映画美学校アクターズ・コース ブログ

映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。映画・演劇を横断し活躍する「俳優養成講座 」 2017年9月開講決定!

演劇と批評について

このブログは映画美学校アクターズ・コース初等科第2期修了公演『革命日記』(作・平田オリザ、演出・松井周)の公演に先駆けて、関連するさまざまな情報を発信していくための場として設置されました。同時に、ともに映画美学校の講座であるアクターズ・コースと、佐々木敦を主任講師とする批評家養成ギブスとのコラボレーション企画の一環でもあります。せっかく1つの学校の中に創作と批評のコースがあるのだから、相互交流をしながら活動していこう、というわけです。

 今回はイントロダクションとして、演劇と批評がどのような関係を結ぶことができるのかについて(そのような「関係」の実践の一つとしてこのブログがあります)、批評家養成ギブスで学んだことを踏まえつつ考えていきたいと思います。
 
劇評はその多くが、対象となる作品の公演が終わってから世に出ることになります(新聞に掲載される劇評など、そうでない場合ももちろんありますがここでは脇に置いておきます)。つまり、多くの劇評は作品を見た人か、そうでなければ見ることのできなかった人に読まれることを想定した読みものなのです。書評の多くがおそらくは「これからその本を手に取る可能性のある人」を第一の読者として想定しているであろうことを考えると、この違いはかなり大きいです。書評が担っているような、作品そのものを誰かにリコメンドする役割を、劇評は担っていないことが多いのです。では、劇評の主な役割とは一体なんでしょうか。
 
劇評の主な役割は「ある作品がどのような作品であったかを述べること」である、ととりあえず言ってみましょう。「どのような作品であったか」の中には「具体的な作品内容」と「それを劇評の書き手がどのように見たか」という2種類の情報が含まれています。劇評を読むとき、作品を見ることができなかった人にとっては前者の、作品を見た人にとっては後者の情報の重要度が高くなる、ということも言えそうです。作品を見ることができなかった人にとって、劇評は「記録」「アーカイブ」としてある一方、すでに自分の目で作品を見た人は、劇評を読むことで自分とは異なる視点を得ることができる。「あの作品にはこんな面白いところがあったのか」と、新たな魅力に気づかされることもあるでしょう。
 
ここで、劇評は未来の上演/観客に対してどのような役割を果たし得るのかということを考えてみたいと思います。これから上演のはじまる作品とその観客に対し、過去に上演された作品の劇評はどのような機能を持つのでしょうか。これに対する答えもまた、「記録」と「視点」であると言えます。過去作品の「記録」は自分がこれから見る作品を選択する際の参考になり、劇評から得たさまざまな視点はこれから上演される作品の見方をも豊かにしてくれるでしょう。劇評はこれから上演される作品へと観客をつなぎ、あるいは招き入れる役割を持っているのです。
 
さて、ようやくこのブログの話に戻れます。このブログもまた、「記録」と「視点」を提供するための場としてあります。今回の『革命日記』に関して言えば、特に様々な「視点」を提供することに重きが置かれていると言うことができるかもしれません。このブログには批評家養成ギブスのメンバー以外にも、Blog Camp in F/T(http://blogcamp-festivaltokyo.com/)の参加者やライターの方など、様々な人が参加する予定です。それぞれがそれぞれの視点から、稽古や本番を見て何らかの言葉を発信していく。すでに掲載された小川さんの稽古場観察日記のように、稽古場や俳優の様子がまざまざと浮かぶような記事もあれば、抽象的な思考を展開するような記事もあるかもしれません(この記事もその傾向にありますね)。あるいはもっと、演劇や作品そのものと向き合うような記事も出てくることでしょう。それらの記事は全て『革命日記』への入り口です。劇評は上演が終わってから作品への様々な視点を提供してくれますが、このブログでは上演に先立って作品の様々な楽しみ方を提示していければと思います。楽しみ方は人それぞれですが、人の楽しみ方を知ることで、もしかしたらもっと作品を(さらには人生を!)楽しめるようになるかもしれません。
 
だいぶ長く語ってしまいました。この記事はこのあたりでおしまいにします。次回の自分の記事では、稽古場を見学して考えたことを、「平田オリザと松井周について(仮)」という題で書きたいと思っています。どうして青年団出身の松井さんからサンプルの近作のような作品(例えば『自慢の息子』や『女王の器』)が生まれてきたのかが不思議だったのですが、稽古場見学で見えてきたものがありました。さて、上手く書けるといいのですが。
 
山崎健太/批評家養成ギブス、演劇研究(早稲田大学文学研究科表象・メディア論コース)/劇評サイトワンダーランド、Blog Camp in F/Tなどで劇評を執筆/twitter: @yamakenta, http://yamakenta.hatenablog.com/
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