映画美学校アクターズ・コース ブログ

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映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。アクターズ・コース俳優養成講座2023、9/1(金)開講決定!

映画創作ゼミ/自分たちで作品を創る、不自由さから得られる何か

コロナ禍のもとで、映画作りは再考を迫られています。映画作りは少なくないキャスト・スタッフによる共同作業であり、狭い空間での密集は避けられないと考えられます。ではどうすればいいのか。
感染対策をした上で、これまでどおりの映画作りをなんとか維持しようとするのもひとつの道です。しかし一方で、映画の歴史を振り返ったときに、非常にマイノリティーではあるけれど、実は多様な映画の作り方があったことは事実です。その中にはたったひとりでキャスト・スタッフを担った映画もあれば、ダイアローグがあるにも関わらずカットバックでは無言の顔しかない映画や、映画であるにも関わらず全編がスチール写真で構成された映画もあります。それらは決して実験映画などではなく、劇映画なのです。あるいは、非常にオーソドックスな撮り方をされているにも関わらず、この状況の中で観ることで新しい映画の作り方のヒントを与えてくれる映画もあるかもしれません。
このゼミでは、そういった作品の一部と接することから出発して、基本的な機材の使い方、編集ソフトの使い方を学んだ上で、実際に映画を企画・制作してもらいます。ゼミで制作された映画は、発表会で上映をし、ゼミ生以外にも鑑賞してもらいます。(*高等科要綱から抜粋)

古澤健さん、竹内里紗さんが担当する実技ゼミ「映画創作ゼミ」。広報を担当している浅田も受講しています。
全6回からなる今回の講義。各回ごとの進行と、講義を受けた感想を綴っていこうと思います。(文:浅田麻衣 )  

第1回講義:1月6日(水)

第1回。本来は対面での講義の予定だったが、緊急事態宣言が明日にも発出されるということで、急遽オンラインでの講義に変更となった。
まず感染対策レクチャーが行われ、その後は講師による今回のゼミの説明。

f:id:eigabigakkou:20210218141910j:plain講義中のメモ 

映画の歴史はまだ浅く、「コロナ禍」である現在も、この短い歴史の中では「ありふれた例外」のうちの一つにすぎない。(サイレント→トーキーへと変化があった際も、それも歴史の中の「ありふれた例外」の一つであるといえるのかもしれない)。
感染対策をしなくてはいけない、という強制性も創作にとってはつきものの不自由さであり、この不自由さ、そしてこの不自由さから得られた技術は決して今後不必要になる技術ではない、という古澤さんの言葉が印象的だった。

自身、2020年の4月〜5月にかけて「今でしかできないことがあるのではないか」と思いZoomを使いつつ遠隔で映像を撮ってみたり、一人でMVを作ってみたりと色々やってはみたものの、直に対面で撮影できないということは自分にとってマイナス要素でしかなくて、ただ疲労してしまったというのが否めない。
でも、講義の中でいろいろな映画のシーン、こんなやり方もある、こんなことも面白いかも、と提案してもらって、単にあの疲労は、自分がこれまで「映画をなんとなく」見てきて、撮り方などの学びの蓄積がなかったからだったのではないか?と感じた。

映画は空間も、時間さえも超えることができる。アクターズ・コース受講生時代にも、一本集団創作したことはあるけれど、あの時から4年経って果たして今の自分が何を撮れるのか。本日グループ分けをして、その後は集団創作にさっそく移る。

第1回-第2回講義 幕間(第1回ミーティング)

私の所属はA班(班はA班とB班の2つ)。A班は期も全員バラバラのため、初めましての人もいる。まずは簡単な自己紹介から始まったオンラインミーティング。そこから自分が常日頃思っていること、好きな場所、どういう作品が好きか、などの話。
こういう時何が難しいって、抽象度が高いところから具体性を持たせる段階をどこに持たせるのか、ということ。

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第2回講義:1月13日(水)

この日もオンライン講義。機材の使い方や、実際に撮影をするときの注意点などについての講義だった。
今回の創作ゼミは、自分たちが持っている機材で撮影を行うというのも大きな特徴。(個人であまり持っていないであろう三脚、照明などは講師の方から借りることができる)。今回はiPhoneで撮影する人が多いので、デジタルズームやAE/AFロックなど、普段なんとなく使っているけれどそれを映画撮影ではどのように使ったら効果的なのか、眼から鱗の情報が沢山。
2人のバストショットを撮るにも、レンズや三脚の使用で動画から与えられる印象は異なってくる。フレームへの意識‥‥‥。この日の講義の最後に、テスト撮影を次回までに行うことが課題として提示される。

第2回講義-第3回講義 幕間(ミーティング×2、テスト撮影)

テスト撮影に向けて2回ミーティングを重ねる。やはり具体的なアイディアにするのは難しい‥‥が、一つのワードとして出てきたのは「食べる」ということ。食べている時の姿、咀嚼音、また食べているその環境などを撮ってみようという話になる。あとは各々持っている機材の確認。

講義が13:30からなので、午前に集合。肉まんを購入して映画美学校近くの公園で、まず食べる姿を撮影。その後は各々気になったものを撮影。
↓この絶妙な距離感‥‥(これがのちのち企画に生きてくるとはその時はついぞ思わなかった。面白いものです)

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第3回講義:1月27日(水)

前半は古澤さん、竹内さん、TAの釜口さんの3名による模擬撮影を見学。3人で出演・スタッフを全て兼ねる。撮影にかける時間配分などが体感として身についていないので、それを実感するための講義。

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竹内さんが書いた模擬撮影用の脚本では、3人ともが出演するシーンと2人が出演するシーンに分かれているので、1人が出演を終わったらぐるっとカメラに映らないように回ってカメラへ移動、パンをする1コマもあり。自分は絶対に録音を回すのを忘れるな、とか、照明も気にするようにしなきゃ、とかいざ自分がその撮影に参加した場合忘れそうなことを片っ端からメモ。
監督は古澤さんだったのだが、カメラ位置とかカットを割るところの判断だとか、どうしてあんなにスパスパ決められるんだろう‥‥。特に私はカット割りが絶望的に下手だろうなという予感があるので、とにかく目に焼き付ける。

第4回講義:2月3日(水)

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第4回目の講義では、それぞれの班が撮影してきたものをスクリーンで見ながら、お互いにその映像への感想や疑問を伝えあった。既にこの段階でA班とB班の進めているもの、撮ろうとしているものが全く違っていて面白い。B班は既に脚本を書いていて室内での撮影を進めており、A班はテスト撮影のちの、今後どうしようか、という段階。

ラッシュ(未編集、NGテイクなどもそのまま繋いでいる状態の映像)を見るたびに贅沢な時間だな、と思う。俳優として撮影に参加している時はできあがった作品だけしか見れないことが多いけれど、ラッシュだとNGテイクからのOKテイクからの変遷が見れて面白いし、このカットの監督とカメラの意図はどこにあるんだろう、と考えるのも楽しい。脚本を知らないので、まっさらな状態でお互いに感想を伝え合うと「そういう風に見えるんだ」と作品作りにもフィードバックができる。

そして、今回でもう第4回。来月には作品ができていないといけない。果たしてA班、大丈夫か。

第4回講義-第5回講義 幕間(2月3日〜2月14日撮影本番)

テスト撮影の反省から、抽象度が高い、曖昧なことを言っていたら(特に期日が決まった創作だと)作品に起こしていくことは我々の班にとっては難しそうなので、具体性を持ったアイディアを持ち寄ることにした。第4回目の講義後ミーティングを重ねた結果、「会話を介さず、ただ非生産的なことをしながら河川敷にいる女たちの集落の話」をすることに決定。
脚本は書かずに、起こしたいイベントや即興などを連ねていく作戦を考えた。10日ほどで準備、怒涛の追い上げ。そして撮影。

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助っ人の皆様、本当にありがとうございました(古澤さんにも全力疾走をお願いいたしました)
晴れてよかった。

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第5回講義:2月17日(水)

この日、スクリーンで見る用にラッシュを繋いだのだが、2時間30分になってしまった。まずはB班のラッシュを全員で見る。B班も河原でロケをしていたのだが、A班と同様に走りまくっていた。河原だと人は走ってしまうのか?
B班は室内での撮影も多いので、照明もこだわっていてとても面白い。

我々A班はとにかく素材を撮りまくった結果、「これは一体どうやって編集をすればいいんだ?まあひとまずラッシュ見てみっか」というラッシュになってしまったが、意外と2時間半集中して見れるもので。何故だろう‥‥。
古澤さんから、「ラッシュで得た感覚を忘れずに編集に生かして」ということで、色々助言をいただく。人間関係を明確にしていなかったけれど、即興を連ねることで少しずつ「こういう関係性なのかな?」と思えてきたり、また、カメラを通して見る俳優の姿が普段とは全然違っていて、自分たちで回していながらも面白いなとしみじみ。

さて、編集に入ります。ここから果たしてどんな作品になるのか。

 

2021/2/17 文責:浅田麻衣