映画美学校アクターズ・コース ブログ

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映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。アクターズ・コース俳優養成講座2023、9/1(金)開講決定!

『Movie Sick』稽古見学日記(第3回)/井川耕一郎さんより

こんにちは!ムビシク応援隊のSです!
今回は映画美学校アクターズ・コース「映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座」主任講師である井川耕一郎による稽古見学日記(第3回)をお送りします!

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フィクション・コースの講師として長年映画美学校に携わって来た井川さん(写真中央)。
その井川さんが今期からアクターズ・コースの主任講師として、新鮮な目でアクターズのみんなを見守っていた記録——
それではどうぞ!

 
『Movie Sick』稽古見学日記(第3回)

2月6日。稽古3日目。
12時に地下スタジオに行くと、鈴木睦海さん、仁田直人くん、米川幸リオンくんがいた。睦海さんと仁田くんはScene1を、リオンくんはScene5を自主練習
その後、三人は早口言葉に何度も挑戦。睦海さん、仁田くん、リオンくん、外崎桃子さん、太田エイスケくんには、佐々木透さんから早口言葉の宿題が出たとのこと。
アクターズ・コース生は全員が演技経験者ではない。
外崎さんはまったくの初心者だし、仁田くんは関西ジャニーズJrの一員として活動していてはいたが、本格的な演技経験はないようだ。そして、太田くんも大学時代に少しだけ演劇をやっていたくらい(ちなみに太田くんはフィクション・コース、脚本コースにも通っていたのだが、アクターズ・コースが一番合っているのではないか)
やはり、未経験者には早口言葉のような基礎練習が必要なのだろうなと思っている間に、次々とアクターズ・コース生がやって来て、それぞれが自分の気になるところを自主練習。さまざまなセリフや早口言葉で地下スタジオがあふれかえったところで、佐々木さんが来る。
13時に稽古スタート。佐々木さんから台本を改訂しましたとの説明あり。新たな台本が配られる。6ページ増えて52ページになっている。
加筆が多いScene4、Scene6、Scene7を読む。
14:10から前回のおさらい。2回目(2月3日)の稽古でラストのScene12までやったと聞き、その速さに驚く。
Scene1からScene5までは初日の稽古で見ているけれども、Scene6以後は初めて見ることになる。
Scene6の大西美香さんと睦海さんの芝居は、初日にワークショップふうにやってみた動きを応用したものになっている。
Scene7。新たな台本には、鈴木幸重くんが大西さんに向けて専門知識を次々とくりだす長いセリフがある(分量は半ページ)。アクターズ・コース生の中で一番、演劇や映画に詳しい幸重くんを見て、佐々木さんが加筆したことがよく分かる。
と同時に、幸重くんのやたら長い説明をついつい聞いてしまう大西さんの姿にも、どこか普段の彼女に通じるものがあった。
Scene7後半の金岡秀樹くんと塗塀一海くんのやりとりは漫才のようだった。
Scene11とScene12については、ネタバレになるので具体的なことは書けないけれども、台本からは想像できないような動きになっていた。
15:20終了。Scene1からScene12まで70分。アトリエ春風舎での本番は「もうちょっと長くなります」と佐々木さん。
15分の休憩後、佐々木さんが全員に言う。「大事にしてほしいのは、誰に向けて何を言っているのかということです」
それから、シーンごとに検討が始まる。

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Scene1。「(睦海さんも仁田くんも舞台への)出方で迷っている。まちがえたとしても自信をもって」「直人は次のことを気にしすぎ。次にやることを目で説明している。イスを見てからイスに座ると、座るのが予期できてしまう」
Scene2。事件当時の混乱が突然、舞台上に出現するシーン。「まだ演出の指示をなぞっている段階。ここは白昼夢のように見せたい。みんなの呼吸が合うことが大事」
Scene3。浅田麻衣さんと睦海さんの芝居は、セリフのやりとりだけを聞けば、室内を動きまわる浅田さんを睦海さんが目で追っている感じだ。だが、舞台上で睦海さんは浅田さんに背を向けて、客席の方を見ている。映画で言うと、切り返しに近いものが演技に求められていると言ったらいいだろうか。「二人の間で関係の糸を切らさないように注意して」と佐々木さん。
Scene4。睦海さんが被害者10人に事件を再現してほしいと求めるシーン。「ここはむー(睦海さん)と10人。1対10という感じ。コール・アンド・レスポンス。音楽のようにしたい」
Scene5はリオンくんの長い独白(1ページある)。「リオン、がんばっている。でも、切り換えがまだ遅い。長いセリフを成立させるには、自分をどんどん変化させないと」
Scene6とScene7。「面白くなっていくと思う」
Scene8では、何気なくやってしまう癖を意識することがアクターズ・コース生に求められた。「エイスケ(太田エイスケくん)はよくなっていると思うけれど、セリフを言うときに手などが動く。自分の癖を自覚すること」「との(外崎桃子さん)は座るのに頼り過ぎている」
15:55。Scene1からScene3までをやってみる。
「直人、前よりよくなった。さっきのイスに座るタイミングをおぼえておいてほしい」
もう一度、Scene1から今度はScene4まで。
Scene4について佐々木さんが言う。「全員の居方がまだまだ。1対10。むー(睦海さん)の立場が弱いのに対して、10人は強い。それぞれが自分のストーリーを作ってほしい」
その後、Scene3の途中からScene4までを5回。
被害者10人の立ち位置が変更され、コール・アンド・レスポンスが全員に求められる。「セリフがぽんぽん出てくる感じが聞きたい」
佐々木さんはScene3からScene4に移っていく部分にもこだわった。ここは映画ふうに言うと、睦海さんの顔のアップから回想に入っていく感じだろうか。16mmカメラのそばに立って客席を向いていた睦海さんが、10人と対峙するため、くるりと動く。彼女には映画のカット割りに近い効果の動きが求められているようだった。
また、Scene4の後半、睦海さんは舞台中央から16mmカメラのそばに戻った。このあとの睦海さんと四柳智惟くんたちのやりとりは、Scene3のときと同じく映画の切り返しに近いものとなった。
17時、Scene1からScene4までをもう一度。17:45終了。
稽古のあと、佐々木さんは舞台監督の若旦那家康さんたちと打ち合わせ。舞台空間を真っ白にして、壁に映像を映写したいとのこと。
19時、アクターズ・コースの講師、近藤強さんが来て、ビューポイントという基礎練習が始まった。21時までやるのだという。
アクターズ・コース生を見ていて、いいなと思ったことがある。演技経験者と未経験者の間に上下関係がないのだ。演技を学ぶ者として対等だという共通認識が自然とできている。
そして今は修了公演をいいものにしようということで団結している。みんな、一生懸命だ。

(第4回に続く)

井川耕一郎
1962年生まれ。93年からVシネマの脚本を書きはじめる。主な脚本作品に、鎮西尚一監督『女課長の生下着 あなたを絞りたい』(94)、常本琢招監督『黒い下着の女教師』(96)、大工原正樹監督『のぞき屋稼業 恥辱の盗撮』(96)、山岡隆資監督『痴漢白書10』(98)、渡辺護監督『片目だけの恋』(04)『喪服の未亡人 ほしいの…』(08)やテレビシリーズ「ダムド・ファイル」など。最新作は監督も務めた『色道四十八手 たからぶね』(14)。本年度より映画美学校アクターズ・コース主任講師。


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2017年3月2日[木] - 3月5日[日]
アクターズ・コース2016年度公演
『Movie Sick ムービーシック』

作・演出:佐々木透(リクウズルーム)
リクウズルーム代表。ク・ナウカシアターカンパニーで演出家・宮城聰のもと俳優として活動。退団後、執筆活動に取り組む。「日本の劇」戯曲賞2013最優秀賞受賞、第5回泉鏡花記念金沢戯曲大賞受賞。 文学への深い知識、鋭い感性と美意識を持ち、”戯曲構造”と”物語の可能性”を探る事をテーマに創作活動を行う。

出演:浅田麻衣、太田英介、大西美香、金岡秀樹、
   鈴木睦海、鈴木幸重、外崎桃子、仁田直人、
   塗塀一海、四柳智惟、米川幸リオン
  〔アクターズ・コース映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座〕
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公演日程
2017年3月
2日(木)19:30〜★
3日(金)19:30〜★
4日(土)14:00〜/19:00〜
5日(日)14:00〜/18:00〜
★=終演後アフタートーク開催〔30分程度を予定〕

※未就学児童の入場はご遠慮ください。 
※受付開始・当日券販売は開演の40分前、開場は開演の20分前 
※演出の都合上、開演後はご入場をお待ちいただく場合がございます。

会場:アトリエ春風舎
〒173−0036 東京都板橋区向原2−22−17 すぺいすしょう向原B1


チケット料金(日時指定・全席自由、予約・当日とも)
一般:2,300円
学生:1,800円※公演当日、受付にて要学生証提示

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