになりますけど、見られてなんぼ、やってなんぼです。私も今後はわかりませんが、地道に続けたいと思っている一人芝居の自分の企画を引き続き、しっかり作りたいと思ってます。

大谷:楽しみです、はい。

中川:話してるときりがないんですけど、そろそろ区切りをつけないとなあ。じゃあ、あえてそれらしい話を。今後は、どうしていきたいですか?

大谷:そうですね。大きく変わったことは、フリーではなく三条会という劇団に所属する俳優として、どうなるかわからないこれからを体験していけるということです。あとは、魅力的な俳優になりたいということです。そしてそれを先ず最初に言う自分にとって、演劇を続けること、作品を創っていくことがどういうことなのかを考えていきます。こんな口幅ったいことしか言ってなくてすみません。

中川:素敵です、充分。今も魅力的。

大谷:今は「できない」ってことを言ってますけど、それ一番ダメなやつですから。できないってことが色です、みたいなのって。

中川:そんな風には聞こえてないですよ。本当に謙虚だと思うし、なるべく正確に伝えようとしているのもすごくよく分かりました。この魅力がもっと多くの人に伝わったらもっといろんな機会が増えるんだろうし、私の今回のミッションとしては大谷さんの魅力をそのまま伝えることだなという気がしています。

大谷:ほんとにありがとうございました。

中川:こちらこそ、ありがとうございました。すっごい面白かったです。大事なのは面白いかどうかだとよく思います。

大谷:ほんとに、全く同意です。

中川:俳優としては、人から見て面白くなきゃダメなんだけど、生きてることにおいてはさ、自分が面白いかどうかですよね。

大谷:そうですね。

中川:最近、講師の方々と授業じゃない場所で話していたりすると、この人たちほんとに色んなことをずっと面白がってんだな、て思います。あと、山内さんがよく言葉にする、演劇とか映画ってもっとでかい、って憧れ続ける感じに激しく同意してます、日々。手に負えないすごさに憧れ続ける感じを一緒に持ってる感じが嬉しい。世にいろんなこと作ってる人がいることは知ってるけれど、学校に来て、こうして身近にそういう人たちがいることにほっとしてます。こんな風に大谷さんとお喋りするようなことが自分の人生に起きるなんてね。今回は長時間、ありがとうございました。

大谷:ほんとにありがとうございます。

中川:これからもどうぞよろしくお願いしますね、仲間として、お友達として!

大谷:はい、ぜひ!

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(ぶれててごめんなさい! でも、素敵な笑顔だったので)

 

2015年夏・映画美学校にて

 

(構成・編集:中川ゆかり 協力:古屋利雄)

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