映画美学校アクターズ・コース ブログ

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映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。アクターズ・コース俳優養成講座2021、9/1(水)開講決定!

「映画の生成過程を観察・体験する」/山田薫さんインタビュー

今回は「実技ゼミ」のうち、古澤健さんが講師を務める「映画の生成過程を観察・体験する」ゼミについて、実際に講義を受けているアクターズ・コース9期修了生の山田薫さんにお話をお伺いしました。

「映画の生成過程を観察・体験する」(古澤さんのゼミ説明より)

映画の生成過程を追体験することで、台本からどのように演技を組み立てるか、またその演技がどのように映画を作り上げていくかを議論していきます。教材としては、古澤の最近作で使用した、実際の台本・撮影録音素材および完成映画の一部を使用します。台本の読み合わせ、受講生各自の撮影による演技とラッシュの演技の比較をすることで、俳優ごとの台本の読み方の共通点と差異を議論します。さらに実際に各自に撮影録音素材を渡して編集も体験してもらいます。提出してもらった各自の編集ラッシュと、完成映画の当該場面を比較し、どのように演技が監督や編集部「見られるか」について議論をし、映画の中で演技が占める役割について考えてみます。ゼミを通じて考察したことについてのレポート提出があります。

f:id:eigabigakkou:20201213132209j:plain 山田薫さんプロフィール写真
——「生成過程を観察・体験する」というゼミなんですが。そもそもどういうゼミだったんですかね?

山田 昨日5回目(最終講義)が終わったんですけど。古澤さんも、「映画とはなんぞやっていう講座だったんだけれども、結局自分自身が映画っていうものを把握していない」みたいな結論で終わって(笑)。「映画を丸ごと理解する」みたいなところから、始まったんですが。

——それは哲学的なこと?どういうこと?

山田 「映画の中の演技」みたいなものが1つの柱としてあるのかな、講座の中で。舞台と映像でどう演技が違うかみたいな話がスターティングポイントの一つでした。ベースは古澤さんが今年撮った映画(『キラー・テナント』)を使って。それは石川(雄也)さんっていう男優を主演で撮ってたもので、撮影時に彼の演技を見て、古澤さんが「これだ!」て思ったらしいんですよ。もう、惚れ込んじゃう感じで。で、石川さんがそんな演技を披露できたのはどういうことだろうね、って。

——難しい。石川さんが演技をされている姿を見て、どこに感銘を受けたのかっていう点を話し合うっていうことですかね?

山田 あ、ううん。古澤さんからは「なんで石川さんが、あの時あんないい演技をしたんだろう、その、良い演技を引き出すにはどうしたらいいんだろうね」っていう話だった気がする。

——監督目線からの視点で。

山田 古澤さんは監督として、(俳優が演じやすい環境作りのために)本読みもちゃんとやって、役者さん同士でリラックスできるように顔合わせの時間をちゃんととって、とか最近そういうトライをしているらしいんですよ。それ以外にも、多分役者さんからも何かできることがあるんじゃないの?っていうところで。そういう現場側の用意以外に役者さんができることとして何があるか追求しようと。
 でも俳優は撮影時、シーンとシーンのつながりとか考えちゃうじゃないですか。そうすると役者さんがどんどんなんだか萎縮しちゃうように監督として感じたみたい。‥‥古澤さんに「違う」って言われるかもしれないけど。で、萎縮しないで、アドリブでもなく自然体で面白いものを役者が出せるようにするには、どうする?っていうところで「映画っていうのを丸ごと理解する」みたいな話に至った?いや、「そもそも丸ごと理解するっていうのは何なんだろうね」っていうのを講義の中でやっていた気がします。

——‥‥難しいですな。

山田 ごめん、まだよく分かってないんですよ。ちょいちょい出てくる古澤さんのキーワードで、一瞬「ああっ!」って思うんだけど、そこはマクロな話で。講座のテーマはもっと壮大だから。ちょっとずつ進みながら、立ち止まって吸収して、みたいな講座でした。例えば「この本もいいよ、この本もいいよ」って古澤さんが教えてくれた本の中に、福田恆存の『演劇入門』があって。「そういうことだと思ってない?映画作りって」「とりあえずカットだけ撮るために、この動きさえすればいいみたいなもんだと思ってるかもしれないけど。確かにそういう面もあるけれどね、でも違うんだよ」っていうことを古澤さんがおっしゃって、「君たちはどう思う?」って意見を交わすかんじ。

——最後の締めとしては、映画とはなんぞやってことだけど、古澤さんご自身もまだ把握しきれてないってところだったんだよね。

山田 うん。映画って今でも進化系だし、進化系っていったら映画館がそもそもなくなっちゃうかもしれない、このコロナ禍の影響で。みんなスマホとかで映像を見るようになったら、映画って形自体もなくなるかもしれない。映画っていうものができて、それこそまだ100年も歴史がないから、映画とはなんぞやって語れるほどの歴史がないし、みたいなこともおっしゃってた。‥‥なんか難しいな、何を学ばせてもらったのかうまくまとまらない。いや、面白かったんですよ本当に。本当に博学な方だから。
 あと「自分で語りたくなかった。みんなに考えてほしかった」っておっしゃることがあって。講義の時も古澤さんが一方的に喋ってるのを聞いてるって感じでもなかった。「じゃあ君たちはどう思う?一緒に考えようよ」ってなるんですけど。みんな「ん」って画面固まったりして(笑)。講義の中で、古澤さんが撮った映像を自分たちで編集するって言う試み、企画があって。それはなんでやるのかなって最初は思ってたんですけど、でもそれは多分、編集をどうやってやるかっていう学びでもありつつ‥‥それぞれ出来上がってくるものは違うじゃないですか。どこを切り取るか、切り取られるかっていうのは役者の演技次第っていうのがそれぞれの中で反映される。っていうのを分かって欲しかったんだろうなぁって個人的には思いました。

——じゃあ本当に、そういう編集の試みもあるけど徹底的に考えるっていう感じだったのか。

山田 うん、考える会。毎週本当に3時間どっぷり映画について語る会って感じだった。

f:id:eigabigakkou:20201213132339j:plainゼミで古澤さんが紹介した書籍:一部 

——例えば、深田(晃司)さんの講義(「俳優について考える連続講座〜演技・環境・生きること〜」)だったら、もちろんゼミの趣旨は違うんだけど、社会的に映画はどういう存在であって、文化芸術における映画の立ち位置とかを紐解いていくかと思うんですけど。古澤さんはとにかく、映画の中の俳優が占める位置とかをこの講義で考え続けたっていうことになるのかしら。でも、いい演技とか悪い演技っていう比較とか、そういう話ではないよね。

山田 違いますね。そこは多分、古澤さんの中で「正解はない」っていうのがあるからと思う。撮ってる現場と台本の中でのイメージ、撮影中のイメージ、そして編集の時で、それぞれイメージが変わるっておっしゃってたし。撮影時に良くても、編集の時点ではダメだとか使えないっていうのが出てくるじゃない?って思うと、いい演技悪い演技って言うのは一概には言えないので。じゃあ現場で「うおお、撮りてえ!編集でもこのシーンは使いたい」って思わせる演技と言うのはどこから生まれてくるのかっていうのを、追求する講座だったのでは?

——それ個人的にも知りたい。薫ちゃんは講義終わった現段階で、どういうふうに考えてます?

山田 多分、駒になるなっていう話なんだと思う。この前の、(「演技論演技術」で取り上げた)山崎努の話じゃないけど。言われた通りにこうやって動くんじゃなくて、まず本を読んで、どういう作品なのかって自分の中で作る。監督もこういうイメージなんだよってスタッフ、キャストにちゃんと共有しあう。で、現場で生まれる何かを吸収しながら役者は変化形で役を演じる。どんどん変化しながら作っていく柔軟さが欲しいって言うことなんじゃないかな。バチバチに決めて「これだけやりなさい」じゃなくて。話を聞いてたら、古澤さんが面白いと思う、こいつ使いたいなと思うポイントが、役者さんが無意識にやってる動きだったり、計算じゃなく‥‥「まぁ計算もあるのかな?」って言ってたけど、あと、自分がこう動くだろうと思ってたのにそれをしなかったときの動きとか、そういうのが面白い、使いたいって思うみたい、監督としては。
 だから、そういうふうに役者さんが動けるようにするにはどうすればいいのかなっていう感じで。それには、ものすごくリラックスできた現場を作るっていうのも多分あって。役者さんも気楽に自由に、あまり気を遣わず演ずることが大事なのかな。それこそ、すごい簡単な話でいうと、演技で、1回目で右から左へ動きをしたとしたら、2回目のテイクをする時も右から左へ動くじゃないですか。でもなんかそうじゃなくてもいいんじゃない?っていうくらいの話だった気がする。役に入っちゃったら。それは多分極端すぎる例だけど。

——今言った、シーンのつながりとかは役者が主体で考えるべきなのかな?って思ってましたね。特にアマチュアの現場だと皆バタバタしてるし、物の位置とかもみんなバタバタしてるから、自分で復旧させちゃったりとか。いや、本当はしない方がいいと思うんだけど。だからそうじゃなくてもいいってなると逆にそれはそれですごい変な感じになっちゃいそう。でも、確かにその域までいっちゃえば面白いのかもしれない。

山田 でも、そういうのを実際にやったら怒られそうだけど(笑)。

——怒られますよー(笑)。さじ加減もあるんでしょうけどね。例えば、反復できるまでその動作をやっておいて、その義務を考えなくてもいいところまでにしておくとか‥‥役者としてはそういうやり方もあるのかな。もうそれは演技の話になっちゃうけど。

山田 現場の雰囲気で「あ、こいつふざけてやってるんじゃない、真剣にやってる」ってなって、周りもちょっとそういうミスに気づかないくらい真剣になる時ってあるじゃない?熱くなる時。そういう状態を作るのはどういうふうに準備すればいいんだろうねっていう話だったのかも。その方法が分かるといいよねっていう話だったんじゃないかなっていう気がしてきた。

——それはすごく知りたい。考えたいところでありますね。狙ってできることでもないような気がするけど。相互作用というか、自分の力だけじゃできない気がする。ていうところをやりたかったのかしら?古澤さん。

山田 うん。古澤さんも、結論は言及していないんだけど、そういうことかも。(『キラー・テナント』主演の)石川さんが、衣装合わせの時に「ネクタイをしたい」って言って、それを「(首からシュッという動作)こうやって出すんだよ」って言うんだって。で、「何言ってるのこいつ?」って思ったけど「じゃあ、ネクタイ持ってくれば?」って。でも当日、現場でそれをやってるのを見て、「あ!」って思ったんだって。「あ、すごく面白いから使おうぜ」って。自分で書いて自分でイメージできてるはずなのに、役者さんが持ってくるアイディアでこんなに面白くなるんだっていうことがあるから、ぜひぜひ小道具とか衣装のことをちゃんと考えて欲しい、ってことも言ってた。監督さんや現場任せにするんじゃなくて、そういうことも役作りの1つ、みたいなこと。でもね、断言しないのよ。「これだよ」ってピシッと言ってくれたら私も「こう言ってたよ」って言えるけど、古澤さんは「で、君はどう思う?」って入るから。それぞれでちゃんと考えて、それぞれで答えを出してねってことなんだと思う。
 そういえば講座中に短いシーンだけど台本を読み合わせることがあって。で古澤さんが「どういう風に脚本を読んできたか?」って質問なさって、生徒それぞれ答えるんだけど、古澤さんて「面白い!それは気づかなかった。」とか自然に言えちゃう人だから、講座中にも新しい発見がたくさんあって。頭良すぎる人ってほら、黒か白かじゃないってことわかってるじゃない。自分で言ったことが100パー正しいっていうことは絶対ないってわかってる。古澤さんてそういう方。だから講座でも一方通行にならなくて、受講生がぽろっと言ったことで、「あぁ、そういうふうに思うのもあるんだね」みたいな感じでどんどん話が発展していくんです。古澤さんの中で元々予定していた講義の到着点は、きっとあったんだろうけども、そこじゃないところに着地したかもしれない(笑)。

——まぁ、着地点はそれぞれの心の中に、っていうことでいいのでは?

山田 実際5回の講座で分かるわけないじゃんて古澤さんも思ってるんだと思う。映画の中での演技っていうものを自分の中で温めて、広げていくためのスタートラインを用意したぜっていう感じの講義なんじゃないかな。

——良い場でしたか?

山田 いや、面白かった。うん。だって古澤さんだもん。古澤さんって、本当なんか辞書みたいな人じゃない。まぁ深田さんとかもそうなんだけど。てか美学校の講師の皆さん全員そうなんだけど。知識が、止めどなく溢れだす(笑)。一つのことからいろんなことに連想してつながっていくから、これだけ言っておしまいですって絶対にならないで、話が波紋のように広がっていく。だから面白かったですよ。何を教えたかったんだろうっていうことはまだ一言では言えないけれども、現場で役者さんが映像のためにうまく演ずるには何が必要だろう?っていうことを考えるきっかけをくれた。それは5回の講義ごときで分かるわけないよね、だからちゃんとお前らこれからも考え続けていけよっていう講座だった。と思う。‥‥でも本当に、着地しちゃいけないんだと思う。今でも映画は進化していて、結論は付けられない話だから。

——逆に、「これが映画だ!ドン!」って言われてもちょっと引いてしまうかも、私。その人にとってはそうなんだー、とはもちろん思うけど。

山田 人それぞれ色々考え方あるものね。

——ちょっと話変わるけど。私昨日、「演劇 東京 学ぶ」でググってみたんですよ。何が出てくるんだろうって。その中で、「半年間1日3時間で演技について深く知るワークショップ」みたいなやつがあって。そこに「こんなに深く演技のことを知れました!」とか、「演技ってこういうことなんですね!」とか、「悩んでたことがこんなにスッキリ!」とか書いてあって。うわあ、って思っちゃって。私自身は「分かるわけないじゃん」っていう出発点から始まってて、もちろん学んだり得た知識はあるんだけど、演技ってそういうことか?って思ってしまって。だから古澤さんのゼミの話を聞いてて、あと今の話を聞いてて、私自身は信頼を感じるなとすごい思って。

山田 手っ取り早く時短料理みたいに作って、「電子レンジで本場中国の味!」みたいなので満足できるか、それとも本当に、本場中国に行ってこの食材もあるんだな、あんな風に作ったりするんだ、こんな台所なんだー、とか学びながらやるのか、どっちが好きかっていう話かもしれない。

——レトルトはね、味は一緒だからね。同一だからね。

f:id:eigabigakkou:20201213132720j:plainウンゲツィーファガーデン/ミーム『窓の向こうシアター』一場面 

山田 全然話変わるんですけど、昨日兵藤(公美)さんのお芝居を見てきて。情熱のフラミンゴ。全然違うんですよ、兵藤さんが。『バッコス(の信女―ホルスタインの雌)』の時と。いやーもう、何つうの?沼ですね。

——ずぶずぶと。

山田 演劇っていうか、演技というか、沼だなーって。ハマったらもう、こうすればいいって答えは絶対ないだろうなーって。あと、古澤さんの講義を聞いて、言葉に変換できるものでもない気がした。

——おおー。‥‥考え続けるしかないんでしょうね。

山田 講義が終わって、自分たちは映画ってものをどう思っていたか、今回の講義で何を学んだかではなく、この講義を受ける前まで今映画というものはどうやって作られていたのかとか、映画に対するイメージはどうだったのかっていうのを書いてきてくださいっていう最後の宿題があって。多分振り返って、とにかく原点を振り返りながら進化していけっていうことなのかな?

——どう思っていたか。

山田 どう書けばいいのかなー。(古澤さんは)何が正しいっていうのはないっていう人だから「こういうことですか?」って聞いたら、「うん、そうかも」みたいな。で、「こう書けばいいですか?」って言ったら、「うーんそうかも?」みたいな(笑)。
 今回の講座って古澤さんの映画哲学講座だったのかも。終わりのない哲学。演技や映画的表現はもちろん、現場での相性とか信頼とかそういうことも全部含めて考える映画哲学。

——「これ」って言う言葉にはならないよね。例えば信頼を築く方法としてね、現場に入ったらちゃんと挨拶をするとかコミュニケーションの一環として何かをするとか、そういう箇条書きにはできるかもしれないけど。求めたい事は何かは、きっと何かもっとふんわりだよね。とっかかりとしてそういう術を持ち込んだとしても、求めたい事はこういう瞬間だぜ、みたいな。そういうことなのかしら?

山田 そういう感じな気がする。言葉に収まらないプラスアルファ。

——でも、現場ではどうしようもない時ってありますよね。撮影終了の時間が迫ってるみたいな時。そういう時ってもう、具体的な方向に得てしていっちゃうじゃん。じゃあ、こうして、こうして、こうしましょうみたいなことになっちゃうから。まあなってしまっても、そういう経験も生かしちゃえばいいんだろうか。

山田 監督さんにもよるんだろうね。「絶対この画がいる」って思ってる監督さんだったら、指示通り動くべきだし。でも古澤さんはもう、現場で起きるマジックみたいなものを尊重される方だから。そこを大事にする監督は「驚きをくれよ!お前ら!」みたいな感じに現場でなるんじゃないかな。で、そういう監督には、役者としてどうやったら驚きっていうか、ときめき?を提供できるかっていう話なのかな。‥‥漸くこの講義の意図が見えてきたかも(笑)。

——やった(笑)。でも、9期の講義で古澤さんの講義で撮影した時もさ。廣田(彩)ちゃんかな?あの子たまに宇宙人みたいな動きをしてて。廣田ちゃんに「それは考えてやってるの?」って古澤さんが言ったら、「いや、勝手に動きましたねえ」「じゃあ、それ面白いし使おう」みたいな話をしてたな。

山田 古澤さん、9期での撮影実習でも色んなアイディアが撮りながら浮かんでくる感じだったじゃない?そのアイディアが湧いてくる状態を役者さんにも見てほしいという事なんじゃないかな。そういえば『キラー・テナント』の話で、石川さんの話をたくさんされてた。石川さんは主演ということで、役者として盛り上がってて、すごく楽しそうだったんだと思う。で、楽しいからどんどんどんどん役作りにはまっちゃって「こういうのもしたい、こういうのもしたい、どう?どう?」みたいなのがすごい楽しかったんじゃないかな、古澤さん。だからそういう風にしてほしいんじゃないかな。して、とは言ってないけど。「どんどんどんどん積極的にこい、お前ら!俺を驚かせてみな!っていう体を作っておいて欲しいな、自分的には。でもそうじゃないかと思う監督もいるかもよ」っていう。
 (講義の)1回目は本当にそう、「映画をまるごと把握する」というテーマに基づきながら、雑談。2回目は、いただいた台本を本読み、みたいな。3回目はその、もらった台本で自分、3つシーン候補をもらって、その中で自分がやりたい場面を編集する。で、4回目はみんなの編集をみて、最後の講義は古澤さんのも見て、古澤さんがどうしてそういう編集にしたのか?みたいな話を聞いて。具体的にやったのはそういうこと。でもなんかいっぱい、それ以上に学びすぎて、もうなんなんだっていう(笑)。雑学が、でも、多かったかも。映画雑学が。そういうのも面白かったし、(「俳優の権利と危機管理」でも取り上げている)ハラスメントに関しても触れたりもした。なんか、そういうのを全部まとめた、全部一緒にした上での演技哲学講座だった。‥‥これでいいのかな?

——わかりやすく成果があればさくっと論じられるかもしれないけどね。でもアクターズ・コースってそもそもそういう場じゃないと思うし。「これだよ!」ってみんな言わないじゃないですか。

山田 言わない。でも参考書籍みたいなのを常に古澤さん出してきてて。すごい面白かったな。たくさん脱線するの、本当に。古澤さんの話が。それが面白い。あ、編集の課題の時はテクニカルな話をたくさん聞けた。

f:id:eigabigakkou:20201214130713j:plain山田さんが参加した郵送演劇 HOMESTAY AT HOME vol.1 『ハウスダストピア』

——一度、自分でも映像作って編集した時、「これってすごく傲慢な作業なのでは」と思ったりした部分がありましたね。「ここ、俳優の演技はいいけど変な光が入ってるし切ろう!」ってざくざく切ってたけど「これってすごい傲慢なのでは?」という思いがめっちゃ渦巻いてて(笑)。編集ってすごく面白いけど、役者の視点ではちょっと悔しい部分もあって。

山田 そうやって、演技もどんどん変わっていっちゃうじゃない?編集で。ってなると「演技とはなんぞや、って思っちゃわない?でもそこで諦めたりするんじゃないよ」っていう教えもあった気がする。役者さん、舞台だと生身になるじゃない?役者さん100%ってなるけど。映像になると、役者さんプラス入ってくるものがあるじゃない?編集とかも。でも、そこだけじゃないってわかってるからね!っていうメッセージだったと思う。

——優しい‥‥!!

山田 舞台の演技と、映像の演技ってところで、違うと思うけど、でも違わないところもあって、それってなんだろうねって話すことも結構あった。そこもやっぱり、答えは出なくて、みんなで考え続けようって結論だった気がするけれども。古澤さんの撮り方と編集を見たら、シーンを長回しでバーっと撮って、で、また違うところにカメラ設置して長回しで撮って。で、いいところを拾っていくってのが結構あって。私は長回しで撮ると、長回し尊重したい派になっちゃうのね。演技っていうのを舞台でしかちゃんとやってないからだと思うけど。私はそういう編集の仕方をしたの。でも、古澤さんのをみたら、長回しで撮ってるのも、もうバッサバッサバッサ切って、いい表情したのとか、いい動きをしたってのをどんどんつないでいくの。そのシーンが激しいシーンだったっていうのもあって、アクションっぽくしたかったっていうのもあるんだと思うけど。で、「ああ、確かに演技切られてる」と思って(笑)。けど、つなげる要素をもっともっと出して欲しいんだろうな、って感じました。ここを使いたいと思わせる演技をするためには、どうしたらいいのか、何が必要なのかを考え続けてねと。だからなんか、この講座について語ろうとしてもまとまらないんだと思う。現在進行形で終わることのない探究だから。だからこれは考えるためのスタートラインを作ってくれた講座なんだと思う。で、そうね。まいまいが言った通り、ものすごく映画美学校っぽいんだと思う。ずっと考え続ける、勉強し続けるのが好きな人たちが集まる場所じゃない?飽くなき追求をしたい人たちの集団だから。だからこそ終わりがないっていうか。で、こういう書籍もある、こういう映画もある、って教えてもらって、そこで自分がピンときたところから、進めればいいのではと思うんだけど。でもね、映像に出るチャンスが。なかなかね。
 ちょっと脇にそれるんだけど、古澤さんがオーディションの話とかもしたの。「どうやったら売れるようになる?」って役者さんたちによく聞かれるんだって。で、最近言ってるのは「一緒に育つ仲間を見つける」って話をしてた。言葉選びがちょっと違うかもしれないけど。山下敦弘監督の名前を出して。(彼は)結局、大学の時に出会った仲間で無名時代からずーっとやってるんだって。役者さんたちも。で、そういうのの集まりでずっと仲良く撮れれば、それが一番、みたいな。すでにある集団の中に入っても、うまくいかないんじゃない。もうできあがってる感があるから。だったら、仲いい人たちで集団を作るのが一番、的な。

——ものすごくそれ、理想。素敵。

山田 いい作品に出たいから、オーディション頑張るとかっていうよりは、仲良い人たちを探す、出会うみたいな方が大事だよって。そうやって現場の雰囲気を作るのも大事なんだって、そんな風に私は解釈したのだけれど。役者が演技でサプライズを提供するためにはどういう状態であればいいか。何が出来るかっていうのは役者の役作り以外にも現場の雰囲気ありきみたいな。

——でも難しいよね、仲間を探すのも。できたら一緒の立ち位置で考えられる団体、仲間が欲しいなって思う気持ちはずっとあるな。

山田 難しいよね。

f:id:eigabigakkou:20201213132948j:plain山田さんが来年やろうと思っている企画:一景 

——じゃあそろそろ、時間も頃合いですね。今後の展望とかありましたら、ぜひ。

山田 私、演劇始めたの去年じゃない?本橋さんのリーディング公演(『ごめんなさいの森』)に参加したのが去年の7月なのね。3日間のワークショップで。2日間練習して、1日本番を吉祥寺シアターでやるっていうのがあって。その打ち上げで「えー、すごい楽しかった、またやりたい」って言った時に「映画美学校が明後日が締め切りだから、応募してみたら?」って言われたのがきっかけだったの。それまで観る側でやったこともなかったのに、今となったらどっぷりはまっちゃって。役者とはなんぞやみたいな哲学を考えたりして、本読んだりして。これから多分、どんどん沼にはまっていくんじゃないかな?
 講師のみなさん、それぞれ色が違うんだけど、根底のところは「絶対これをやめないで追求していこう」っていうのはプロ意識であるじゃない?特に無名の役者って立ち位置がとっても微妙だと思うの。不安が常にあるし、このままやっていいのかなっていうところで、ぎりぎりでその場にいるじゃない。よっぽど売れてない限り。でもそういう不安がアクターズ・コースの講師たちってないんだよね。実はそんなことないんだろうけど、自分の可能性を信じるって信念があるの。今回の古澤さんもそういう前提で話してたのね。ということは、まずは、自信を持て。根拠がなくても役者であるということに自信を持って勉強を続けていきなさいよ、、追求をしていきなさいよってメッセージを勝手に受け取ったので、何かに出る出れないかかわらず、自信を持って演技の勉強は続けていきたいと思います(笑)。
 映画美学校修了後、コロナもあって暇になるかなーと思いきや、なんやかんやで結局、まいまいとやったり、あと本橋さんと音の企画(郵送演劇 HOMESTAY AT HOME vol.1 『ハウスダストピア』)やらしてもらって、その後ウンゲツィーファガーデン/ミームやって、ミーム関係でミームで友達になった子と映像作ったり、色々やらせてもらってます。多分こういう感じで続けていくんじゃないかな。あとは演劇で食える問題をなんとか解決したいと思ってる。役者で食える問題、食っていけるようにする問題ですね。

——わかる。制作やってたのもあるので、それは20代の頃からずっと考えてる。あと、搾取されずにやる方法。

山田 難しいねー。でも諦めたくないな。考えよう。なんか違う形で、「この手があったか!」ってやりたいね。 

 

山田薫(Yamada Kaoru

東京出身。映画美学校アクターズ9期

 

 2020/12/3 インタビュー・構成:浅田麻衣