映画美学校アクターズ・コース ブログ

映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。「映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座2018」9/3(月)開講!

総合プロデューサー暇つぶし雑記(その6)/井川耕一郎さんより

今回は映画美学校アクターズ・コース「映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座2017」主任講師である井川耕一郎による総合プロデューサー暇つぶし雑記(第6回)をお送りします!

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フィクション・コースの講師として長年映画美学校に携わって来た井川さん。

その井川さんがアクターズ・コースの主任講師として、新鮮な目で受講生を見守っていた記録──

それではどうぞ!

 

 

前回の話の続きを。

おさらいをやったあと、15分の休憩となった。

外でお茶を買って地下スタジオに戻ってきたら、急にラジオ体操が流れだして、生活係の湯川紋子さんが、みなさーん、体をほぐすために、ラジオ体操をやりましょう、と呼びかけた。

女性は一致団結して体操をし始めたが、男たちは動こうとしない。すると、湯川さんが言った。やるやらないは自由ですけど、風邪をひいてもしりませんよー。

しぶしぶ一人、二人と腰をあげる。何だよ、この新興宗教みたいな感じはよ、とぼやきつつも田端奏衛くんも体操を始めた。その様子を見て笑っていたら、湯川さんが言った。井川さんもやりましょー、健康にいいですよー。

こうなると、もう立派な強制だ。ラジオ体操に加わるしかなかった。

そんな中、最後まで動こうとしなかったのが高羽快くんだった。しかし、床にぺたりとお尻をくっつけた姿勢から、和式便所でふんばるような姿勢になり、うおおお!と叫びだした。そしてようやく葛藤を乗り超え、立ち上がった--もっともそのとき、ラジオ体操は終わりにさしかかっていたのだが。

生活係は恐ろしい。次回の稽古見学からは、休憩時間は外ですごそうと思ったのだった。

15時、稽古再開。初めて演じる3・4・1以後の部分となる。

稽古の進め方はおさらいのときと同じで、玉田さんが芝居を見て指示を出し、アクターズ・コース生たちが演じ直すというのを48回くりかえした。

玉田さんの指示を聞きながら思ったのは、アクターズ・コース生一人一人に宿題を出しているなということだ。

たとえば、これはおさらいのときだけれど、神田朱美さん演じる上野が、高羽快くん演じる患者・西岡の見舞いに来る場面。

ここでは上野と西岡の会話が何度か中断され、西岡が同じ患者の貴美子(演じるのは那須愛美さん)や前島(演じるのは加藤紗希さん)と話すことになっているのだが、玉田さんは神田さんに、患者同士のやりとりを見ているときの取り残された感が足りない、と言っていた。また、高羽くんには、加藤さんを紹介することで、神田さんに疎外感を与えるようにしてほしい、とも言っていた。

おそらく、玉田さんは神田さんと高羽くんに、二人の間に生じてしまった距離とは何なのかを考えてみて下さい、という宿題を出しているのだろう。それは、カレンダーに記されたスケジュールに縛られてしまう者と、そこから解放されてしまった者のちがいと言うことができるかもしれない。しかし、こうやって言葉にすると簡単な問題のように見えるけれども、それをどうやって身体で表現するかはなかなか難しい。

釜口恵太くん演じる患者・村西が田中祐理子さん演じる佐々木からショックを受けるようなことを聞く場面も、演じるのが難しいところだろう。

玉田さんは釜口くんに、カチンと来て佐々木に攻撃的になるけれども、いつもは明るい村西がつぶされていく感じがほしい、と言った。「いつもは明るい村西」と言っているということは、芝居全体の中でこの場面がどういう意味を持つかを考えてみて下さい、ということだろうか。それから、玉田さんの言葉を聞いていて何となく、村西にとっては悲劇だけれども、引いた目で見ると、笑える感じを釜口くんに求めているのかな、とも思った。

小林未歩さん演じる見舞い客・藤原が石山優太くん演じる患者・福島と二人きりで話す場面では、玉田さんが小林さんに、もっと普通のトーンで深刻にならないように、途中でお菓子を食べたっていいです、とアドバイスしていた。

小林さんは青年団の舞台が好きで、『S高原から』のDVDも買って何度も見ているくらいだから、内容についてはかなり詳しいのだ。だからだろうか、藤原と福島は以前は結婚も視野に入れてつきあっていたが、別れてしまったという設定を意識しすぎて、話すトーンが深刻になってしまっている。

おそらく、藤原が病気の福島と別れて悩んだとしても、それはもう過去のことだ。恋愛関係に戻ることはないけれども、今の藤原は福島との間に別な形の良好な関係を作ろうとしている。その関係がどんなものなのかイメージして下さいというのが、玉田さんが小林さんに出した宿題なのだろう。

その宿題のヒントは普段の小林さんの中にあるように思った。

山内健司さんの講義の発表会のときのこと。渋谷をテーマにした創作ということで、小林さんが披露したのは円山町のラブホテルの格付けだった。

驚き呆れたことに、小林さんは釜口くんとカップルを装って次々とラブホテルに入り、釜口くんがフロントのひとに話しかけているすきにタッチパネルの部屋の写真をスマホで盗撮しまくった。そして、発表会では、収集した情報をスライド上映しながら、一つ一つコメントしていって観客を笑わせていたのだった。

セックスをめぐるきわどいネタを話しているのに後ろめたさがないあっけらかんとした感じ。あの明るさが小林さんの持ち味であって、『S高原から』で、死に至る病を意識しつつも福島と会話するときにも、それが出るといいと思うのだが。

(ついでに言っておくと、小林さんのラブホテル調査にとことんつきあった釜口くんの底抜けのひとの良さも、どこか村西役に通じるところがあるのでは?)

前回、アクターズ・コース生それぞれが演じる役は、普段の彼らの姿と重なり合うところがあると書いたけれど、だからと言って、演じやすいというわけではない。普段の感じを取りこみながら、フィクションを立ち上げるのは、容易なことではないようだ。

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5日の稽古は、ラストまでやって17:10に終了。

石山くんが、井川さん、コンビニ行って、缶ビール買いますか?と訊いてきた。

今まで週一のペースで講義見学をしていたのだけれど、講義後に地下スタジオでビールを一人で飲んでいたら、石山くんがつきあってくれるようになり、やがて、小林さん、豊島晴香さんも加わってシフト制で相手をしてくれるようになった。

まあ、言ってしまえば、三人は主任講師介護士みたいなものである。

しかし、修了公演の稽古という大事な時期だし、アクターズ・コース生たちで話し合うことがあるようだった。缶ビールを買ってくるのはまずいだろう。

というわけで、帰り道、おっさんの吹きだまりみたいな居酒屋で一人、なめろうでホッピーを飲んだのだった。

 

 

井川耕一郎(映画監督・脚本家)

1962年生まれ。93年からVシネマの脚本を書きはじめる。主な脚本作品に、鎮西尚一監督『女課長の生下着 あなたを絞りたい』(94)、常本琢招監督『黒い下着の女教師』(96)、大工原正樹監督『のぞき屋稼業 恥辱の盗撮』(96)、山岡隆資監督『痴漢白書10』(98)、渡辺護監督『片目だけの恋』(04)『喪服の未亡人 ほしいの…』(08)やテレビシリーズ「ダムド・ファイル」などがある。最新作は監督も務めた『色道四十八手 たからぶね』(14)。映画美学校では、コラボレーション作品として『寝耳に水』(00)、『西みがき』(06)を監督している。他、編著書として、高橋洋塩田明彦と共同編著した大和屋竺シナリオ集「荒野のダッチワイフ」(フィルムアート社)がある。

 

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映画美学校アクターズ・コース 2017年度公演
「S高原から」
作・平田オリザ 演出・玉田真也(玉田企画)

【玉田真也(玉田企画 / 青年団演出部)】
平田オリザが主宰する劇団青年団の演出部に所属。玉田企画で脚本と演出。日常の中にある、「変な空気」を精緻でリアルな口語体で再現する。観る者の、痛々しい思い出として封印している感覚をほじくり出し、その「痛さ」を俯瞰して笑に変える作品が特徴。

出演:石山優太、加藤紗希、釜口恵太、神田朱未、小林未歩、髙羽快、高橋ルネ
          田中祐理子、田端奏衛、豊島晴香、那木慧、那須愛美、本荘澪、湯川紋子
        (映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座2017)
          川井檸檬、木下崇祥

舞台美術:谷佳那香、照明:井坂浩(青年団)、衣装:根岸麻子(sunui)
宣伝美術:牧寿次郎、演出助手:大石恵美、竹内里紗
総合プロデューサー:井川耕一郎
修了公演監修:山内健司、兵藤公美、制作:井坂浩

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公演日程:2018年2月28日(水)〜3月5日(月)

2/28(水)19:30~
3/1  (木)19:30~
3/2  (金)15:00~ / 19:30~
3/3  (土)14:00~ / 19:00~
3/4  (日)14:00~ / 19:00~(追加公演)
※追加公演のチケット発売開始は2/22(木)お昼12時から
3/5  (月)15:00~
※受付開始は開演の30分前、開場は開演の20分前
※記録撮影用カメラが入る回がございます。あらかじめご了承ください。 

チケット(日時指定・全席自由・整理番号付)
前売・予約・当日共
一般 2,500円 高校生以下 500円
資料請求割引 2,000円 

※高校生以下の方は、当日受付にて学生証をご提示ください。
※未就学児はご入場いただけません。
※資料請求割引:チケット購入時に映画美学校の資料を請求してくれた方に500円の割引を行います(申し込み時に資料の送付先となる連絡先の記入が必須となります)。

チケット発売開始日 2018年1月8日(月・祝)午前10時より

<チケット取り扱い>
CoRichチケット! https://ticket.corich.jp/apply/88312/

<資料請求割>
映画美学校の資料を請求いただきました方は当日2500円のところ、2000円で鑑賞いただけます!
下記よりお申込みください。お申込み後、映画美学校より随時学校案内などの資料をお送りいたします。

映画美学校アクターズ・コース資料請求割引申し込み専用フォーム 

会場
アトリエ春風舎
東京メトロ有楽町線副都心線西武有楽町線小竹向原」駅 下車
4番出口より徒歩4分
東京都板橋区向原2-22-17 すぺいすしょう向原B1
tel:03-3957-5099(公演期間のみ)
※会場には駐車場・駐輪場がございませんので、お越しの際は公共交通機関をご利用ください。

お問い合わせ
映画美学校
〒150-0044 東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS B1F
電話番号:03-5459-1850 FAX番号:03-3464-5507
受付時間(月ー土) 12:00-20:00