映画美学校アクターズ・コース ブログ

映画美学校アクターズ・コース ブログ

映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。アクターズ・コース俳優養成講座2023、9/1(金)開講決定!

【応援コメント!】映画監督・脚本家の高橋洋さんより!

今回は映画監督・脚本家で、映画美学校フィクション・コースの講師の高橋洋さんより応援コメントを頂きましたので掲載致します!

f:id:eigabigakkou:20180205152045j:plain

「映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座2017」受講生が出演、映画美学校フィクション・コース受講生がスタッフ、そして現役の映画監督であるフィクション・コース講師4名がそれぞれ監督し、短編映画を創り上げた「ミニコラボ実習」。

今回は高橋さんの作品に出演した4名について「それぞれの印象と今後に期待すること」を寄稿頂きました!ありがとうございます!

 

=======================================

 

『アウグスト・ストリンドベリ全集 生霊人間』に出てもらって

 いや、出てもらってというよりは、アクターズの面々がこの異様なタイトルの映画を生み出したと言ってもいいと僕は思ってるのだ。

f:id:eigabigakkou:20180205152155j:plain

 だいたいそもそものきっかけは湯川紋子さんが生霊を飛ばしたことがあると言い出したことにあった。本人にその自覚はなかったが、話を聞くと飛ばしたとしか思えない。これでどんな映画になるか方向性が決まった。湯川さんは吉本の芸人出身で持ち芸が貞子のパロディだという。僕とは不思議な因縁としか言いようがない。もっとも僕はロケハンで見つけた心霊スポットがすっかり気に入って、ここに湯川さんを立たせようと思ったのだが、彼女の大反対にあった。「私、怖いものがないんですよ」と断言してたのに、よくよく聞くと普段から塩を持ち歩いているらしい。むちゃくちゃ怖いものあるじゃん! そういえば湯川さんは「年齢は秘密です」って言いながら、聞いてもいないのに年齢をカミングアウトするような、矛盾を生きている感じがあって、ひょっとしてこの制御できない何かが女優として大事なんじゃないかという気にされた。

f:id:eigabigakkou:20180205152223j:plain

  もう一人、この映画の方向性を決めたのは石山優太君だ。石山君にはにじみ出るような優しさがあって、初めは、これが写っちゃうと悪人は無理かなと思っていたのだけど、よくよく見てると時々悪い人の顔つきをする。何か深く裏切られた人がふっと浮かべるような表情だ。たぶんフィクションコース生たちもそこに反応したような気がする。彼らが書いてきたシナリオでは石山君はことごとく途中で死ぬ役だった。悲劇的な何か−−−ひょっとしたら東日本の人間ならではの−−−が彼には貼りついているのかも知れない。それで、俳優石山が今度こそ最後まで生きてる役をつかもうと劇団仲間たちとエチュードを始めたが、やっぱり死ぬ、というこの映画の最初の大枠を思いついた。

f:id:eigabigakkou:20180205152246j:plain

 那須愛美さんはいつも屈託なくニコニコ笑っていて、友達からもよく、あんたいつも笑ってるねと言われるらしい。でも一番最初の顔合わせの時、那須さんには『予兆 散歩する侵略者』で東出昌大さんが演じた宇宙人をやって貰ったのだ。これが怖かった。『光る眼』という侵略SF映画の古典に不気味な子供たちが出てくるのだが、あの中に混ざっていてもいける感じだ。もっとも彼女の場合は芝居が安定していることはすぐに判ったので、そこに裂け目を入れるような、ベースで暗いものを見つめていながら感情に起伏がある役柄にしたかった。当初はアイドルの役にしようというアイデアも出ていて、これもアイドルが持つ二重性を彼女の中に見出していたからだと思う。

f:id:eigabigakkou:20180205152308j:plain

 釜口恵太君は見つめているうちに誰かに似ているなという感覚がやってきた。一体誰なのか……こういうモヤモヤした感覚がやってきた時は、無理に思い出すよりモヤモヤのままに従った方がいい。閉じこもりがちの役が多いと最初の顔合わせでも言っていたが、僕が感じているのはただ暗いのではなく、普段はまっとうに振舞っていてもベースの部分でどうしようもない暗い衝動を見つめてしまっているような人物だった。その意味で那須さんに見出したものに近い。この映画の大元にあるのはストリンドベリの戯曲『ペリカン』で、それはロケ場所の事情でやめにしたのだが、ラストで兄妹が悲劇的な最期を迎えるこの戯曲が頭に浮かんだのも二人のキャラクターに導かれた面が多分にありそうに思える。

 さて、撮影が始まって意外だったのは、俳優陣は自分の役がどんなキャラクターなのかまるで質問しようとしないことだった。我ながらわけの判らないシナリオを書いたと思うのだが、ホン作りからずっと立ち会っていたせいだろうか? いや、彼らの役へのアプローチは何かを理解した上でそれを達成するといったものよりも、その局面局面での感情を前後の整合性とか関係なく表出する自由なものだったように思う。たとえば那須さんは兄のどうしようもなさを冷然と見つめていながら、兄に泣きつく場面ではまぎれもない肉親への思いをぶつけていた。そういう矛盾に満ちた表出を通して彼らは役の顔になって行った。釜口君が買い物から買ってくる何気ない芝居で、彼の顔はもはや普段の釜口君ではない役の顔になっていた。その時、僕は、あ、佐藤浩市に似てたんだと気づいた次第である。石山君は物語全体をまとめるポジションに立ちながら、それとは全然違う振り幅で、後ろ暗い企みに加担している人物になっていった。そして湯川さんはあるシーンで異常に白い顔で出現し、まるで湯川さんではない別人が画面に紛れ込んでいるような、生霊テーマそのものみたいなザワザワ感をスタッフに呼び起こした。もっとこのシーンはキャメラマンが懸命にカラコレで人肌に近づけ、湯川さんに戻したけど。

 ミニコラボのお題は、出演者全員が互角に絡むようなドラマにするというなかなか難しいものだったけど、僕はもともと誰が主人公なのか判らない、脇の人がいつのまにか主役を食ってしまうようなアナーキーなドラマが好きだった。彼らの自由なアプローチのおかげでこの映画ではそんな世界が自然と生まれたような気がする。

f:id:eigabigakkou:20180205152426j:plain

 さて、来たる修了公演だが、僕はその前に、まだ映画が出来たばっかりのタイミングで平田オリザさんのゼミの発表会で全然違う役を演じる彼らと出会う機会を得た。それは不思議なくらい一人一人の役を模索したミニコラボの営みと繋がっていた。ヒーローショーのショッカー隊員の役を演じた湯川さんのストレッチしながら屈託なく喋る感じは、恐ろしい生霊でありながら「おーい」と明るい声で河原にやって来る伸びやかさを思い起こさせた。たぶん湯川さんでなければ僕はこんなシーンを思いつかなかっただろう。僕は彼ら一人一人が本能的に呼吸している「自分を生かす術」に惹かれ、導かれていたのかも知れない。修了公演もまた自分が彼らの何に惹かれていたのかに改めて気づける場になるんじゃないかと思っている。

 

高橋洋 Takahashi Hiroshi

1959年生まれ。森崎東監督のテレビ作品『離婚・恐婚・連婚』で90年に脚本家デビュー。『リング』『リング2』(98、99 中田秀夫)、『リング0 バースデイ』(00 鶴田法男)が大ヒットを記録する。

他の脚本作品に『女優霊』(95 中田秀夫)、『インフェルノ蹂躙』(97 北川篤也)、『復讐 運命の訪問者』『蛇の道』(96、98 黒沢清)、『発狂する唇』『血を吸う宇宙』(99、01 佐々木浩久)、『おろち』(08 鶴田法男)など。04年、監督作『ソドムの市』が公開。以後『狂気の海』(07)『恐怖』(09)『旧支配者のキャロル』(12 映画芸術ベストテン4位)と監督作が続く。

著書に「映画の魔」(青土社)、稲生平太郎との共著「映画の生体解剖-恐怖と恍惚のシネマガイド」(洋泉社)がある。

 

最新監督・脚本作『霊的ボリシェヴィキ

2018年2月10日(土)、渋谷・ユーロスペースで公開!

www.youtube.com

 

+++++++++++++++++++++
映画美学校アクターズ・コース 2017年度公演
「S高原から」
作・平田オリザ 演出・玉田真也(玉田企画)

【玉田真也(玉田企画 / 青年団演出部)】
平田オリザが主宰する劇団青年団の演出部に所属。玉田企画で脚本と演出。日常の中にある、「変な空気」を精緻でリアルな口語体で再現する。観る者の、痛々しい思い出として封印している感覚をほじくり出し、その「痛さ」を俯瞰して笑に変える作品が特徴。

出演:石山優太、加藤紗希、釜口恵太、神田朱未、小林未歩、髙羽快、高橋ルネ
          田中祐理子、田端奏衛、豊島晴香、那木慧、那須愛美、本荘澪、湯川紋子
        (映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座2017)
          川井檸檬、木下崇祥

舞台美術:谷佳那香、照明:井坂浩(青年団)、衣装:根岸麻子(sunui)
宣伝美術:牧寿次郎、演出助手:大石恵美、竹内里紗
総合プロデューサー:井川耕一郎
修了公演監修:山内健司、兵藤公美、制作:井坂浩

======================

公演日程:2018年2月28日(水)〜3月5日(月)

2/28(水)19:30~
3/1  (木)19:30~
3/2  (金)15:00~ / 19:30~
3/3  (土)14:00~ / 19:00~
3/4  (日)14:00~
3/5  (月)15:00~
※受付開始は開演の30分前、開場は開演の20分前
※記録撮影用カメラが入る回がございます。あらかじめご了承ください。 

チケット(日時指定・全席自由・整理番号付)
前売・予約・当日共
一般 2,500円 高校生以下 500円
資料請求割引 2,000円 

※高校生以下の方は、当日受付にて学生証をご提示ください。
※未就学児はご入場いただけません。
※資料請求割引:チケット購入時に映画美学校の資料を請求してくれた方に500円の割引を行います(申し込み時に資料の送付先となる連絡先の記入が必須となります)。

チケット発売開始日 2018年1月8日(月・祝)午前10時より

<チケット取り扱い>
CoRichチケット! https://ticket.corich.jp/apply/88312/

<資料請求割>
映画美学校の資料を請求いただきました方は当日2500円のところ、2000円で鑑賞いただけます!
下記よりお申込みください。お申込み後、映画美学校より随時学校案内などの資料をお送りいたします。

映画美学校アクターズ・コース資料請求割引申し込み専用フォーム 

会場
アトリエ春風舎
東京メトロ有楽町線副都心線西武有楽町線小竹向原」駅 下車
4番出口より徒歩4分
東京都板橋区向原2-22-17 すぺいすしょう向原B1
tel:03-3957-5099(公演期間のみ)
※会場には駐車場・駐輪場がございませんので、お越しの際は公共交通機関をご利用ください。

お問い合わせ
映画美学校
〒150-0044 東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS B1F
電話番号:03-5459-1850 FAX番号:03-3464-5507
受付時間(月ー土) 12:00-20:00