映画美学校アクターズ・コース ブログ

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映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。アクターズ・コース俳優養成講座2021、9/1(水)開講決定!

アクターズ高等科・講師インタビュー/兵藤公美さん

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「アクターズ・コース俳優養成講座 2020年度高等科」は6名の講師がそれぞれゼミを担当しています。そのゼミの内容は、講師の皆様がそれぞれ企画しました。
今回は『俳優レッスン』『アクターズ・ラボ』『フィクション・コースを知る』を担当する兵藤公美さんにインタビューをいたしました。

俳優レッスン』
https://eigabigakkou-shuryo.hatenadiary.jp/entry/2021/02/12/144038
『フィクション・コースを知る』
https://eigabigakkou-shuryo.hatenadiary.jp/entry/2021/03/13/160223
『アクターズ・ラボ』
毎回多彩なゲスト講師を招いてその生き方や知見を解きほぐしながら共有していきます。ゲストには 俳優、演出家、監督だけではなくプロデューサーや翻訳家なども予定。演じることだけではない、俳優としての世界の見え方を広げていきます。

——今日の俳優レッスンはどうでした?(※このインタビューは俳優レッスンの講義後に行いました)

兵藤 よかったよね。面白いよね、本当。最近の俳優レッスンはさ、本当に「発表の場」になってるなって感じがして。レッスンっていうか本番みたいな雰囲気だよね、どのチームも。それがなんか、すごく変わってきてるっていうか。いい方向に進化してるのかなーっていうふうに思う。

——これまでは、わりとラフな感じだったんですか?

兵藤 うーん、そうだね。ある程度みんな練習してきて、見せるって感じだったんだけど。ここまで本番感、みたいな雰囲気ではなかったかな。別にその頃もゆるいってことはないけどね。やり方としては「1回目やってみましょう」、で、「フィードバックして、もう一回やろう」って感じで。そういうスタイルでやってたから、みんなもそのつもりもあったかもしれない。一回目はまあこんな感じでやって、私とフィードバックして2回目それを踏まえてやるっていう。稽古していくみたいなスタイルで定着してたから。なんか、ある時からこういう感じに。

——今日もすごい緊張感でしたよね。

兵藤 本番感がすごかった。そうなると、1回でもういいのかなー?って。もうやる必要ないよね、っていう。ここ最近そういう雰囲気あるなって思いますよ。特に高等科になってから。

——確かに、2年前自分がやった時は、「じゃあやってみるか、間違ってももう1回やってみよう」っていうラフさがあった気がして。今回の、終わった時にダメだった時の「ああっダメだった‥‥」みたいな感じはなんなんでしょうね。

兵藤 なんなんでしょうね。1回目からすごい緊張感があるというか。今までとなんか違うな、という感じがあるね。そういうふうに仕向けたわけじゃないんだけど。自然とそうなった感じなんだよね。

——新しいメンバー(アクターズ・コース第9期生)が入ったのもあるんですかね。

兵藤 確かに、それもあるかもね。楽しみなんだよね、私。俳優レッスン。講義の中でも。人の演技を見れるっていうね。しかも2回とか3回とか連続で担当するとその変化が見れるっていうのがすごく面白くて。講師的にはそういうふうにやった方がより楽しめるなって。

——そうですよね。今回のタームは特に連続して担当されてますよね。

兵藤 今回も変化を見れて、いやすごいなっていうことしかないんだけど。初回からみんなやってくるなーっていう感じで。「なんかもう言うことないんだけど‥‥やっとけば?」みたいな感じで。そういう雰囲気があるよね。もちろん見て、私も思いついて「ここ、こうしたらいいのかな?」とか「私だったらこうするかな」とか「台本にはこういうふうに書かれている気がする」とかいうのは思いついたりするんだけど、でもそれよりも、観客っぽい感じが自分でもしてて。それがね、すごく毎週楽しみ。
 みんな最初からセリフは入ってるし、余計なストレスがないというか。で、みんなも私に見せて、私に何か言われる前提っていうよりは、「人の目がある場」みたいな。ずっと2人で稽古してて、いざ「観客に見せる日」みたいな、そういう雰囲気があるなと思って。別に私に見られるとかっていうんじゃなくて、人の目がある日。そういう緊張感だったり、高揚感だったり、そういうのがあるなーと思って。だから私も、「なんか言わなきゃ」とかあまり思わないし、「もういいんじゃない?いいと思う」っていうことがほとんど、っていう(笑)。困ってることがあれば言ってもらえれば言えるけど、みたいな。なんかそういうふうに私もすごい変わってきた感じはあるかもしれない。
 どう思ったかコメントをしなきゃな、っていうふうに前は思ってたけど。でも今はみんなの方で「ここ実は困るんですよね」っていうことがあれば、「あっそうだったんだ」みたいな。「じゃあこうなのかな」って。やっぱ俳優がアクターズ・コースのレベルみたいな人たちだと、違和感って見えてこないっていうかね。こっちが分からないところで、「実はここやりづらい」って思いながらやってたっていう、そういうレベルの人たちかなって気がするから。「逆に言って!」みたいな。そしたら言える」みたいな。演技は自分のものだっていうことをすごく理解しているメンバーだなっていうところは共有できてて、そこも見ててすごく楽しいし、そういうスタンスでやってる、そういうスタンスで演技を学ぼうとしている姿勢にいつも私は打たれますね。

——今の情勢で、舞台を踏めることもどうしても減ってしまったから、楽しいっていう思いがもしかしたら先立ってあるのかもしれませんね。演劇を発表することが今はどうしてもリスクがあるから自分で企画を立てるにもしんどいし、でも高等科っていう場だと、もちろん気をつけなくちゃいけないことはたくさんあるけれど、公然と「演技ができる」場があるわけだから。

兵藤 確かに。なるほどね。だから発表感が強くなったっていうのもあるのかもね。すごい特別な時間な気がするものね。マスクはしてるけど、みんなと会えてできるっていうことが貴重な気がしてるもんね。

f:id:eigabigakkou:20210317181641p:plainある日の俳優レッスン

——初回の山内さんの講義はZoomで。その前に稽古は対面でしてたんですけど。やっぱり、みんなの演技を直接見たいなっていう思いがあって。2回目の兵藤さんの講義で対面で会えた!っていうのはすごく嬉しかったですね。

兵藤 作る喜びをね、味わってますよね。いや今日のみんなの演技もよかったな、本当に。面白かった。もったいないよね、私だけ見てて。こういうのを本当に見せたいなーっていう。すごいレベル高いことやってるなって思う。まあ私は何もしてないんですけど。みんなの意識が年々、っていうかコロナが結構関係してるのかな。みんなもそれぞれ(アクターズ・コースを)修了して年数は様々だったりするけど。演じる喜びっていうか、演技が自分に必要っていうか、そういう意識。「分からないけど習おう」っていうことじゃなくて、「自分には表現したいことがある」みたいな感じが今回はすごいしてますね。まあ大体いつもしてるんだけど、アクターズ・コースは。
 修了直後の人たちと、修了して数年経ってて、俳優として成長したり成熟したりしてきた人たちが、俳優レッスンに来て、どんどん自分で自分を磨いてるって感じがして。でも遠い期の人と出会って組んでっていうことを、平然とみんなやってるっていうのとかで、アクターズ・コースの力強さっていうかね。そして人との繋がりっていうのが広がるっていう。それもすごいね、羨ましいぐらいに思います。

——距離感いいですよね。アクターズ・コースの。対等に表現者としていようぜ、みたいなことが暗黙の了解としてあるから、やりやすいなと思います。

兵藤 そこがみんな本当に社会性があるというかね。まあ、俳優レッスンする人はそれが必要っていうのはありますけど。演技の指導もそれぞれ、3人(山内・近藤・兵藤)ですごい違うんだろうなと思いながら私はやってて。私は結構、その人に合わせて演技の向き合い方の言葉を言うんだけど、時にははっきり提案していってみるというか。「演出」みたいな、本当に「演技指導」みたいな。解釈だったりとかさ、それを一緒に考えて、「こういう演技してみない?」みたいな感じで。でもそれってすごい具体的なことじゃん。そういうことは私、昔は俳優レッスンではやっちゃいけないとか思ってて。なんか、答えを言うみたいな感じあるでしょ?そういうのってよくないんだ、とか思ってたんだけど。
 なんかある時から、でも人によってはそれでイメージが広がる人もいるし、私が言ったから、私に言われた通りにやるっていうことでもないし。人が言ったこと、他者が言ったことに近づく行為でもあるんじゃないかな?とふと思って。なんかその方が私やりやすいしって思って。遠回しに抽象的なことを言って、「こうじゃないかな?」みたいなふうに言いたくなる時もあるんだけど。本当人によるんだよね。俳優それぞれに対して。今は、具体的に「こういう演技やってみようよ」って言う方が、私も楽しいし、二人もよくなる、みたいな気がしてて。ここ数年そういうスタイルに私も変えたりとかしてる。
 昔はちょっと、「演技指導はなしだよね」みたいな感じはあったんだけど。私は、自分が楽しいっていうのも大事だし、レッスンしながら二人が楽しくなっていくことも大事だし、と思って。だったら単刀直入にそこを突破する、そこを突破して一気に楽しい方にいって、「こういうことか」って気づくことって、それは何も悪くないんじゃないかな、答えみたいな感じはしちゃうけど、そこからまた二人にしかできないことを作れるわけだし、と思って。そういうのとかね、最近私のスタイルみたいなものが自分でも見えてきた気がしていて。人によってどういうふうに言葉をかけようかなとか、だんだん私なりのスタイルが見えてきた感じがしていて、そこも楽しい。やってて。

——例えば、兵藤さんに言われて「こうでなきゃいけない」っていう人はいないですからね。

兵藤 そうだね。そこもコミュニケーションっていうか。私が言ったことってすごく強かったりもするしっていうことだけど。でもそれは「俳優の権利と危機管理」の講義からしても、俳優って演出家に言われたことを叶えるものじゃないよー、とか、俳優は俳優として自立してるものなんだよ、っていうことも言ってるし。意識の持ち方一つで、受け止める側も違うよなと思って。「言われたからやらなきゃ」っていうふうにも考えられなくも全然ないのに、やっぱりその知識があることで、「まあ別に兵藤さんが絶対じゃない」ってみんな分かってる、だからこそできるっていうこともあるけど。それもすごく風通しがいいよなーと思って。やっぱりそこは、長年の積み重ねが実を結んでる感じはして。修了生たちはわりとみんなそういう意識持ってるしっていうので付き合えるな、っていうのがすごい楽しいですね、私は。

——確かに、受講生時代は「講師」と「生徒」っていう概念が強かったかもしれないですね。で、混乱するというか。「山内さんはこう言ってたけど、でも兵藤さんはこう言ってたしな‥‥。でも次の講義は山内さんだから、山内さんが言ってたことを叶えたらいいのか?」とか、でもそういうことじゃなかったって今になって気づくんですけど。言葉をちゃんと分けることができなかったし、誰のための演技かっていうのも分かってなかった気がします。

兵藤 なるほどー。

——アクターズ・コースを修了して3、4年経って、対等で同じ表現者としてやってるんだっていうことをようやく感じ出した気がします。

兵藤 わー、なんかすごい嬉しいね、それ。今充実の時なのかも。

——高等科は、本当に、みんな、よい。

兵藤 そうだねー。やっぱ、もう一回やりたいっていう人が集まってるっていうのもあるかもしれない。

f:id:eigabigakkou:20210317182704p:plainある日のアクターズ・ラボ 

——アクターズ・ラボでも、色々な方々に会えて本当によかったです、今回。

兵藤 そうだね、また新しい意識の広がりがあったよね。

——贅沢な時間でしたね。竹中(香子)さんのワークショップもすごい面白かったです。

兵藤 面白かったね。あれはね、本当に目から鱗でしたね。「プレゼンさせる」っていうね。
 「私たちはこういう設定にして、こういう解釈でやります」って言って、それだけ話し合わせて練習はせずに、本番はぶっつけっていう。でもそれだけをとにかくすり合わせておけばなんとかなるんだね、っていうことが証明された時間だったなと思って。
 普通ね、創作の発表会だったら「とにかくまずやってみて」みたいな。「とにかくエチュードして、練習して作ろう」ってなるところを。「これってこういう解釈っていうことだから、この設定でやろう」で、「はい、じゃあ時間です」って。でもそれがね、OSでもあるよね。俳優脳の。それがあれば、あなたがどういう演技をしようと、その設定だよねっていうところを信じられる。それはなんかね、眼から鱗だった。「そっか練習しなくていいんだ、できるんだ」って。でも想像力というのはそれぞれじゃない?それぞれがどういうふうにそれを考えて、どう表現するのかっていうのは個人個人じゃないですか。でも、みんなその設定は話したから大丈夫っていう謎の信頼感が見えて。尊重もするし、今やってることを。すごい時間でしたね。あれは面白かった、3チームとも違ってね。

——私がいたチームも最後かなり焦ってて。話す時間が本当に短くて、あっ他の2チームは決まってる、やべやべやべってなって。最後の10秒くらいでばーっと決めたんですけど、あっやれるんだって思って。

兵藤 ねー。本当に面白かった。

——「俳優こそ作品を分かってる」って竹中さんおっしゃってたじゃないですか。俳優が想像力も言葉も持ってるのに、それを言わないのは不健全だっていう話をされていて、「ああっ!」ってなって。すごい素敵な言葉だと思って。

兵藤 本当に発見が多かったね。改めて、更新された。気づかされたね。

——関係性ってアップデートされるんだなって。昔は本当に「演出家が神!」みたいに勝手に思ってて。「俳優も同じ立場だよ」って言われても「絵空事じゃん」って思ってたんですけど。それができる環境も作れるし、作ろうとしてる人がいるんだっていうことを気付かされた時間でしたね。

兵藤 すごいね、希望があって。未来が明るかった。活動してる人たちが「どうしてこうなった?」っていう話を聞くのもすごい面白いよね。私も知らないことが多くてびっくりで。

——アクターズ・ラボは第9期からできたんでしたっけ?

兵藤 そうだね。最初にやったのは、そう。

——ゲストを呼んでたんですか?

兵藤 それぞれ講師が持ち回りで、自分の友人アーティストをみんなに紹介する、みたいな。みんなと出会ってもらう、みたいなテーマでやってたかな。今後もやりたいよ、あれは。

——人の辿ってきた歴史って、ただそれを聞くだけで楽しいんだーって思いました。

兵藤 みんなもね、聞いて考えてる感じもよくて。感想とかさ、あの時間も私好きだったんだよね。「そんなふうに聞いてたんだ」とか「そんなふうに考えてたんだ」とか思って。みんななんか、とっても柔らかく聞いてくれてるんだなーと思って。

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兵藤 まいまい(※浅田です)も、高等科いかがでしたか?終わりに近づいてますが。

——色々な講義を受けてきたんですけど。「演技論演技術」である程度筋立てたって歴史だとかを学んで、役者と演出家の関係性、それが深田さんのゼミの例えば韓国のハラスメント対策に結び付いたりだとか、そしてそれが、アクターズ・ラボの俳優のあり方、演出家との向き合い方だとかに結び付いたりして、そのあたりがリンクしていくのが面白かったです。俳優としての在り方を考える機会をすごくもらって、高等科で。そういうのって当事者に聞かないと分からないし、考えることもサボってしまうし。毎年危機管理の講義はやっているのでアップデートはされてるんですけど、本当に「今」この瞬間を生きてる人たちに聞けるっていうのは本当にありがたい機会だと思いましたね。結局演技のことはまだよく分からないけど、それでいいかと思えるようになったのは良かったなと思ってます。

兵藤 私も分かんないもん、実のところ。

——でも特に、大学の講義とかだと聞かれたりしません?「私の演技どうでしょう」とか「どうなったらうまくなるんでしょう」とか。

兵藤 それは聞かれますね。

——どう答えるんですか?

兵藤 そこでその人が何に、何を問題としているかっていうことを私は探りますね。演技はこうだっていう話をしてもあんまり意味はないっていうか。でもそれが実は、演技のテクニックの問題じゃなくて、別のところにある自分の、例えば恐れを何か持ってるだとか、メンタルコントロールのことだったりだとかだったりするから。一概にテクニックのことで話すっていうことよりは、まずその人を知って話す、コメントするってことが多いかな。一緒に考えたい。

——オーディションで受かる術、とかも答えようがないですよね。

兵藤 でもそれねー、大学生には聞かれるね。そういう時は抽象的になっちゃうかも。勝つためのテクニックは確かにあるかもしれなくて。どういう呼吸になってるか、とか、どういう間を使うのかとかはあると思うし。でもどうせ人柄見てるしなーとか、見た目見られてるしなー、とかあるからなんとも言えないしね。「テクニック的なことはもちろんあるけど、でも競争社会だけじゃないかな、表現って。っていうことも知っとく方がいいんじゃない?」みたいなそういう抽象的な返しとかですかね。でもそれは色んな先生がいるから、はっきり「オーディションに受かるためのハウトゥー」を語ってくれる先生もいるからね。その人に聞いてみてもいいんじゃない?って思ったりもして。

——事務所に入る云々の話もありますよね。

兵藤 そうだね。その時々で俳優もやりたいこと変わるし、みんなもそうあっていいんじゃないかなーって私は思うし。それで事務所入って何かやるっていうこともありだし、入れないから別のことやって発見があるっていうことも往々にあるしね。実際私がね、そんな感じだったかも。コンテンポラリーダンサーになりたい?みたいな。「公美ちゃん、パフォーマンス系しかここ数年してないね」みたいなさ。そういう時代ありましたけど。やりたかったんでしょうね、ダンス。どうしてもやりたかったんでしょうけど。

——その時の感情に任せれば。

兵藤 そうですそうです。

 

兵藤公美(Hyodo Kumi)

1973年生まれ、横浜市出身、桐朋学園大学演劇専攻科卒。
1996年、青年団に入団(現在も在籍中)。《舞台》青年団東京ノート」、パスカル・ランベール「愛のおわり」、Q「バッコスの信女 - ホルスタインの雌」など。《映画》市川準あおげば尊し」、深田晃司「歓待」、篠崎誠「SHARING」、前田司郎「ふきげんな過去」、沖田修一子供はわかってあげない」など。青年団を中心に、外部出演や映画作品にも多数出演。

 

2021/2/21 インタビュー・構成/浅田麻衣