映画美学校アクターズ・コース ブログ

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映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。アクターズ・コース俳優養成講座2023、9/1(金)開講決定!

『Movie Sick』稽古見学日記(第2回)/井川耕一郎さんより

こんにちは!ムビシク応援隊のSです!
今回は映画美学校アクターズ・コース「映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座」主任講師である井川耕一郎による稽古見学日記(第2回)をお送りします!

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フィクション・コースの講師として長年映画美学校に携わって来た井川さん(写真中央)。

その井川さんが今期からアクターズ・コースの主任講師として、新鮮な目でアクターズのみんなを見守っていた記録——
それではどうぞ!

『Movie Sick』稽古見学日記(第2回)

2月1日。
稽古初日。13時スタート。
Scene1は、鈴木睦海さんが仁田直人くんにムービーカメラの前で事件のことを語るように求めるが、仁田くんが抵抗するという芝居。
1回目では、睦海さんと仁田くんが自分たちでどうしたらいいかを探りながら演じた。
それを見て佐々木透さんが言う。「演出家によって考えはちがうと思うんですが、ぼくはリアルふうなものはリアルじゃないなと思ってます。そのひとの切実さが出るのがリアル。ニュアンスじゃなくて、相手に届けるように演じて下さい。相手役のために、相手を助けるように」
また、アクターズ・コース生全員に向けて次のようにも言った。「みんなでクリエーションしましょう。いっぱい迷って、いっぱい悩む。とにかく元気にやって下さい」
2回目をやる前に佐々木さんは四柳智惟くんに、舞台にあがって睦海さんと仁田くんの二人を見るように、と指示。四柳くんは腕組みをして二人を監視するようににらみつけた。
睦海さんが仁田くんにいきなり「騒いで」と無茶な要求をするあたりで、佐々木さんは四柳くんに「騒いで」と指示を出した。四柳くんが何事かわめく。びっくりするほど声が大きいので、何を言っているのか分からない。普段はもの静かなやつなのに。
2回目のあと、佐々木さんが言う。「今の段階ではよっつん(四柳くん)が必要。よっつんは途中でしゃべってもいいです。むー(睦海さん)はもっと言葉を大切に。自分の生理だけでものを言うのは日常。相手との呼吸を大切に」
このあと、Scene1が2回くりかえされる中、睦海さんの「騒いで」という要求に応えるのは仁田くんではなく、他の9人全員ということになった(客席から見えないところで騒ぐ)。
4回目のあと、佐々木さんが仁田くんに言う。「直人はずっとふらふら動いているけれど、動いている理由が分からない。止まるのを若いひとは恐がるんだけど、動く・止まるをきちんとしてほしい。何もできないから突っ立ってますという方が、ふらふら動くより潔い」


Scene1をもう一度やったあと、Scene2に移る。
Scene2では、事件当時の混乱がフラッシュバックのように舞台上に出現する。
佐々木さんは「ひとの波が来た。直人は波に飲みこまれる。むーはカメラの前でそれを見つめている」というふうにねらいをアクターズ・コース生に説明する。11人全員の気持ちが一つにならないとうまくいかない部分だろう。
2回演じていくうち、混乱の中、誰がムービーカメラとイスを持ち運ぶかが決められる。
「セリフだけやってみる?」と佐々木さん。
セリフだけを2回読んでみる。「もっとよどみなく。間がない方がいい」「疾走感がちょっと出てきた」
このあと、佐々木さんは「ワークショップふうになってしまうんだけど」と前置きしてから、まずは5人のアクターズ・コース生に、横一列になって足をそろえて舞台を往復するように、と言った。
「カズ(鈴木幸重くん)、途中から列に入れる?」「カズが入ったら、リオン(米川幸リオンくん)、列からぬけて」
同じことを残りのアクターズ・コース生も行ったあと、全員で舞台を往復することになった。
「今度はセリフを言いながらやってみよう。自分のセリフを言い終えたひとは列からぬける。でも、往復の波は消さないように注意して」
列から一人ぬけ、二人ぬけ……、最後に浅田麻衣さんと睦海さんだけが舞台に残った。立ち止まって、Scene3の浅田さんと睦海さんのやりとりが続けられる。
二人の芝居が終わったところで、休憩となる。14:30。

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14:45に稽古再開。
三脚の上のカメラがビデオカメラから16mmカメラに変更される。
Scene1からおさらい。
「Scene2が難しい。ここをがんばれば、このあとは転がる」と佐々木さん。
全員でScene2のセリフだけを二回読んでみる。
「もう一回やろう。みんなのチームワークを信じています」
動きながらScene2を再度やってみる。11人全員の芝居からScene3の睦海さんと浅田さんの二人芝居になる。浅田さんは舞台上にある物や空間の広さを有効活用して演じようとしている。佐々木さんが浅田さんに言う。「イスの使い方が面白いね」
その後、Scene2がくりかえされる。11人を役に従ってグループ分けし、セリフだけを3回。動きながら3回。演じているうちに、混乱している感じから様式化された動きへと変化していった。
今さっき「様式化」と書いたけれども、これをネタバレにならないように説明するのは難しい。佐々木さんとしては、声は混乱を演じているのだけれども、身体の動きは別の何かを連想させるというふうにしたいのだろう。
動きが見えたところで、Scene2からScene3までやってみる。
次にScene4をやってみる。舞台に登場しない重要人物から事件の再現を記録するように命じられた睦海さんが、被害者10人を何とか説得しようとするシーン。佐々木さんは被害者の間でさまざまな意見が飛び交う部分を書き足したいとのこと。


それから、稽古はScene2に戻った。6回くりかえされ、そのたびに一人一人に具体的な指示が出る。
7回目はScene2の続きでScene3も演じられた。
Scene3だけを3回。1回目のあと、佐々木さんは台本には書かれていない指示を睦海さん、浅田さん以外の9人に出した。
Scene4を1回やってみたあと、10分休憩。
休憩のあとは、Scene1からScene4までをおさらい。
佐々木さんはScene2の混乱からScene3の静寂へとメリハリをつけたいようで、浅田さんに次のように言った。「Scene3の出だしは、長い間のあと、セリフをぽつんぽつんと」
また、Scene4では鈴木幸重くんと四柳智惟くんのやりとりの面白さを見せたいとも言った。
この日は、米川幸リオンくんの長い独白があるScene5をためしにやったところで稽古終了(17:30)。


(第3回に続く)


井川耕一郎
1962年生まれ。93年からVシネマの脚本を書きはじめる。主な脚本作品に、鎮西尚一監督『女課長の生下着 あなたを絞りたい』(94)、常本琢招監督『黒い下着の女教師』(96)、大工原正樹監督『のぞき屋稼業 恥辱の盗撮』(96)、山岡隆資監督『痴漢白書10』(98)、渡辺護監督『片目だけの恋』(04)『喪服の未亡人 ほしいの…』(08)やテレビシリーズ「ダムド・ファイル」など。最新作は監督も務めた『色道四十八手 たからぶね』(14)。本年度より映画美学校アクターズ・コース主任講師。


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2017年3月2日[木] - 3月5日[日]
アクターズ・コース2016年度公演
『Movie Sick ムービーシック』

作・演出:佐々木透(リクウズルーム)
リクウズルーム代表。ク・ナウカシアターカンパニーで演出家・宮城聰のもと俳優として活動。退団後、執筆活動に取り組む。「日本の劇」戯曲賞2013最優秀賞受賞、第5回泉鏡花記念金沢戯曲大賞受賞。 文学への深い知識、鋭い感性と美意識を持ち、”戯曲構造”と”物語の可能性”を探る事をテーマに創作活動を行う。

出演:浅田麻衣、太田英介、大西美香、金岡秀樹、
   鈴木睦海、鈴木幸重、外崎桃子、仁田直人、
   塗塀一海、四柳智惟、米川幸リオン
  〔アクターズ・コース映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座〕
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公演日程
2017年3月
2日(木)19:30〜★
3日(金)19:30〜★
4日(土)14:00〜/19:00〜
5日(日)14:00〜/18:00〜
★=終演後アフタートーク開催〔30分程度を予定〕

※未就学児童の入場はご遠慮ください。 
※受付開始・当日券販売は開演の40分前、開場は開演の20分前 
※演出の都合上、開演後はご入場をお待ちいただく場合がございます。

会場:アトリエ春風舎
〒173−0036 東京都板橋区向原2−22−17 すぺいすしょう向原B1


チケット料金(日時指定・全席自由、予約・当日とも)
一般:2,300円
学生:1,800円※公演当日、受付にて要学生証提示

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