特別座談会!「古澤健/永山由里恵/前原瑞樹/土田有未」【前編】
こんばんは! 『友情』応援隊のSです! 今回は特別編!
過去にナカゴーに出演したことのある古澤健さん(写真左奥)、永山由里恵さん(左手前)、前原瑞樹さん(右奥)、土田有未さん(右手前)による座談会の模様をお送りします!
超盛り上がってしまったため、前編・後編に分けての掲載となります!
充実の内容と、圧倒的な面白さを皆さまに!
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〜特別座談会・前編〜
【登壇者プロフィール】
古澤健: 映画監督・脚本家。映画美学校アクターズ・コース主任講師。高校生の頃より8ミリ映画を撮り始める。『home sweet movie』が97年度PFFにて入選(脚本賞)。98年、『怯える』が クレルモンフェラン短編映画祭に招待される。『ロスト☆マイウェイ』で監督デビュー。主な監督作に『making of LOVE』、『今日、恋を始めます』。最新監督作は『メガバンク最終決戦』(WOWOW 連続ドラマW)。脚本作『ゾンからのメッセージ』(監督 鈴木卓爾)が公開待機中。
永山由里恵: 1988年生まれ。立教大学現代心理学部映像身体学科卒業。映画主演作に『イヌミチ』(2014/万田邦敏監督)がある。最新出演作『ジョギング渡り鳥』(2015 /鈴木卓爾監督)が2016年3月19日より新宿K’s cinemaにて公開予定。舞台出演はナカゴ―、水素74%、Q 等の劇団に出演している。現在こまばアゴラ演劇学校無隣館に在籍中。ナカゴ―には『ノット・アナザー・ティーンムービー』にビッチな女子高生役で出演。
前原瑞樹: 1992年生まれ、長崎県出身。映画美学校アクターズ・コース第2期初等科修了。 劇団青年団に所属。舞台を中心に幅広く活動中。 主な作品に、青年団『忠臣蔵−武士編』、水素74%『誰』など。 映画では、『友だちのパパが好き』(監督:山内ケンジ)にも出演。 映像作家・森翔太監督の作品にも多数出演。 今後の待機作として、Wけんじ企画(作演出:山内ケンジ)などがある。
土田有未: 役者。ニューヨークの高校・ボストンの大学にて演劇・舞台演出等を学んだ後、2013年に帰国。主なナカゴー出演作品は「ミッドナイト25時」「堀船の友人」「暴れ馬/レモネード/コーキーと共に」等。
古澤健(以下古澤) 今日の座談会のテーマとしては、ナカゴーというか、作・演出の鎌田さんの魅力について語りたいなと思って。きっかけとしては今回映画美学校アクターズ・コース「映画・演劇を横断し活躍する俳優育成ワークショップ」の公演として鎌田さんに演出家として来て頂いて、新作の『友情』という作品を一緒に作っていくってことになったんだけど、映画美学校がやるということで映画美学校の役者たちを世に知らしたいってこともあるんだけど、やっぱり鎌田さんを、鎌田さんの舞台を観たことがない人たちにもこういうきっかけで届けたいなっていう想いがあるので、鎌田さんの作品の魅力というか、そういうところを紹介出来ていければなと思っています。
で、今日集まってもらったのは一度でも鎌田さんの作品に出たことがあるということで、皆さんをお呼びしました。自己紹介を兼ねて、永山さんから。どの作品で?
永山由里恵(以下永山) 私は一昨年の6月に『ノット・アナザー・ティーンムービー』(ナカゴー特別劇場vol.12)という16人くらいのアメリカの高校生が出てくる群像劇で、鎌田さんの演劇にはじめて出演させて頂きました。
古澤 その時ってきっかけはなんだったの?
永山 元々鎌田さんの演劇というかナカゴーを観たことがなかったんです。その時、ちょっと外の劇団に出てみようという時期で。映画美学校アクターズ・コースが修了して、そろそろ外の演劇に出たいなっていう気持ちがあって、たまたまオーディションがあったので受けてみたら合格させて頂いてっていう。
古澤 そのオーディションってどこで見つけたの?
永山 なんだったかな…あっ、チラシですね。演劇観に行ったら折り込みのチラシで入っていて。みんなから「ナカゴー面白いよ」っていうのは結構聞いていたので、それがきっかけです。
古澤 じゃあ、学校つながりで前原くんは? 一番最近だよね?
前原瑞樹(以下前原) そうですね。僕は『暴れ馬/レモネード/コーキーと共に』(ナカゴー特別劇場)という短編3つの作品に出ました。
古澤 僕はそれ行けなかったんだけど、それは短編3つとも出たっていうことなの?
前原 いや、僕は最初の『暴れ馬』と最後にある『コーキーと共に』の2つですね。
古澤 前原くんはどういうきっかけで出ることになったの?
前原 僕はまず、この『友情』の原案の『堀船の友人』(ナカゴー特別劇場vol.14、『牛泥棒』と同時上演)をはじめて観てなんか凄く面白くて、ぶっ飛んでるなって最初思って(笑)。
古澤 ムーブ町屋でやったやつ?
前原 そうです。
古澤 あの時って2本立てだったよね?
前原 そうですね。『牛泥棒』と。
古澤 『牛泥棒』は傑作だよね。
前原 いや〜最高ですね。まぁ、僕が一生出ることのない劇団だと思っていて。
全員 (笑)
前原 でもなんかずっと気になっていたんですけど、やっぱり青年団とかやっていて、もっと弾けたい! みたいなことで(笑)。もっと振り切ってみたいけどどうすればいいんだろうとか思っていて。たまたまオーディションの情報を知って、自分が出ているのは想像つかないけれど受けてみましたね。
古澤 いまは?
前原 青年団の劇団に。
古澤 あ、そっか。やっぱり全然普段やっていることとは真逆?
前原 いや、でもこれは、僕は凄くビックリしたんですけど、やっていることは全部一緒なんですよ。
古澤 あ〜。いきなり自己紹介のところからもういきなり(笑)。
前原 そうです(笑)。
古澤 もったいないから、おいしいところはちょっとあとに持っていこう(笑)。
全員 (笑)
古澤 土田さんは?
土田有未(以下土田) 私は一昨年かな? 2月に、秘密結社ブランコっていう演劇ユニットが主宰する作品があって。その舞台は短編集だったんですけど、4つ目が鎌田さん作・演出で、それではじめてお世話になって。で、凄く面白かったから、ナカゴー観たことなかったんですけど、ちょうどその秘密結社ブランコの稽古中かな? オーディションをナカゴーがやるというから「オーディション受けたいんですけど」って言ったら「いや、いいよ、もう。土田さんはどういう演技、とか分かっているから、別にそれはいいです」って言われて、あぁ残念だな…って思ったら、そういう意味じゃなくて出してくれるってことで(笑)。
全員 (笑)
土田 それで『ミッドナイト25時』(ナカゴー特別劇場vol.13、『ベネディクトたち』と同時上演)がはじまって、古澤さんと一緒に。
古澤 僕は演劇自体、あれがはじめてでしたけどね。
土田 あ! そうだ(笑)。
全員 (笑)
土田 でも鎌田さんは、ナカゴーは秘密結社ブランコで作った作品とは似ているようで違いますっていう説明をされていたんですけど、確かに割りと口立てが、ナカゴーの方が断然多かったですね。
古澤 秘密結社ブランコっていうのは、ユニットの名前?
土田 そうなんですよ。定期的にやっているわけじゃないんですけど、主催の方が鎌田さんとも仲が良くて。その短編集の中で鎌田さんが作・演をやったのが「渡る世間は鬼ばかり」のパロディみたいなやつで、本当に面白かったんですよ。
古澤 え、じゃあ出演したのがきっかけで鎌田さんとかナカゴーのことを知るように?
土田 そうなんです。
古澤 僕はたまたま(新宿)ゴールデン街で知り合った女優さんに誘われてナカゴーを観に行って、2本くらい観に行ったのかな? で、確かに凄く面白いっていうか、なんかくすぐりの笑いとかじゃなくて本気で笑わせに来ているなっていう感じが凄くあって。で、ちょうどその時に自分の中で「出てみたい熱」があったんで。
全員 (笑)
古澤 直談判して。
永山 鎌田さんご自身に古澤さんが?
古澤 そうそうそう。「本気で出るつもりなんですか?」と言われて「はい!出たいです!」って。
全員 (爆笑)
古澤 でも僕は出てみたら、最後でんぐり返しではけなきゃいけなくて、で、稽古場で何回かやったんだけど、超能力で攻撃されて、超能力合戦で負けてゴロゴロゴロゴロって転がってはけていくんだけど、それがなかなか出来なくて。そしたら何回目かで鎌田さんに「あ!古澤さんがただのおじさんだってこと忘れてた!大丈夫ですよ、出来なくて」って。
全員 (爆笑)
古澤 「いやいやいや!出来ます!出来ますよ!ただのおじさんじゃないです!」って言って(笑)。なんとか頑張ったんだけど。
土田 そんなこと言っていましたっけ? 凄く面白いですよ(笑)、それだけで笑ってしまうような(笑)。
永山 「あ!思い出した!」みたいな(笑)。
土田 そうそう(笑)。
古澤 最初出た時ってどういう印象だった?
永山 私は元々ナカゴ―を観ていない状態でナカゴーの世界に飛び込んだので、ちょっと戸惑いというか、そういうのがあったんですけど、やっぱりやっていくうちにどんどん面白くなって。稽古場でも結構笑いが起こるじゃないですか。その場で鎌田さんが口立てしていく感じとか、どんどん引き込まれるというか。オーディションを受けてよかったなと思いました。
古澤 台本はどのくらいの段階で出来ていたの?
永山 台本は最初からありましたけど、だんだん増えていくスタイルでしたね。
土田 あ、一緒ですよね、多分。
古澤 でも『ミッドナイト25時』の時は、最初集まった時にはなくて、しばらくエチュードをやって。タイの宿か何かのシチュエーションで。
土田 あ! そうだそうだ。古澤さんが凄く上手だったんですよね、それ。
永山 なんですかそれ(笑)。
古澤 タイのシェアハウスに住んでいる女の子たちの部屋に、俺が何かを返せって押し掛けて来て。
土田 でも絶対扉を開けちゃいけない、みたいな。
古澤 で、口八丁で言いくるめて「いや、そもそも物を返さないのはおかしいだろ?」みたいな話をずっと永遠して、うっとおしいおっさん、という。
全員 (笑)
土田 金魚の話が出て来たような気がするんですけど。古澤さん、凄く上手いんですよ、口が。
古澤 適当さが出ちゃったんだよ。その時も鎌田さんに「古澤さん、普段からそういう人なんですか?」って言われて(笑)、まぁそうかもしれないなって。そういう意味ではやっぱり本職じゃないから、そういう素のゲスな部分が出ちゃうんだなって。それしか、なんかこう、ないなっていう。そういうところは自然と。なんか集まって「あ、この人の前だったら別にハードル高くなく色々やってもいいかな」って気になれたので。前原くんはどうだったの? オーディションだっけ、最初? その時の印象っていうか。
前原 きっかけはオーディションですね。自分から受けました。面白かったですよ。オーディションだと、普通は自分の写真とか送るじゃないですか。でも、写真とかは要らないんですよ。名前と連絡先と簡単なプロフィールを下さいみたいな。それだけで本当に大丈夫なのかなって。思いません?
全員 (笑)
土田 写真ないんですね。
前原 なかったですね。それで送ったら、何時に来て下さい、と。しかも、町屋のめっちゃ奥の公民館みたいな一室で「大丈夫かな?」とか思いながら入ったら受けに来た人たちがいっぱいいて。で、みんなもちろんはじめましてじゃないですか、ほぼ。だから緊張しましたけど、全部エチュードでやって、オーディションは凄く面白かったです。
土田 どんなこと聞かれたりするんですか?
前原 それもなんか本当にヤラセみたいな感じで(笑)。「みんなナカゴー観たことありますか?」と聞かれて、20人くらい長い机に並んでいるんですけど「あります」「あります」「ないです」ってそれぞれ答えていって。「結構きわどいフェラチオのシーンとか色々あるんですけど、出来ますか?」と聞かれて「出来ます」「出来ます」「出来ます」…って(笑)。
全員 (笑)
前原 「大きい声を出すんですけど、大丈夫ですか?」って言って「出来ます」「出来ます」…って(笑)。言うしかないよ! みたいな(笑)。そんな感じでしたね。変な感じ! もう宗教なんじゃないか? と。「どんな役やりたいんですか?」とかも。
土田 前原くんはどんな役って言ったんですか?
前原 はしゃぎたいです! みたいな。普段静かな演劇をやっているので、大きい声出してみたいですって。で、あとはもう勝手にグループ勝手に分けられてエチュードしましたよ。
古澤 それは何かお題を与えられて?
前原 お題は…ありましたね。誰かが言ったやりたい役をポンと一個出されて。僕のグループはイタコをやりたい人がいて、イタコが出てくる話みたいなのをやりましたね。
古澤 それで合格の連絡が来て?
前原 そうですね。
古澤 オーディションは公演のどれくらい前だったの?
前原 本当は10月の『キンダガートン・コップ』(ナカゴー特別劇場 vol.15)のオーディションだったんですけど、それにはもうスケジュール的に出られなくて。でもそれ以降出てみたいなと思っていたので受けて、今回は無理だけどそれ以降に出たいということを言っていたら、オーディションを受けた翌々日くらいにはもう電話が来ましたね。だから割りと早く連絡もらえましたね。
古澤 『キンダガートン・コップ』観た? 『キンダガートン・コップ』改め、カマキリと…
全員 (笑)
土田 『人間とカマキリ』、確か。
前原 最初のタイトル言うだけで面白いっていうのがあり得るんですよね(笑)。
古澤 でも、話はずっとタイトルの通り、幼稚園の先生の話だから、あれはただの摑みだったのかなと思っていたら、本当にカマキリの話だったという。あれはヤバかったよね。
全員 (笑)
古澤 それで、前原くんの時には、もう稽古の時には台本はあったの?
土田 『暴れ馬』は最初ちょっとあって、『コーキーと共に』はなくて。でも割りと稽古の最後の方で何ページか一気に来て。特にエチュードとかはやってないですよね?
古澤 はじめから稽古初日から渡されてそれでみたいな?
土田 そうなんですよ。
前原 でもざっくりとしか書かれていなくて、まずやってみてセリフを言って、「ああ、じゃあ大体分かりました」と帰って本格的に書く、みたいな。
土田 あぁ! そうだ! そうでした。初日は口立てとエチュードみたいな。
前原 でもほぼ鎌田さんがセリフ言っていましたよ。
古澤 永山さんが出たやつは、さっき紹介でも言ったけどアメリカ人っていう役じゃない? それはもう最初から台本て決まっていたんだっけ?
永山 決まっていました。アメリカのとある田舎の町、高校生16人という設定で。鎌田さんの演劇って映画を下敷きにするというか、80年代アメリカB級映画、そしてそれをちょっと吹き替えっぽく言うみたいな、そのパロディ感が私はかなりツボで。元々映画が好きなのもあるんですけど。
古澤 その吹き替え感みたいなやつは、もう最初からそういう風にやってくれって言われたの?
永山 そうですね。『処刑ライダー』っていう80年代B級カーアクション映画の吹き替え版をみんなで稽古初日に見ました。その映画のB級感と日本語吹き替えのパッケージングが絶妙でした。その時、鎌田さんの映画のチョイスのセンスの良さを目の当たりにして鎌田さんについていこうと思ったというか、ナカゴ―に出演するにあたっての不安が消えた部分は結構ありました(笑)。あとやっぱり篠原(正明/ナカゴー)さんが…
古澤 篠原さん上手いよね。
永山 そうなんです! 篠原さん、本当にお上手で。篠原さんの演技を間近で見て、「なるほど。」こういう感じかって。
古澤 それは稽古場で「じゃあ篠原くんやってよ」っていう風に鎌田さんが言って?
永山 そうですね、その日たまたま人がいなくて篠原さんが最初のシーンに入ってやっていた姿を見て、アメリカ映画の吹き替え感っていうのが如実に伝わってきて、なるほどこういうことか! っていう。
古澤 でも実際、そういうお芝居ってしたことないでしょ?
全員 (笑)
永山 自分がやるのは凄く戸惑いましたね。ただその時、共演させていただいた佐々木幸子さんっていう女優さんの稽古からエネルギーがほとばしるお芝居を見て私もこんな風になりたいって思ったのはとても印象に残ってます。
古澤 やってみて鎌田さんからどんなダメ出しがあるの?
永山 ダメ出しは…。鎌田さんは「登場人物の心情はこうだから」とかはあまり説明されなくて、こうしてみて下さいって動きや台詞を鎌田さんに言われたものを試して、出来なければ、それはやらなくていいやって事もありましたね。私は台詞のデフォルメされた言い回しと大げさな動きとか結構苦労しました。何か自分の中に準備してないと薄っぺらい言い方や動きになってしまったりして。みなさんどうでした?
土田 ダメ出し…あ、でも本当によく言われるのは「それは描写だから」って言うのはよく言われますね。
全員 ああ〜
土田 「描写はやめて」と。あと、例えば「ここ泣けますか?」と言われて、泣けなかったら泣こうとしなくてもよくて、それはやめてナシってことはよく言われたり。描写じゃなくて、もうそういう状況だからっていうのはよくおっしゃっていますね、鎌田さん。そうだったよね、この間も。
前原 この間もそうでしたね。
古澤 僕も泣けないから泣いたフリを一生懸命やったら「それはいらないです」って。
土田 怒るとかじゃなくて、もう本当にそれは要らないって。
古澤 だからそこの基準ははっきりしているけど、印象に残っているのは、金槌で殴るお芝居とかはずーっと永遠繰り返しやっていた。
土田 『ミッドナイト25時』の時、私の首の動きが凄く重要だったんですよ。それで、それを永遠にやっているんですよね。殴られる役で。
古澤 でも殴る方の菊川(恵里佳)さんも殴り方について、ずっと永遠やっていた。最後にとどめをさすところもそうだし、作り物のハンマーで本当に頭をパコっと叩くじゃないですか。あの叩き方とか凄いこだわっているなって。その部分と、あとドアノブのガチャガチャとかは別に、それは適当でいいんだ、という。
土田 あとは殴られるのとか凄く練習したけど、実際劇場に入って本番中にやっぱり全然違う方向の殴り方とか殴られ方とかになったりとか。
前原 鎌田さんの中のリアリティがありますよね。
古澤 そこがね、魅力の秘密のような気もするんだけど。ダメ出しされたことの1つに、最後正体が鳥だったっということが分かるという…。だけど、一生懸命鳥のフリをすると「それは鳥のフリをしている人だから、そこは適当でいい」と。適当というか、「そんなに力を入れずに鳥に見せようとしないでくれ」って。そこはどんなに頑張っても鳥にはならない、一生懸命鳥のフリをしようとしている人にしか見えなくなっちゃうから、ある種の型というか、そんな感じでいいみたいなことは言っていて、その辺りの鎌田さんなりのリアリズムっていうのがあるんだなと思って。なんとなく、前原くんが言っていた「(青年団と)全然実は真逆じゃなかった」ってその辺なのかなって。
全員 うんうん。
前原 そうですね、割りと僕は演出が結構的確というか、的確という言い方はアレだけど、どう動いてほしいかを、時間がなかったからかもしれないですけど、結構しっかり言っていたなという印象がありましたね。あと「こういう気持ちの流れを作った方がいい」とか。だから、凄く俳優としてやりやすいというか。
古澤 でも、外側からナカゴーをお客さんとして観た時は自分が普段やっている青年団とは真逆だな、とか思ったら、やってみたら近かった、というのは、自分の中でその辺のギャップや戸惑いはなかったの?
前原 凄くビックリしましたね。僕がやった役ではないのですけど、舞台の設定としてある場所にゲロがあって、そのゲロは見えないんですよ。ゲロは見えないけれど、そのゲロの上を走っていると足が入って。それから、まず逃げて、足を見てパンパンパンって叩いて。で、叩いた手にゲロがついていて、それを払ってまた別の場所についていて「ああ!」ってなるという演出があって。
全員 (笑)
前原 そういうのをずっと鎌田さんがやっているのを見て、もの凄く作り込まれているというのが分かって、観ている時はやっぱり細かいところよりも大きいところをどうしても観ていた気がしていて、でもそこは細かいのがしっかり作られているから大きいところで見えているというか。そういうのがやってみて分かった気がしましたね。
古澤 そうね。『ミッドナイト25時』の時もみんなで同時多発で「ワァ〜!」と喋るやつがあって。お客さんとして最初ナカゴーを観ていた時は、とにかくきっとアドリブでみんな好き勝手なことを自分のタイミングでやっているのかと思っていたのが、このタイミングでこれを言うっていうのを細かく指示をしていて。それは別にお客さんにそれが聞こえるか聞こえないかということじゃなくて、それぞれのキャラクターのテンションの上げ方っていうのを、これからその舞台の中でこういう風になっていくから、このシーンを作るためにはちゃんと細かいことを全部決めていかなければいけない、みたいな。で、凄く細かく作っていくのだなっていう印象があったかな。
前原 結構映像とか見ていても、やっぱり凄く…アレとかあったじゃないですか。殴られて「うぁ!」となる時に…
土田 鼻を殴られるシーンがあって。でも実際に殴られたらそれはもうその瞬間に痛がるのではなくて、後から来るからっていうのとか。
前原 あと、気付いて振り返る、みたいな時に、もう喋っていてこの子は気付いていて、他の人が気付く瞬間に一緒に気付こうとしちゃダメだよ、みたいなことを言っていて。もうその時にはこの人は気付いているから、振り返る時は「いま気付いたっていう顔はしないでもいいよ」みたいな。それは矛盾があるからって。だから、少しでも矛盾があると注意してくれるじゃないですか。そういうところとかがやっぱり面白かったですね。ウソがないというか。
古澤 そう。だからウソがないことを積み重ねて、でも最終的には鳥が肉屋をやっていたり、カマキリが人間を支配していたりするでしょ? あれがさ、不思議だよね。
土田 本当に稽古の最初の方はそんなこと自分たちも知らなくて「こうなります」って突然言われるから「え!? そうなの!?」って。
永山 分かる(笑)。稽古の途中でそう言われるんですね。
土田 そう、途中でそうだったんだっていうのがありますよね(笑)。私は英語を話す設定だったんですが、本当に英語を喋るって言うのがビックリして。そんなこと想像もしてなかったから。カナダから来た鳥だから、英語を喋るっていうので。でも台本は全部日本語で書いてあって、それを自分で訳してやっていたんですけど。一番最初はそこも英語でエチュードをさせられて、でも他のみんなはもちろん日本語なんですけど。
古澤 思い出した。他の人は英語が分からない設定というか、別にみんな喋れたり聞けたりするわけじゃないから、ある時の稽古から菊川さんが「英語やめて! 怖い〜!」って。
全員 (笑)
古澤 窓を破って入ってきて暴れまくって、それで英語で捲し立てて。怖いよね、確かにね。
土田 それは怖いなって。自分が何を言われているかも分からないし。最初は日本語でしたよね?
古澤 うん。稽古の間にその辺は。ちょっとずつ台本が出来上がっていたのも変えていったよね? 大幅に削ったりだとか、本番中もやっぱり少しずつセリフ変わったりしていて。
永山 『ミッドナイト25時』を観た時、窓を割って人が入ってきて窓ガラスが布団の上に落ちている状況がある。でも、落ちていないんですよね、実際は。それでも、ちゃんと出演者の方、それも多分鎌田さんの演出なんですけど、布団の上で「いてっ!」って言うので、それが私は凄く好きで。そのリアリティというか、ちゃんとそこに窓ガラスが散らばっているんだよっていう。
土田 そうですね。そのガラスを吹かれて眼に入って「やめて!」みたいなのを確かずっと永遠やっていて、ゲロもそういうことですよね。
古澤 確かガラスも、飛び込んで最初興奮しているから気付かなくて、なんかバァーって言った後「いてぇ!」って後から、みたいな。
永山 そうそう(笑)。「いてっ!」って言うタイミングも絶妙なんですよね(笑)。ああいうリアリティがいい。
古澤 そういう細かい一つ一つの仕草とかセリフの言い方に関してのリアリティに対する追求の仕方というか、それはずーっと変わらずあって。で、気付くとそれが積み重なっていっていると、その世界が出来上がっちゃっているという感じなのかな。
【後編に続く】
2016年3月3日[木] - 3月6日[日]
映画美学校 アクターズ・コース 2015年度公演 『友情』
作・演出:鎌田順也(ナカゴー) 原案『堀船の友人』
出演 秋本ふせん 奥崎愛野 川島彩香 菊地敦子 佐藤 岳 綱木謙介 戸谷志織 トニー・ウェイ 豊田勇輝 深澤しほ 渕野実優 的場裕美 連 卓也 山田雄三 (映画・演劇を横断し活躍する俳優育成ワークショップ)
【NEW!】<日替わり出演>
古澤健(3/3 19:00) 松井周(3/4 19:00)
しらみず圭(3/5 14:00) 鈴木智香子(3/5 18:00)
四方智子(3/6 14:00) 市沢真吾(3/6 18:00)
【NEW!】応援コメント随時アップ中!
映画美学校 | アクターズ・コース2015年度公演『友情』応援コメント
公演日程 2016年3月3日[木] - 3月6日[日]
3日(木)19:00★
4日(金)19:00★
5日(土)14:00/18:00
6日(日)14:00/18:00 ★=終演後アフタートーク開催〔30分程度を予定〕
*受付開始は開演の40分前、開場は開演の30分前。
*演出の都合上、開演後は入場をお待ちいただくことがございます。
【NEW!】アフタートークが決定しました!
★:終演後に、作・演出の鎌田順也とゲストによるアフタートークを開催いたします。〔30分程度を予定〕
3月3日(木)19:00
トークゲスト:九龍ジョー(ライター/編集者)、古澤 健(映画監督)
3月4日(金)19:00
トークゲスト:松井 周(演出家/サンプル主宰)、山内健司(俳優/青年団)、近藤 強(俳優/青年団)
チケット
予約・当日共
一般 2,300円 学生 1,800円
*日時指定・全席自由
*未就学児童はご入場頂けません。
チケット予約 ⇒ 友情 予約フォーム
会場:アトリエ春風舎
〒173-0036 東京都板橋区向原2-22-17 すぺいすしょう向原B1