映画美学校アクターズ・コース ブログ

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映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。アクターズ・コース俳優養成講座2023、9/1(金)開講決定!

『Movie Sick』稽古見学日記(第4回)/井川耕一郎さんより

こんにちは!ムビシク応援隊のSです!
今日は本番初日です!!ということで本番前の最終投稿!!!
今回は映画美学校アクターズ・コース「映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座」主任講師である井川耕一郎による稽古見学日記(第4回)をお送りします!

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フィクション・コースの講師として長年映画美学校に携わって来た井川さん(写真中央)。
その井川さんが今期からアクターズ・コースの主任講師として、新鮮な目でアクターズのみんなを見守っていた記録——
それではどうぞ!

 
『Movie Sick』稽古見学日記(第4回)

2月10日。
修了公演の稽古は、2月15日(水)までは週4日、月曜・火曜・水曜・金曜に行うことになっている(2月17日(金)からは毎日)。
2月10日(金)は稽古6日目。この日も13時に開始。

 

佐々木透さんがアクターズ・コース生に言う。「明日、明後日は休みだけれど、今日は休みの間に何をすべきかを見つけて下さい。それから、Scene1でむー(鈴木睦海さん)が「騒いで」と言ったあと、(睦海さん、仁田直人くん以外の9人は)爆笑して下さい」
13:10から、Scene1~Scene12までを通しで。
どのSceneも四日前に見たものから変化していた。
大きく変わったのは米川幸リオンくんの長い独白があるScene5だ。イスに座って独白をじっと聞いているだけだった睦海さんの芝居が、リオンくんの言葉に触発され、体が動き出すというふうになっている。
Scene7の塗塀一海くんと金岡秀樹くんの漫才のようなやりとりの部分も、二人の背後で別の芝居が進行するというふうになっていた。
また、イスや16mmカメラをとりつけた三脚が登場しない不在の重要人物を連想させるような瞬間がいくつかあった。
それにしても、今日も四柳智惟くんの声が大きい。お笑い芸人をやっていたときもこんなふうに全力だったのだろうか。喉がつぶれないかと心配になる。
14:25に通し稽古終了。
佐々木さんがみんなを集めて言う。「今のを見て、どんなふうに映像や音を入れるか、6割くらい目途がつきました。みんな、よく集中していたと思います。まだ見せるレベルにはなってないけれど」
Scene1について。「むー(睦海さん)、気負いがある。直人はどうしていいかと頭の中がパ二クっているのが分かる。とにかく練習。反復あるのみ」
Scene2、Scene3。「あれくらいのテンションでやって下さい」。それから、Scene3の浅田麻衣さんの歩く速さについて具体的な指示。
Scene4。睦海さんは不在の重要人物の命令で被害者たちに事件の再現をするように求める役だ。「むーは(10人がいる)前を向いてばかりで、背中に意識がない。むーの背後には誰かいる」
Scene5。「リオン、よかった。気をぬかず、このままクリエーション」
Scene6。「直人、ここでもパ二クってる。何かやろうとして空回りしている。(相手役の大西美香さんとの)リズムがうまくいってない」
Scene7の鈴木幸重くんの専門知識をしゃべりまくる部分について。「カズ(幸重くん)の説明は見せ場。(説明の中に出てくる)馬力って言葉は重要かな。ここで笑いを起こしてほしい」
Scene7の塗塀くん・金岡くんのやりとりについて。「べし(塗塀くん)、だんだん力んできている。最後までリラックス。べしとヒデ(金岡くん)も反復して練習。ひたすら反復」
Scene8。「エイスケ(太田エイスケくん)はダ行が聞こえてくるようになった。それから、今の二倍、三倍の自信がないと、体が動いてしまうから気をつけて」「との(外崎桃子さん)はいいときとよくないときの落差がある。いいときは純粋に相手に反応しているとき。まずは相手をよく見て。場とか人に敏感になって」
Scene9。「直人、何だっけ?となっている。パ二クってる」
Scene10で、外に連れ出そうとする塗塀くん、金岡くんに外崎さんが抵抗するところ。「ふりはらう・ふりはらわれるをどうしたらいいか探って。との、ふりはらうはきちんと全力で」。太田くんの芝居については「ムービング・エイちゃんになっている」
Scene12までダメ出ししたあと、佐々木さんは言った。「まずは芝居だけで見せることを目指します。芝居に強度があって、はじめてその他の演出効果がいきる」
それから15時から1時間、自主練習となった。
その間に、芝居で使う映像に関する打ち合わせ。佐々木さんがどのような映像を必要としているのかをTAで演出助手のしらみず圭くんと聞く。

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16時から稽古再開。
途中で用事があって二、三度、地下スタジオを出たので、稽古を続けて見ていないのだけれど、17時までの間にScene7の終わりからScene8が何度もくりかえされたようだった。
Scene8後半の浅田さん、太田くんがいるところに外崎さんが入ってきて三人芝居になる部分。
佐々木さんは外崎さんに「(浅田さん・太田くんに向かって)しゃべることに対する抵抗感がない」と言った。というのも、外崎さんの役は二人と通常はあまり関係がないからだ。
外崎さんの「ちょっとお腹空いちゃって」を受けて浅田さんが「私も」と言うところでは、「浅田さんの「私も」に対する反応が必要。今のだと、何、この人?という違和感がない」と佐々木さん。
「との(外崎さん)、セリフを言うのが早い。勇気をもって間をとろう」
「との、だんだんよくなっているけれど、(太田くんと話すとき、)浅田さんを無視している」
また、太田くんに対して佐々木さんは「(外崎さんが浅田さんと話しだすあたりでは、)二人の空気にひっぱられないように。空気の読めない人になってほしい」
太田くんは迷いながら演じているようだった。
しかし、フィクション・コースとの合同実習「ミニコラボ」で、太田くんは切実なのにどこかユーモラスな味わい深い芝居をしているのだ(ちなみに監督したのは万田邦敏さん)。何とか迷いを吹っ切ってほしいのだが。
17時からはScene9。大西さん、仁田くん、幸重くん、リオンくんの四人の芝居がくりかえされた。
「直人、芝居を作っているのは分かるけど、他のひととの一体感がない。直人の「ごめん」というセリフで芝居が切れてしまう」と佐々木さん。
仁田くんは「もう一回、よろしくお願いします」と言って再度挑戦した。彼は決してへこたれない。関西ジャニーズJrのときの練習はもっと厳しいものだったのだろうか。
17:45、稽古終了。

2月18日。
この日は、照明の山岡茉友子さんたちスタッフの他に、佐々木さんがこれから一緒に仕事をする人たちなど、さまざまな人がいる中で通し稽古。
「今日は見学者がたくさんいます。せいぜい緊張して下さい。でも、楽しんでやりましょう」と佐々木さん。指をパチンと鳴らして芝居が始まる。
10日の打ち合わせのあと、ぼくは舞台で使う映像に関することを手伝っていて、稽古をほとんど見ていなかった。
なので、ああ、ここはさらに芝居が変わっていったんだなだとか、太田くんは自信がついてきたのかな、この調子でがんばってほしいだとか、あれこれ思いながら芝居を見ていた。
通し稽古のあと、アクターズ・コース生たちはいくつかのグループに分かれてSceneごとにどうすべきかを話し合っていた。
その話し合いを聞こうとそばに寄ってみると、金岡くんと塗塀くんに話しかけられた。「(Scene7の)ぼくたちの芝居、どうでしたか?」
「面白いと思ったよ。でも、客観的な判断はちょっとできないな」
「……?」
「何だかぼくも緊張してね。父兄みたいな気持ちで見ていたんだよ」
それから、外崎さんに声をかけた。
「Scene10の外崎さんの芝居、前見たやつから変わっていたね」
「最初にお祈りがあった方がいいかなって。それでどんなお祈りがいいかなって調べてみたんです。どうでしたか?」
「うん、いいと思うよ」
仁田くんにも声をかけた。
「Scene1で睦海さんが「騒いで」と言ったあと、前はみんなで騒ぐってなっていたけれど、今日のはちがっていたね」
「最初、みんなで騒ぐってなったとき、ああ、自分に力がないから、そうなったんやなって思ったんです」
「今日はちがったね。仁田くん一人で騒いでいた」
「でも、まだまだです。クリエーション、もっとクリエーションしないと」
仁田くんは、佐々木さんがよく使う「クリエーション」という言葉を二度口にした。
佐々木さんの言う「クリエーション」とは、演出家の創造力を触発するような芝居を役者自身が作り出すことと言ったらいいだろうか。
どうやら仁田くんは佐々木さんが求めているものをつかみかけているようだった。

このあと、稽古は映像を映写しながらになっていくとのこと。
18日の通し稽古の段階でかなり完成したものになっているけれども、芝居はまたさらに大きく変化していくのだろう。
アクターズ・コース生がどこまで「クリエーション」するのか、そして、その「クリエーション」を受けとめて、佐々木さんがどう演出していくのか。
本番が楽しみである。

(終わり)


井川耕一郎
1962年生まれ。93年からVシネマの脚本を書きはじめる。主な脚本作品に、鎮西尚一監督『女課長の生下着 あなたを絞りたい』(94)、常本琢招監督『黒い下着の女教師』(96)、大工原正樹監督『のぞき屋稼業 恥辱の盗撮』(96)、山岡隆資監督『痴漢白書10』(98)、渡辺護監督『片目だけの恋』(04)『喪服の未亡人 ほしいの…』(08)やテレビシリーズ「ダムド・ファイル」など。最新作は監督も務めた『色道四十八手 たからぶね』(14)。本年度より映画美学校アクターズ・コース主任講師。


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2017年3月2日[木] - 3月5日[日]
アクターズ・コース2016年度公演
『Movie Sick ムービーシック』

作・演出:佐々木透(リクウズルーム)
リクウズルーム代表。ク・ナウカシアターカンパニーで演出家・宮城聰のもと俳優として活動。退団後、執筆活動に取り組む。「日本の劇」戯曲賞2013最優秀賞受賞、第5回泉鏡花記念金沢戯曲大賞受賞。 文学への深い知識、鋭い感性と美意識を持ち、”戯曲構造”と”物語の可能性”を探る事をテーマに創作活動を行う。

出演:浅田麻衣、太田英介、大西美香、金岡秀樹、
   鈴木睦海、鈴木幸重、外崎桃子、仁田直人、
   塗塀一海、四柳智惟、米川幸リオン
  〔アクターズ・コース映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座〕
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公演日程
2017年3月
2日(木)19:30〜★
3日(金)19:30〜★
4日(土)14:00〜/19:00〜
5日(日)14:00〜/18:00〜
★=終演後アフタートーク開催〔30分程度を予定〕

※未就学児童の入場はご遠慮ください。 
※受付開始・当日券販売は開演の40分前、開場は開演の20分前 
※演出の都合上、開演後はご入場をお待ちいただく場合がございます。

会場:アトリエ春風舎
〒173−0036 東京都板橋区向原2−22−17 すぺいすしょう向原B1


チケット料金(日時指定・全席自由、予約・当日とも)
一般:2,300円
学生:1,800円※公演当日、受付にて要学生証提示

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