映画美学校アクターズ・コース ブログ

映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。映画・演劇を横断し活躍する「俳優養成講座 」 2017年9月開講決定!

アクターズ・コースが超えるボーダー 〜アート系「現代演劇」をゆく修了生座談会〜【1】

9月より開講するアクターズ・コース 俳優養成講座2017。今回は現在修了生にスポットを当ててお届けします。

講師の山内健司さんが「なんか最近修了生たちが面白い動きをしている!」と、気になっているご様子。特に気になる動きをしている修了生を招いての座談会を行いました。全3回に分けてお届けします! 聞き手は映画美学校非公式ブログ「映画B学校」編集長である、ライターの小川志津子さんです!

それではどうぞ!

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映画美学校のアクターズ・コースの修了生たちが、なんだか不思議な動きを見せているという。物語展開や何らかのカタルシスで魅せるスタンダードな芝居ではなく、ある小さな動きやせりふ、独自の仕掛けなどを観客の前に提示する、現代アートインスタレーションみたいな作品群に出演する修了生が続出しているのだ。映像でも演劇でも、どんな現場でも力を発揮する俳優を育ててはきたけれど、講師陣としても、この展開は想定外だった様子。気になる動きを見せている面々に、講師である山内健司が聞いた。

取材・文小川志津子

 

【登壇者プロフィール】

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佐藤駿:第1期生。映画美学校修了後、CM制作会社に勤務。退社後、2016年ごろより「犬など」という名前でパフォーマンスを創作するユニットをはじめる。また、出演活動も継続している。最近の主な出演に、映画『ジョギング渡り鳥』(監督:鈴木卓爾)、演劇『人間と魚が浜』(演出:三野新)、演劇『私たちのことを知っているものはいない』(演出:今野裕一郎)など。

 

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横田僚平:第4期生。芝居をはじめた次の年に映画美学校に通い、無隣館にも通い、いまにいたる。オフィスマウンテンや新聞家の舞台に出演。7/20~25まで北千住アートセンターBuoyで新聞家「白む」上演します。

 

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菊地敦子:第5期生。多摩美術大学美術学部芸術学科卒。在学中からダンスパフォーマンスを始める。主な出演に、映画「サロメの娘 アナザサイド remix」(監督:七里圭)、「シンクロナイザー」(監督:万田邦敏)、演劇「それからの街」(演出:額田大志)など。この夏は犬など「レーストラック」、ヌトミック「何事もチューン」に出演。kikuchi atsuko

 

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深澤しほ:第5期生。実践女子大学人間社会学科卒。卒業論文で書いた『まばたきの演技-役者の意図的な瞬目による印象操作-』は日本心理学会まばたき研究会で発表される。2016年サンプルの地方滞在型WS「わたしたちの発明」参加。近年の出演作品は新聞家「揃う」2016、ヌトミック「SaturdayBalloon」(2017)、はらぺこ満月「食べたい記憶」2017、市原幹也×市原佐都子「手紙プロジェクト」参加。月、ヌトミック「何事もチューン」の出演を控えている。

 

ほんとは「巧い」って言われたい

山内 映画美学校のアクターズ・コースで教えていることは、青年団の俳優が講師をしているせいでもあるんですけど、演劇としてはごく普通の、スタンダードな演技で、つまり舞台やカメラの前での振る舞い方を伝授するというよりは、「そもそも演技って何なんだろうね」ということを追求してきたわけです。修了生たちはその後も、映画や演劇、商業的なものも、そうでなくても、それぞれいろいろな形で頑張っているんですけど、ふと見回してみたら、不思議な結びつきを見せている人たちがいて。まず、佐藤くんが主宰する「犬など」に、菊地さんが出演したんだよね。

inunado.wixsite.com

佐藤 菊地さんとの直接の出会いは、「バストリオ」のワークショップでした。何人かでグループになって、みんなで発表するっていうワークショップだったんですけど、菊地さんたちの発表を見て、素敵な役者さんだなと思っていました。それで、今回の『レーストラック』をつくる際に、誘おうかな、と思っていたタイミングで、「飯島商店」で開催された映画の上映会でばったり会ったので、「企画書だけでも送らせてください」ってお願いしたのが始まりでした。

iijimashouten.com

菊地 私は「バストリオ」のワークショップに参加した時点で「犬など」の名前は映画美学校を通して知っていて気になっていたので、「映画美学校の方ですよね」というところから、お話するようになったんです。

 

山内 それで今回は、この人たちが話したい相手をそれぞれ指名してお話ししようということで、こういうメンバーになったわけですが、まず菊地さんは、深澤しほさんをご指名したわけだよね。

 

菊地 しほさんとは同期なんですけど、今のところ、一番ご縁がある方なんですよ。まず、「ヌトミック」という団体でのつながり。私は映画美学校在籍中に、「ヌトミック」という団体になる前の、額田大志さんの作品『それからの街』に参加していたんですけれど、5期のカリキュラムが終わってから、しほさんが「ヌトミック」の公演に参加されたんです。次の作品では共演します。他にも、映像系のワークショップで偶然会ったりとか、自主練習会みたいなことを試みたときに、お声がけしたりとか。それで今回、指名させていただきました。

nuthmique.com

深澤 私は5期の時から、あっちゃんに興味がすごくあったんですよ。私も飯島商店の雰囲気や空間がすごく好きで行くんですけど、そうすると必ずあっちゃんもいる。だから妙に安心感があって。他にも、あっちゃんが関わっている作品や現場が、何だかいつも面白いなとずっと思っていて。あっちゃんはどうして、こんなにいろんな場所を知っているんだろうっていうのを聞きたくて来ました(笑)。

 

山内 いやいや、あなたもでしょう(笑)。

 

深澤 まあいろいろ行ってますけど(笑)、あっちゃんを取り巻くコミュニティーが面白くて。だから逐一、「あっちゃん最近何してるの」って聞くようにしてます。うっとうしいくらい(笑)。

 

山内 さとしゅん(佐藤駿)は今回、横ちゃん(横田僚平)をご指名したわけですが。

 

佐藤 舞台に出ている姿を観ていて、すごいなあって思っていたんです。出演作を2本続けて観たんですけど、それぞれ、全然違ったんですよ。ほんと、頭がこんがらからないのかなってすごい不思議で。全然違うお芝居を、頭の中でどうやって切り替えているんだろうというのを聞きたくて、指名しました。

 

横田 「新聞家」の公演の時に、話しかけられたんですよね。

sinbunka.com

佐藤 終演後に話しかけました。あまりにも、すごくて(笑)。お芝居が始まる前、お客さんが客席に入ってくる間に、役者がうろちょろしている時間があったじゃないですか。

 

横田 うろちょろ(笑)。

 

佐藤 そこでの横田さんがすごく気になって、「あれは何をやっていたんですか」「普通に、自由演技です」みたいな会話をした記憶があります。というか、横田さんとはまだ、そういう会話をした記憶しかないです(笑)。

 

菊地 「新聞家」は次の公演の稽古を公開しているんですよね。見学じゃなくて、参加型の。それにこの前参加して、そこで私は横田さんに初めてお会いしました。

 

山内 え、行ったら参加できるの?

 

横田 2000円、かかっちゃうんですけど。

 

山内 2000円、結構するね(笑)。

 

佐藤 僕も1回だけ、「新聞家」の公開稽古に行ったことがあります。なんか、会議っぽいですよね。

 

山内 それは、俳優同士はやりとりになっているの?

 

深澤 やりとり……とは、違うような。それぞれがしゃべっている感じ。

 

横田 そうですね。顔を見合わせて「だよねー」とかはないです。

 

深澤 映画美学校のカリキュラムで、「わからない言葉をわからないまま言うことはできないよね」っていう山内さんの講義があったじゃないですか。その点で言うと、「新聞家」の村社祐太郎さんが書くテキストって、ひっかかるところがありすぎるんです。日常会話では使わない、すぐには理解できないような言葉で。私は去年「新聞家」で、横田さんと二人芝居をしたんですけど、せりふのひとつひとつを、普通に発話できないんですね。だから、確かめ合って、自分と対話するみたいな感じです。ここにあるのはテキストと自分だけ、っていう世界観。

 

横田 よく「朗読を聞いてるみたい」って言われます。

 

深澤 「絵画を見てるみたい」とも。

 

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――皆さんはいろいろな作品を観たり読んだりする中で、何に反応して「これ面白い」って思いますか

 

横田 僕は、俳優です。俳優が、面白そうな作業をしていれば、それをずっと観ちゃいます。作品がどうこうっていうのは、あまり関係ないかも。

 

深澤 最近、そういう作品はありましたか。

 

横田 演劇じゃないんですけど、ダンスの、関かおりさん。初めて観たんですけど、とにかくずっと静寂なんですよ。見たことのない、人間のような形をした彫刻がいっぱい出てきて、それが折りたたまれたり引っぱり合ったり、ぶらさがったりしている様を見る。動物園みたいな感じがして。

www.kaoriseki.info

山内 ほおー。

 

横田 あと、なんか、匂いがするんですよね。香りを担当してる人がいて。天井を見たら巨大な――あれは何ていうんだろう、急須でお茶を淹れる時に、お茶っ葉を入れるゾーンがあるじゃないですか。

 

佐藤 アミアミのゾーン。

 

――「茶こし」ね。

 

横田 そう、茶こしゾーン(笑)。あれが劇場の天井にセットしてあって、そこから香りがしてくるんですよ。合わない人は咳き込むだろうな、っていうくらい。でも、咳き込むことすらはばかられるほどの静寂。すごい緊張感でした。

 

佐藤 僕は作品を観るとき、いろんなところを観ちゃうから一概に言えないのですが、「役者さんすごいな」とも思うし、「こんなやり方があるんだ」っていうことに心が動くこともある。「新聞家」の公演には、その両方があったから驚きました。

 

――自分もやりたくなったりはしますか。

 

佐藤 ああ、「この作品に出たいか出たくないか」は、頭によぎります。「ここに自分は出られないな」と思いながらも「面白い」って思う作品もあるし、その逆もあります。

 

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深澤 私も同じ感じです。自分にはわからないことをしている作品に、興味が向きますね。「わかってしまう」ことへの安心感に、すごく危機感があるんですね。「わからない」けれども作品として成立していて胸を打たれる。これって何なんだろう? っていう興味を頼りに、私はいろんな作品を観ていて。「これがこうなったからこう着地した、よかった」っていう感じより、「……なんだこれ??」っていう方に興味が働くし、それを解き明かしたいから「参加したい」って思う。

 

横田 ああ、「解き明かしたい欲」はありますね。ワークショップに参加する動機は、だいたいそれです。

 

深澤 そして、「出られるか出られないか問題」も確かにあります。自分で「出られる」なんておこがましいけど、でもこの舞台の上に自分が立っている図が思いつかないことってあるじゃないですか。観客としての距離感で、得られるものを得たいなと思う作品もある。でも、「これやりたい」って思ったらもう、すぐにワークショップへ行きますね。

 

佐藤 「やりたい欲」、僕もある。ありますね。

 

菊地 「バストリオ」さんは、それが大きいですね。「これ、やってみたい」って思わされます。

 

横田 「バストリオ」のワークショップって、こういう類の人が多い気がする。「やれ」って言われたことだけをやりに来てない感じ。「いろんな自分がいる」っていうことを自分で発見して、それをみんなで見合う感じ。

 

一同 ああーー。

 

横田 と言いながら、物語の内容も俳優の巧さも判然としない作品に惹かれつつも「この俳優、巧いなー」「この作品、よくできてるなー」みたいなものに、いつか出たいんですけどね僕は。「巧いなー!」って言われたい。

 

一同 (笑)。

 

深澤 その「巧い」は何の巧さ?

 

横田 技術。「ワザがあるなーー!」って言われたい。

 

佐藤 いぶし銀な感じだ(笑)。

 

横田 そう。なんか、「そのままでいいんだよー」みたいな人が出てきて、「何だかよくわからないけどイイなあー」みたいな芝居は、曖昧すぎてちょっと……。

 

菊地 私は、見たことのないものを目の前にした時に、「私もこの人たちも同じ人間なのだから、私にもこれと似た部分があるんじゃないか」って思うことが多いですね。自分の記憶を掘り起こしたり、想像をめぐらせる感じ。

 

――山内さんは、どんな眼差しでお芝居を観ますか。

 

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山内 演出家と、俳優と、観客の関係。それに尽きるな。最近、ますますそうだね。強権的な演出家の作品って、観てるだけで息が詰まっちゃう。

 

菊地 それは、作品に表れますか。

 

山内 もろ、表れるよ。俳優に抑圧がかかっているのが、はっきりとわかるよね。あと、お客さんと舞台そのものとの関係もすごく気になる。そこに発明があるかどうかが一番気になる。お客さんが楽しませてくれるのをただ待ってるような公演よりは、お客さんが能動的に、同じ目線で参加しているものを僕は観続けている感じです。

 この前、柴幸男くんが多摩美術大学でやった『大工』って作品がすごく良かったんだよね。学生にとって、演出家って、普通だったら「先生」じゃん。「演出家」と「俳優」が同じ目線になるのも大変なことなのに、「先生」と「学生」が同じ目線になるっていうのはさらにすごいことで。でもその舞台は、明らかに学生と一緒に作られていた。そうはっきり断言できる舞台だったんだよ。僕は、そういうことに感動しがちです。

www.mamagoto.org

 「演劇ってこういうものでしょ」っていうところに依って立つ割合が多くなっちゃうと、しらけちゃう感じが僕にはあるんですよ。お客さんにはお客さんのポジションが約束されてて、舞台上は舞台上の掟みたいなものが約束されている、そのことにあまり疑いがない舞台を観るなら、俺は山登りをする方が楽しいって思っちゃうんだよね。

 

一同 (笑)。

 

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eigabigakkou.com