映画美学校アクターズ・コース ブログ

映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。「映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座2018」9/3(月)開講!

月刊 兵藤公美 with 四方智子 5・6月号(最終回/全3回)

「ラジオのようなブログ記事」──それが『月刊 兵藤公美 with 四方智子』。

俳優・兵藤公美(映画美学校アクターズ・コース講師)が、映画美学校事務局の四方智子と共にお話する企画です。

第3回の5・6月号は、つい先日突然の閉店で衝撃を与えた、映画美学校の渋谷移転以来「受講生・修了生・講師ご用達の店」として愛された「興和軒 渋谷店」にて収録しました。

テーマは「仕事外の時間の過ごし方」から始めたのですが、いつの間にか「男女差別について」「ハラスメントについて」などにまで話は広がっていきました(収録日:4/22)。

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兵藤 やっぱり…………葛藤ってさ、ドラマだよね。ウーロン茶くださーい!

 

──いきなりなんですか(笑)。

 

四方 今日そういう話を、シンちゃんが来る前にしてたんですよ。

 

兵藤 女の人っていうのは葛藤があるからドラマがあって…

 

──男には葛藤がない?

 

兵藤 それは何て言うか、社会的にっていうのかな。女の人がよく主役みたいな物語がたくさんあるじゃない? 男の人よりかはどっちかというと。

 

四方 演劇はね。

 

──演劇ってそうなんですか?

 

兵藤 演劇そういうのわりとある、あと、若い人たちが若いっていうだけで群像劇とかになるわけじゃん。それは葛藤があるからだよねっていう。

 

──映像の脚本を書いている経験から言うと、時代設定が現代で葛藤を作るのって、設定が過去とか未来に比べて難しいんですよ。

 

兵藤 そうだよね。

 

──例えば江戸時代だったら、もう明確に身分制度があるから、普通に生きている人を描いても葛藤になるんですよ、社会システム上。それは男女を問わず、です。で、現代は一応、建前上は誰しもが平等で開かれているということになっているので、例えば隠蔽を暴きたいのに組織内で止められているとか、何かしらの「縛り」を作者側が発明しなければいけないんです。一方で、現実的には女性の方が未だに色々な縛りやしがらみが多いから、現代劇だと特に女性の物語の方が作劇しやすいんですよね。

 

兵藤 そうそう。

 

四方 今日Qを観てて、私の後ろに座っていた男の人が、よく分からないタイミングで変な笑い方をずっとしてたの。「アハハっ、へヘっ」みたいな。で、私は今日大石さんと一緒に観てたんですけど、終わった後に「あの後ろの男、なに? あの笑い方よく分かんない」みたいなことを言ったら大石さんが「女性性のある芝居の面白さを分かってる俺、っていうアピールなんじゃないですか」って言ってきて。

 

──ああ、上から目線みたいな。「女のこと分かってるぞ、俺」感ですね。

 

四方 「こういうのも俺、理解出来てるぜ、みたいなのなんじゃないですか」って言われて。なんかやっぱり、女性って…フェニミズム? フェ二…

 

──フェミニズム

 

兵藤 フェミ? (舌を巻きまくって)っフェ、っフェ、っフェミニズム

 

──文字にしづらいなぁ、もう(笑)。

 

兵藤 っフェーミーニーズームー!

 

四方 フェミニズムじゃないけど、なんかやっぱり、それが良い悪いじゃなくって、作り手の人たちって基本的には男社会の中でやっているところに女性が進出していったっていうのはどんな部門でもそうじゃない? そんな中で、今回の芝居って、私が観て女の子というか女性の葛藤を凄く描いている作品だったなっていう話をした時に、でも逆に凄く、市原さんの作風っていうのは「やっぱ女性ならではの視点で」とかそういうことを言われがちになっちゃうよね、みたいな。で、それが男性と女性と違って、男性はとりあえずそういうところは何も言わなくてクリアしてるけど、女性の場合は1個そういうファクターが入っちゃうのは、作り手の人は大変だろうなっていう話をしてたんですよ。

 

兵藤 そうだね。社会規範みたいなものに対する疑問。

 

──何を作っても「女性目線」っていう接頭語をつけてられますよね。

 

四方 そうそうそう。

 

兵藤 言われちゃうんだよねぇ。

 

──映画だと「新世代の女性監督」みたいな括り、マジで吐き気がします。それが商売的な「あえて」であったとしても、そう名付けるやつらは恥を知れって思いますし、それに嬉々として参加する「女性」たちもどうかと思います。

 

兵藤 そんなことになっちゃうのは、やっぱりそういうことを言う男の人がいるからじゃない? まぁ女の人でもいるか。

 

四方 私、誰かに、本当に誰かは忘れたんですけど「女っぽいヒステリー、やめろ」「だから女は」みたいなことを言われたんですよ。

 

兵藤 いま言ったらヤバいじゃん、それ。

 

四方 でもそれ、結構最近ですよ。ここ5・6年の話。

 

兵藤 ああー。でもここ5・6年でもうそこらへんのハラスメントのボーダーって全然変わってきてるからね。いま言ったらアウトでしょ、それ。

 

四方 それを言われた時に、結構ね、私個人が感情的なだけであって、女はみんな感情的って括るのやめてよって凄い思ったのがあったんですよね。

 

兵藤 そういうふうに、社会?がしたかったんだろね。女の人っていうのはそういうものっていうふうに位置づけたかったんだよね。それを女の人も受け入れるしかなくて。だってヒステリーの男の人だっているじゃん。

 

四方 いっぱいいるのにねぇ。

 

──自分が感情的な男性ほど、そのことに自覚していなくて、そうやって女性差別をしているような気がします。「俺は冷静、でもアツい想いを持っている」という勘違い野郎。そういう人って、女の人が意見しても絶対受け入れないですからね。

 

四方 そう。だから、今回1個話したいなと思ったのは、ハラスメントってホントに面倒臭いなって思って。それはネガティブ意味で言ってるんじゃなくて、凄く定義が曖昧だし、その定義は人によって違うし、年齢によっても違うし、それを分かってもらうっていうのも凄い大変だなって思ったし、私たちが知っているハラスメントじゃないところで、ちょうどあの事務次官だったっけ? あのテレ朝の人のハラスメントのことがあって。あれも絶対に「週刊新潮」に出さなければ、こんなふうにテレ朝は動かなかったよねだとか思うし。あと、KaoRi.さんのこともそうだし。

 

──アラーキーの件ですね。

 

四方 やっぱり、芸術に携わっている人たちの近くにいる自分としては、どこからがハラスメントで、どこまでが「そういうもの」なのか、みたいなのが凄く難しいなと思ったというか。

 

兵藤 ハラスメント講習やりましょうよ、映画美学校でも。

 

──映像業界や音楽業界、芸能界なんて即アウト案件しかないですからね。

 

四方 あと、鬱って言葉が流行った時に、簡単に「私、鬱だから」という人に凄く腹が立ったんですよ。「本当の鬱を知らねーくせに簡単に鬱なんていんじゃないよ」って。だから、ちょっといまパワハラモラハラ・セクハラっていうハラスメントっていう言葉自体がちょっと流行っちゃっているから、そこも気をつけなきゃなって思ってます。

 

兵藤 でも、定義の話で言ったら定義はあって、受けた側が、言われた側がどう感じるかが基準なのね、ハラスメントっていうのは。だから、何もかもがハラスメントになると思っていいの、特に年上の男の人は。そういうことなんですよ。昨日ね、たまたまテレビの番組で何がハラスメントになるのかっていうのをやってて、「私ちょっといま仕事で悩んでてー」っていうシュチュエーションのエチュードみたいなのをやっていて、女の社員が男の上司に相談しているシチュエーションだったんだけど、「~くんは大丈夫だよ、綺麗だし」って。

 

──「はい、終了」って感じですね(笑)。

 

兵藤 そう。でもそれは褒め言葉として言ってるでしょ? 上司としては。でも言われた方は気持ち悪かったり、褒められたとも思わなかったり。仕事と関係ないでしょ?

 

四方 仕事で評価されてない。

 

兵藤 だから「ハラスメントに準じる」ってその専門家は言ってた。「はい! はいはい! ちょっと待って、ありがとうございましたー」とか言って中断して(笑)「あなたの言ったことは、いますぐにハラスメントでアウトではないけど、あなたのそういった言動が積み重なることによって、大きなハラスメントの問題になるでしょう」っていうことを言われていたから、それはもう基準はない。確かに基準がないと言えばないから、すべてがハラスメントになると思わなきゃいけないの。特に年上の男性っていうのは。で、芸術のこととハラスメントのことははっきり別で、それは別にアラーキーが裸を撮るということはいけないことではまったくない。ただ、そこにどういう契約があって、どういう了解があって、どういう信頼があったかってことが大事で。それは何の仕事するのも同じじゃん。ヌードになろうがなるまいが。それは脱ぐ・脱がない関係なく事件になるでしょ? 「こんな契約のはずじゃなかった」とかって。だから、あのKaoRi.さんの件は、ハラスメントの要因と契約上の仕事の仕方と2つ孕んでいると私は思ってる。本当は脱ぎたくなかったのに脱がされたっていうことがあったからハラスメントの要素も入って来ちゃってる。あれは往々にして契約の仕方、危機管理だよね。それこそ「俳優の権利と危機管理」っていうことになるんだけど、ハラスメントっていう話でいうと基準はあって、それは基本は、権力構造の中で、立場が弱い人がどう感じるかがすべての基準で、「そんなつもりはなかった」が通用しないのがハラスメントなの。だから鬱っていうのが使われていたっていうのは、あれはちょっと差別的な感じになっちゃうじゃん。本当に鬱の人を知っていたら、鬱ってそんなんじゃないよって傷つく人とかもあるわけじゃん。でもハラスメントの場合は、なんでもかんでもハラスメントって言っていくくらいの方がいいの。じゃないと権力ある人はわかんないから。

 

四方 うーん。

 

兵藤 カトリーヌ・ドヌーヴはさ「褒め合ったり口説きあったりしていこうよ」みたいなこと言ってたけど、それも一理あって、それは権力構造外の関係性の中だったり、信頼関係が成立している場合の話で、だからこそ「ドヌーブさん、言われた方がどう感じるかでしょ?」って思う。だから、仕事でもそういうふうに言われて嬉しかったらOKじゃん。めったにいないけど。嬉しくなかったらアウトなの。そういう基準だからハラスメントって。

 

四方 そっか。

 

兵藤 あるんじゃないかな基準は。

 

四方 分かりました。

 

兵藤 だから変だなと思うことは言っていいの。

 

──ハラスメントの嵐の中にしかいないですからね、映像業界の人たちなんて。一方で思うのは、公美さんをはじめ僕が近しいと思っている俳優や友人たちは、日本のハラスメントに関する認知のレベルの、何十倍も先にいるんだろうなってところなんですよ。

 

兵藤 そうなのかもね。

 

──多分、それぞれが活動を開始して色々なことがあってそこまでの認知に至ったと思うんですけど、それは恐らく日本の50年後くらいの認知のレベルだと思うんですよね。それくらい先を行っていると思うんです。でも映像業界はハラスメントに関して、それこそいまの日本の認知レベルよりもむしろ低いんです。そういう環境に若い頃からいると、そういう意識すら持てないし、考えを改めることすら拒絶するんでしょうかね。

 

兵藤 でもハラスメントって、何かこう面倒臭いことだみたいになっているけど「いや、全部ハラスメントになりうる可能性があるって感じておいていいんだよ」って。そういうことなんだよね。

男性に限らず、社会的立場が上な女性だって。

 

四方 うん?

 

兵藤 昨日ニュースに出ていた指導の人が、例えば年下の女性社員がLINEで、上司に「今日はホントにお疲れ様でした~」みたいなのに加えてハートのついたくまスタンプがきたとしても、そのスタンプに対して、ハートのスタンプだったりうさぎとクマが抱き合ってるみたいなスタンプを返しちゃいけませんって言ってた。「というかその方が無難でしょう」と。「たとえその女性社員がそういうスタンプを送ってきても、あなたがもしハートのスタンプで返したらLINEやメールは履歴が残るから、しない方が無難でしょう」って言ってんだよ? それだけ相手との信頼関係には慎重にって。基準はそっちにあるの。女性社員の方からハートのスタンプみたいなのを送ったとしても、それは、好意とは限らない。スタンプ返したとして、 後々それは証拠になっちゃうって。それぐらいのことなんだよ。それぐらいの、基準! 智子!(怒!)

 

──(笑)

 

──真面目な話、それはむしろ権力側主に男性側からガンガン指摘しないとダメですね。例えば5人の会議で女性が1人しかいなかったら、声を上げてもその場では数の力で押し返されるかもしれませんから、男側がハラスメントをする男性に対して積極的に「それアウトですから」って言わないと変わらないですね。特に昔堅気の、「俺たちの時代はもっとヒドかったんだから」みたいに半分武勇伝みたいに語るバカどもには。もうそんな時代じゃねぇんだって。

 

兵藤 …………いま私、「ヘッダ・ガブラー」に腹立ってて。つまんなかったから。

 

──(爆笑)

 

四方 「あんなに面白い戯曲をこんなにスカスカにしやがって!」by 公美。

 

──それは演出家が悪いのかな。

 

兵藤 そうですな。まぁ話戻すけど、映画業界はホントにどうにかしないとなんだねー。

 

──パワハラ・セクハラ・男尊女卑の塊みたいな業界ですからね。そもそも女性の監督は、男性の監督と同じような戦い方が出来ませんからね。「女性監督」みたいな括りでしか企画が回って来ないですから。

 

四方 男尊女卑って気持ち悪い。でも一方では、そういうのを完全に自分の武器にしている監督もいる。

 

──そうですね、男性社会の中で「女性」を武器にしちゃっているというか、利用しているというか。「女性」っていうブランドを利用して、男尊女卑の映画業界でどうのし上がっていくかみたいなタイプ。そういうの、好きではないですけど、仕方ないのかなぁとも思います。男社会への戦い方の1種として、作戦としてあえて逆手に取って利用しているのならまだ分かりますけど、そうであったとしても罪は重いだろうと。

 

四方 そうそうそう。だから「ああ、そこに乗っかっていくんだー」とも思うんだけど…

 

兵藤 まぁ逆手に取る人はいるよね。

 

四方 まぁそこに抗って頑張っている人も見てるんで、そうじゃないラインで頑張ってほしいなぁとは思いますけどね。一方で考え方としては、変な話「女性監督」括りで金が出るんだったら、それで自分の作品撮りたいんだったらそれは乗るよねっていう、そういう気持ちだって凄く分かるし。

 

兵藤 「あえて」っていう戦略。

 

四方 うん、ちゃんと理解してれば。

 

兵藤 そう。ホント、昨日の9,000円の「ヘッダ・ガブラー」もさぁ…

 

四方 (笑)

 

兵藤 あえてやってるなら良かったんだよ。

 

──それ、作品の名前出していいですか?(笑)

 

兵藤 いいです。

 

四方 お! 公美大明神!

 

兵藤 大人ってさ、本音と建前があると思うんだけど、 私はその台本には本音と建前があると思うのね。それがポロっとぼろっと出てしまうわけででも、演技の表現に裏表がなかったから、ずーと「私は不機嫌!」みたいな感じだった(笑)。

 

四方 どんな言葉でも全部本音しか見えない、もしくは建前しか見えないみたいな?

 

兵藤 そうですね。

 

四方 演出家、かな(笑)。私はその舞台、観てませんけど。

 

兵藤 だから、幼く見えた。世間知らずのお嬢様としての表現だったとしても単調だし、全部にわがまま女みたいな振る舞いをしてたのが、私は違和感だったな。「そういう台本だろうか」と思って。「そういうコミュニケーションとして書れているのかな」と。あと、チェルフィッチュみたいに、おおかたお客さんの方を向いて演じるんだけど、でもお客さんがいるっていう前提では演じてないから「誰と話してるのかなぁ?」っていうこととか。

 

四方 根本、ですね(笑)。

 

兵藤 でも、「何」として観たらいいんだろうって思った時に、ナンセンスとして観てみようと思って観たら、凄い面白かった。

 

四方 うん…狙ってはないでしょうねー。でも、通常だったらつまんなかったらつまんないで終わっちゃうけど、それをどうにかして楽しもうとするその考え方がめちゃくちゃ凄いと思った。

 

兵藤 (吹き出し)どう観るかは自由だよね。あと五反田団の正月公演だと思って観ても面白かった。

 

四方 「ピシャーン」ってシャッター閉じちゃうじゃない、通常だったら。

 

──しますします。

 

四方 なんとかしてどっか面白いとこ見つけようとか。

 

──それ凄い。

 

四方 自分の意識をそこで閉ざしちゃうけど、自分の意識をそこで変えたら面白くなるかもっていうのは、そこは本当に結構凄いなって思う。

 

兵藤 演劇好きだよね。

 

四方 演劇好きっていうよりもね…

 

兵藤 ポジティブ?

 

四方 ポジティブっていうか、時間を大事にしてるんだろうなって。

 

兵藤 (吹き出し)時は金なり? 転んでもただでは起きない?

 

四方 なんだろう、お金がかかっている・かかかっていないに関わらず、その考え方をすると思うけど…たとえば9,000円払ってたら9,000円分の元はしっかり取るために、自分は楽しむのだっていう、その意識の変え方? 「自分は9,000円払っているんだから9,000円分のものをちゃんと提示しろよ」じゃなくて「ちゃんと払っているからこそちゃんと楽しまないとこの9,000円死んじゃう!」って思うその考え方が凄いと思う。

 

兵藤 貧乏性なのかな。

 

四方 うーん、貧乏性とはまた違うんですよねぇ。

 

──噛み合ってない(笑)。

 

兵藤 でもね、そうだね。お金と時間を大事にして、そこに充実を見つけようってことだよね。

 

四方 だからポジティブって言うと凄く薄っぺらくなるからあんまり言いたくないんだけど…どんな時でも自分が苦痛だったりつまんなくならないようにしてる感じが凄くある。

 

兵藤 そうだね。まぁ修行だったな。でもさ、そこで得るものはあるわけで。ただ私にとって9,000円の価値はなかった。

 

四方 (笑)。その戯曲があって、その戯曲を演出家と出演者がメタメタにしても、その戯曲にリスペクトがあったらそれを楽しむためのことをしようとしてる感じ。

 

兵藤 うん、そうだね。演劇リスペクト。

 

──それ凄いですよね。俺、無理なんですよ、それ。

 

兵藤 ホント? もうシャットアウト? じゃあ途中で帰るの?まぁ私も9,000円分の計算しだすけど。

 

──映画だと、結構お世話になった人の監督作だったり脚本作を観ていても「これは俺はちょっと無理だ」と思ったらもう出ますね。自分が関わった作品でも、客観的に面白くないと思ったら完パケしたものは最後まで観ませんし。だから普通にお金を払って観る時とは違って、試写会は本当に地獄なんです。

 

兵藤 (笑)。

 

──どんなに違和感を感じても、始まって大体30分くらいまでは我慢するんですよ。もしかしたら面白くなるかもしれないし、自分の認識が誤っているかもしれないので。体感で30分くらい経ってもどうにもならないなと確信したら、監督がロビーでトークショーの待機をしていたとしても出ちゃいますね。自分の認識が追いついていないだけなのかもしれないんですけど、観ているその時間が無駄だと思っちゃうので。だから公美さんみたいに出来るのが凄いなぁって思いますよ。

 

兵藤 でもそれは苦痛をなんとか取り除きたいからだよ(笑)。

 

四方 でもそこで自分の意識を変えるっていうところが凄いと思います。

 

兵藤 まぁねぇ。でもね、結構これやると楽しく観れるから「あれれ、」っていう時に眼鏡を変えるみたいな感じで。

 

四方 それをしたらどんなものでも楽しくなるだろうなっていうか。

 

兵藤 まぁ修行とも言います、それは。

 

四方 でも2時間不快だった経験がちょっと軽減されたわけじゃないですか。それだけでもデカくない?

 

兵藤 デカいっす。

 

──演劇だと、小劇場は物理的に、劇場の構造として途中で外に出られないですからねぇ。パンパンに人を入れるし、補助席が出て終わるまで後戻り出来なくなるし。

 

兵藤 出づらいよね。「どうしてもお手洗いで…」っていう人はいるけど「帰ります」っていう人はめったにいないね。私もあんまり経験ないな、「あ、帰ったな」っていうのは。

 

四方 演劇は確かに出づらいかなぁ。

 

兵藤 お客さんも立会人だからね。

 

──どんなにあらゆることにフェアな劇団だとしても、演劇に暴力性があるとすればそこだなっていう感じがします。一度席についたら「最後まで観ろ!」ってなりますよね。

 

四方 強要しているのかもね、そういう意味では。「この2時間はお前ら、携帯鳴らそうもんならお前ら」みたいなね。

 

兵藤 「飴食べようもんなら」って。

 

四方 「カサってなったらお前ら」って。私、お腹鳴らないでねっていつも思うもん。

 

兵藤 結構プレッシャー感じてるんだね。でも海外だと超自由だけどね。帰る人は帰っちゃう。文化だろうな。

 

──僕も建物の構造上、出られるもんなら出たい時はあります(笑)。

 

四方 それこそ昔の野外ステージとかだったら出やすいだろうなぁ。ああいう小さいところにみゅって入るのって、多分海外の文化としてそんなにないじゃないですか。

 

兵藤 「合わなかったら出るっていうのはそんなに申し訳ないことじゃないよね」っていうのが、出演者も観客双方が了解しているよね、ヨーロッパは。でも日本はやっぱりさ「みんなに迷惑が掛かるから」「注目されたくない」ってとこはあるかな。あんま気使わなくなってもきてるけど。

 

四方 気遣いの人たちの国ですから。

 

──「迷惑が掛からないように」っていう文化なのに、女性や社会的弱者と称される人たちへの気遣いに関しては後進国だっていうね。イミフですね。

 

四方 考えちゃったのはさ、(テレ朝女性職員セクハラ被害での)テレ朝の会見を音声だけ聞いたんですけど、やっぱり記者だから自分の得た情報を他に流すっていうのはタブーじゃないですか。「それに対してどう思う?」みたいな質問がされていて、「それはやっぱり自分の会社ではそういう告発をスルーしたから、そういう意味では自分たちも問題がある」みたいな答え方をしてたんですけど、面白かったのが、1対1でご飯を食べててそういうハラスメントの言葉が出てきた時に、証拠を取るために録音をしたことに対して「取材で会っているのだったら『録音しますよ』っていう許可が必要なのでは?」みたいな質問をした記者がいて。

 

──もう切腹すればいいのにね、それをベタで質問しているのであれば。

 

四方 バカじゃないのって思って(笑)。

 

兵藤 つっこんでほしかったのかな。

 

四方 「じゃあ今日は取材なので録音します」って言ったら絶対そういうことは言わないから、ハラスメントはもしかしたら回避出来たかもなとは思ったけど、やっぱり最初に会見を聞いた時はめっちゃ怖いからそれは録音するよねって。「ハラスメントが怖いので録音します」って言ったら、それは社会的な自分の身が危ないから。

 

兵藤 そりゃそうよね。

 

四方 そのテレ朝の記者さんが直属の上司に言って相手にされなくて仕方ないから新潮に行って、「週刊新潮」が記事にして、もしそれがあれだけの話題にならなかったら、テレ朝は会見をしなかっただろうし、あの事務次官も辞めなかっただろうし…ちょうど同じタイミングで新潟の知事が辞職したんですよ。その人は買春してて。

 

──女子大生にお金渡していた援交ですね。

 

四方 でもその知事の方は人間的で「自分はモテなかった。女子大生にお金を渡して、というのは良いことではないけれど、それはすべてが好意だった」みたいなことを言ってて。

 

──事務次官とは違って、自分の非も認めていて動機も隠さず喋っていて、凄く正直な会見でしたね。しっかりケジメをつけた感じです。しかも恐らく、そこに悪意は別にないんですよ。

 

四方 そうそうそう。

 

兵藤 ああ、本当に自分の欲望が抑えられなかった反省っていう感じだ。

 

四方 あの会見も全部計算づくだったら凄いなと思うけど、でもやっぱりそれを聞いた時に、そこに感情だったりだとか純粋にその娘が好きでだったり、それはそれでストーカーとかになるかもだから危ないんだけど、でもなんか、やっぱりモテない男がさ、カネ持ってて地位もあってそういうことやっちゃったら問題にはなるかもしれないけれども、でも押さえ切れないこの気持ち、みたいなのはちょっと分かる気がするんですよ。だけど事務次官の方は全然そういうことじゃないから。

 

兵藤 気狂いでしょ?

 

──(笑)

 

四方 そう。ただ気持ち悪くて。「普通に店とか行けよ!」と思っちゃって。

 

兵藤 店だって客選ぶよね、選ばないか。

 

四方 そうそうそうそう。そういうのを違う人に求めるのがいけない。立場が違うから。

 

兵藤 確かに。

 

四方 でも一方で、やっぱり記者の世界で女性が行くっていうのは特ダネを貰えたりとか、普通にご飯食べれる関係性っていうのはある意味でステータスでもあったりもするはずだから。誰も扱ってない記事を世に出せるっていうのは絶対にエクスタシーを感じるものだとも思うので、そういうところを指摘している記事もあって、難しいなぁと思ったんですけどね。これは男性的な考え方かもしれないけど、こっちもこっちで大臣に対して女の武器を使ってたかもしれないじゃないですか。

 

兵藤 だからその考え方がもうハラスメントなんだよ。それが間違いなんですよ。だってそれは痴漢にあっても「ミニスカート履いてたから仕方ないでしょ?」ってことでしょ。それが一番難しいところ。そうじゃないんだよっていうことを日本の一億人が理解するのっていつなんだろう。

 

四方 日本人の風土というか歴史の中で、凄く難しい考えなんだろうなって。みんながみんな「これがこうだからこうなんです」ってならない問題だなってやっぱり思っちゃって。

 

兵藤 「された方がイヤだったら」で分かりやすいじゃん。

 

四方 でもそれを客観的に判断しなきゃいけない場合があるわけじゃないですか。ていうか、判断をしなきゃいけないと思っている男性がいるんですよね。でもハラスメントの場合、そうじゃなくてもう問題が上がってきた時に、もちろんお互いの意見を聞いて、その上で、どちらかと言えば訴えられた方が気をつけなければいけないっていうのが基本ですけど、でも、日本の風土ってやっぱり、相手の言い分も聞かなくてはならない、で、下手したら女性がイヤだと思っていても相手のやっていることは常識内のことだから、あなたが言っていることはただの被害妄想ですっていうジャッジをしかねない風土がありません?

 

兵藤 それはどんな事件でも同じじゃない? だって聞き取り調査をするじゃん。レスリングのあれだってさ、いっぱいの人に聞き取りをして、やはりハラスメントでしたってなったわけだから。

 

四方 そうか。

 

兵藤 だから色んな人がどういうふうに見てたかっていうこととかは結構重要だと思う、ハラスメントとかは。だけど別に、だからって、たとえいつも女の武器みたいに露出多かったじゃんってことは理由にはならないの。ハラスメントをされたことの。

 

四方 そういうことか、わかった。

 

──映像業界は殴る・蹴るがあったりハラスメントの嵐だってことは、業界に関わったことがない人でも知っていると思うんですけど、基本的にそれをやるのは自分より地位が低い人間にだけなんです。相手に力も権力もないから。いま世間で問題になっているあらゆるハラスメントも、基本的に男の方が女性よりも物理的な力も地位的にも強い立場でしか起こらないから。

 

兵藤 そうですそうです。

 

──分かりやすいなと思ったのは、僕が撮影現場で仕事をしていた時に、殴られたり「殺すぞ」とか言われたことが1回もないんですよ。それは僕の外見がイカツくて、身体がデカいから。

 

兵藤 なるほどねー。

 

──「コイツとやりあったら、こっちも無傷では済まないな」って思ったら手は出して来ないんですよ。「こっちも被害が出るかも」って踏んだら、そういう人たちは大人しいですよ。結局弱いものイジメです。権力的なハラスメントは無数にありましたけど、学生時代にカツアゲとかもされたことないですし。

 

四方 じゃあ職質は?

 

──数え切れないほど。

 

兵藤・四方 (笑)

 

──撮影現場の仕事はもう本当にめちゃくちゃですよ。だから仕事をする時には、もう全部録音して、契約書とかもちゃんと書いてから仕事をすれば、だいぶ変わると思うんですけどね。

 

四方 「信頼してないのか!」って絶対言われそうだけどね。

 

兵藤 海外だったら契約書あるね。それが日本か…この間J-WAVE聞いてたら、コニカミノルタかなんかが池袋のプラネタリウムを新しくしたらしくて、その宣伝で、コンセプトを話してたのね。 「プラネタリウムって星とかだから、凄くロマンティックなものだっていうふうに感じていると思うんだけど、そうではなくって、宇宙の姿を見せることで、男性の知的好奇心をくすぐるようなものにしたんです」って言ったの。

 

──あーあ(笑)。

 

兵藤 それで「おやおや?」と思って。「これは…アウトじゃない?」って。

 

──アウトですね。

 

兵藤 別に「ハラスメントですよ!」とかって感じじゃないけど、宣伝としては上手くないんじゃない?っていう。女の人が聞いたら「え、それはなに、男の人が知的で、女の人がロマンティックっていう括りですか?」と捉えられなくもない発言。

 

四方 ああ、そういうことか。

 

兵藤 そう。だから、いままではプラネタリウムは女の子たちが見るものだったと。「星きれー、うっとり」みたいな。「ロマンティック=女性」だったものを、そうじゃなくて宇宙っていう規模で見せて、それは男性の知的好奇心をくすぐるものにしてるんです、って。

 

四方 そっか。だから男性・女性を出しちゃダメってことですね。

 

兵藤 それは思わず言ったことなんだろうと思うけど、その人がどう考えているかっていうことがボロリと出た瞬間で。でもコンセプトぽかったけども。

 

四方 …………もうお腹いっぱいですか?

 

兵藤 食べたいわ。

※この日は何故か2人とも食欲がいつも以上に旺盛でした。

 

四方 なんかこの汁もったいないじゃないですか。

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兵藤 チャーハン入れる? チャーハン入れようよ。

 

四方 レタスチャーハンにこの汁を乗せたら美味しそうだなって思ったんですけど、どうですか。

 

兵藤 いいねー。コミカミノルタプラネタリウムのコンセプトの宣伝は別なのにしといた方がいいのではって思う。でもその後、番組のパーソナリティの方がすぐフォローしてた。

 

──炎上するかもって思ったんですかね。

 

兵藤 「別に男性向けっていうわけではなくて、女の人でももちろん楽しめるっていうことですよねー」みたいな感じでするーっとフォローしてて…………

 

四方 コミカミノルタの人は慣れてなかったんじゃないですかね。だから自分の気持ちが素直に出ちゃったから、凄くアウトなんだけど…

 

兵藤 台本しっかり作るって大事だね。考えた上でのコンセプトだったらやばそう。

 

──会社名背負ってラジオ出たらそう思われますわなぁ。

 

四方 じゃあコミカミノルタプラネタリウムにみんなで行こう!

 

兵藤 私たち、女性で行かせて頂きます!

 

四方 じゃあプラネタリウム行った後に、次回の月刊の収録をしましょう(笑)。

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【了】 (構成:スズキシンスケ)