映画美学校アクターズ・コース ブログ

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映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。アクターズ・コース俳優養成講座2023、9/1(金)開講決定!

総合プロデューサー暇つぶし雑記(その5)/井川耕一郎さんより

今回は映画美学校アクターズ・コース「映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座2017」主任講師である井川耕一郎による総合プロデューサー暇つぶし雑記(第5回)をお送りします!

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フィクション・コースの講師として長年映画美学校に携わって来た井川さん。

その井川さんがアクターズ・コースの主任講師として、新鮮な目で受講生を見守っていた記録──

それではどうぞ!

 

 

2月5日(月)・稽古4日目。
 12時半、地下スタジオに行ってみると、数人のアクターズ・コース生が田端奏衛くんから話を聞いていた。

先週、田端くんの部屋の隣が火事になったとのこと。負傷したお隣さんを助け、自室で休ませるなど、いろいろ大変だったようだ(そのため、稽古を一回休むことになった)。

すごいじゃない、表彰されるんでしょ、という感想が出る。いつもの田端くんなら、おう、感謝状もらったら見せてやるよ!と言いそうなところだが、このときはちがっていて、他人の不幸で表彰されるっていうのもね……、とぼそっと答えていた。普段は悪乗りと言っていいくらいはしゃぎまわるタイプなのだが、本当は繊細なのだ。

演出の玉田真也さんが13時に到着。

地下スタジオの中央には、学校のテーブルやイスを使ってサナトリウムの面会室が作られている。テーブルの上には、台本で指定されているベルの他に、雑誌やお菓子が置いてあり、床にはボールが転がっていた。

13:05に稽古スタート。まずは、前回のおさらいで、2・1・3~3・3・3(50ページある台本のうち、20ページほどの分量)をやることになった。

おさらいと言うと、芝居の流れをさらっと確認というイメージがあるかもしれないが、玉田さんの場合はそうではない。

たとえば、石山優太くん演じる患者の福島が、田端くん演じる見舞いに来た友人・鈴本を相手に無駄話をする場面。この場面には、豊島晴香さん演じる別の患者の見舞い客・大島がいることになっているので、石山くんにとっては、豊島さんを意識して話すタイミングが重要になる。

玉田さんは区切りのいいところで芝居を止めて石山くんに言った。「あと、やっぱり」と言いながら豊島さんを見るのは早いです。豊島さんが自分の話を聞いているなと気づいてから見るようにして下さい。

こうした細かい指示を受けてアクターズ・コース生たちが演じ直すということを44回くりかえしながら、おさらいは進んでいった。

見学していて面白いなと思ったのは、田中祐理子さん演じる見舞い客の佐々木が、田端くん演じる鈴本の質問を受けて、「風立ちぬ、いざ生きめやも」の「めやも」を解説する場面だ。

田中さんは解説する前にタバコを一本取り出し、テーブルの上でトントンとやってからくわえようとする。すると、医師の松木ジェスチャーでここは禁煙ですと伝えるというふうになっていたのだった。

ここは台本には台詞しか書いていない。しかし、タバコを取り出して喫おうとする仕草には、田中さんならそうしてもおかしくないだろうという感じがあった。

 

今回の修了公演『S高原から』の配役は、普段のアクターズ・コース生の姿と重なり合うところがかなりある。

たとえば、15才くらいから8年、サナトリウムで生活している患者・吉沢貴美子を演じる那須愛美さん。入学面接のときに講師の山内健司さん(青年団)から、彼女は高校演劇で活躍していた子です、と聞いたことが影響しているのかもしれないけれど、もう大学生だと分かっているのに、今でも高校一年くらいにしか見えないのだ(とはいえ、修了公演の広報係として打ち合わせをし、パソコンに向かっている姿を見ると、大人だよなあ、という感じもするのだが)。

石山くんもそうだ。講義のあと、立ち飲み屋で軽く飲んだとき、石山くんは、まあ、アクターズ・コースの男の中でぼくが一番年上ですからね、と言ったのだった。彼は自分の立場というか責任を強く意識している。けれども、それをひとに見せずに、さりげなく気のいい兄貴としてふるまっているのだ。石山くんのそういうあり方は、患者の福島に通じるところがあるだろう。

神田朱美さんが演じる上野は、父親が社長で、別荘を持っていて、ひと月くらい家族旅行でフロリダに行くことになっている。一般の生活感覚からずいぶんかけ離れた登場人物なのだけれども、神田さんならできそうな気がする。というのも、普段の彼女を見ていると、生活感がすとんと抜け落ちているようなたたずまいなのだ。やっぱり、アイドル的人気のあった声優だったからか(いや、ツイッターのフォロワーが四万を超えているというのだから、今も人気があるようですが)。

そういえば、いつだったか、講義のあと、地下スタジオでみんなで飲んだときのこと。走る姿が様になっているかどうかが話題になったところで、神田さんが走り出して、わたしの走り方、おかしくないかな?と訊いてきた。

すると、豊島晴香さんが言ったのだった。全然おかしくないけれど……、でも、何だかお花畑が見えてきた。

ちょうどビールを飲んでいたものだから、ぷっと吹きそうになった。

 

 

井川耕一郎(映画監督・脚本家)

1962年生まれ。93年からVシネマの脚本を書きはじめる。主な脚本作品に、鎮西尚一監督『女課長の生下着 あなたを絞りたい』(94)、常本琢招監督『黒い下着の女教師』(96)、大工原正樹監督『のぞき屋稼業 恥辱の盗撮』(96)、山岡隆資監督『痴漢白書10』(98)、渡辺護監督『片目だけの恋』(04)『喪服の未亡人 ほしいの…』(08)やテレビシリーズ「ダムド・ファイル」などがある。最新作は監督も務めた『色道四十八手 たからぶね』(14)。映画美学校では、コラボレーション作品として『寝耳に水』(00)、『西みがき』(06)を監督している。他、編著書として、高橋洋塩田明彦と共同編著した大和屋竺シナリオ集「荒野のダッチワイフ」(フィルムアート社)がある。

 

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映画美学校アクターズ・コース 2017年度公演
「S高原から」
作・平田オリザ 演出・玉田真也(玉田企画)

【玉田真也(玉田企画 / 青年団演出部)】
平田オリザが主宰する劇団青年団の演出部に所属。玉田企画で脚本と演出。日常の中にある、「変な空気」を精緻でリアルな口語体で再現する。観る者の、痛々しい思い出として封印している感覚をほじくり出し、その「痛さ」を俯瞰して笑に変える作品が特徴。

出演:石山優太、加藤紗希、釜口恵太、神田朱未、小林未歩、髙羽快、高橋ルネ
          田中祐理子、田端奏衛、豊島晴香、那木慧、那須愛美、本荘澪、湯川紋子
        (映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座2017)
          川井檸檬、木下崇祥

舞台美術:谷佳那香、照明:井坂浩(青年団)、衣装:根岸麻子(sunui)
宣伝美術:牧寿次郎、演出助手:大石恵美、竹内里紗
総合プロデューサー:井川耕一郎
修了公演監修:山内健司、兵藤公美、制作:井坂浩

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公演日程:2018年2月28日(水)〜3月5日(月)

2/28(水)19:30~
3/1  (木)19:30~
3/2  (金)15:00~ / 19:30~
3/3  (土)14:00~ / 19:00~
3/4  (日)14:00~
3/5  (月)15:00~
※受付開始は開演の30分前、開場は開演の20分前
※記録撮影用カメラが入る回がございます。あらかじめご了承ください。 

チケット(日時指定・全席自由・整理番号付)
前売・予約・当日共
一般 2,500円 高校生以下 500円
資料請求割引 2,000円 

※高校生以下の方は、当日受付にて学生証をご提示ください。
※未就学児はご入場いただけません。
※資料請求割引:チケット購入時に映画美学校の資料を請求してくれた方に500円の割引を行います(申し込み時に資料の送付先となる連絡先の記入が必須となります)。

チケット発売開始日 2018年1月8日(月・祝)午前10時より

<チケット取り扱い>
CoRichチケット! https://ticket.corich.jp/apply/88312/

<資料請求割>
映画美学校の資料を請求いただきました方は当日2500円のところ、2000円で鑑賞いただけます!
下記よりお申込みください。お申込み後、映画美学校より随時学校案内などの資料をお送りいたします。

映画美学校アクターズ・コース資料請求割引申し込み専用フォーム 

会場
アトリエ春風舎
東京メトロ有楽町線副都心線西武有楽町線小竹向原」駅 下車
4番出口より徒歩4分
東京都板橋区向原2-22-17 すぺいすしょう向原B1
tel:03-3957-5099(公演期間のみ)
※会場には駐車場・駐輪場がございませんので、お越しの際は公共交通機関をご利用ください。

お問い合わせ
映画美学校
〒150-0044 東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS B1F
電話番号:03-5459-1850 FAX番号:03-3464-5507
受付時間(月ー土) 12:00-20:00