『革命日記』演出家インタビュー:山内健司氏
こんにちは!
アクターズ・コース2018年度公演『革命日記』の制作を担当します浅田です。このブログでは、今後アクターズ生の情報や、応援コメントなどを掲載していく予定です。どうぞよろしくお願いします!
『革命日記』1月28日より稽古が始まりました。シーンが少しずつ積み重なり、丁寧に、そして微細に、この作品の全容が作られていっています。
今回は、『革命日記』の演出である山内健司氏へのインタビューを掲載します!
〈プロフィール〉
84年、ICU在学中に劇団青年団に参加、演劇をはじめる。平田オリザ「現代口語演劇」作品のほとんどに出演、代表作『東京ノート』はこれまでに15カ国 24都市で上演された。演劇を劇場の中だけのものとしないように、多彩な俳優活動を継続中。ワークショップなども積極的に行なっている。
映画出演作として 『歓待』など。平成22年度文化庁文化交流使としてヨーロッパで活動。
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—今回山内さんが演出になった経緯を教えてください。
去年話して、アクターズ講師が演出をやってみよう、ということになりました。それは演技を学ぶ人達により近い立場でやってみよう、ということです。やはり演技って学んですぐにうまくなるようなものじゃないじゃない? アクターズ・コースが半年になって、これで4年目なんですけど、昔高等科まであったのが半年になっちゃって。そんな半年で演技がうまくなったりするようなもんじゃないっていうこともあって。逆に言うと、これから俺たちは演技をがっつり学んでいくぞっていう、キックオフなものにしたいなと。これからの志を示すのに、修了公演が大きなきっかけになれば、と思いますね。
—『革命日記』は、初演から見られてますか?
『Fairy Tale(※注1)』から大体見てます。
※注1:1997 年、平田オリザ氏が書き下ろした作品。『革命日記』の元になった。
—『革命日記』は若手公演という印象があるのですが、『Fairy Tale』も若手公演というものだったんでしょうか?
いやいやいやそんな、『Fairy Tale』は「P4」といって、山の手事情社と、ク・ナウカと花組芝居と、青年団の4つの合同公演です。
—全然ガツガツでした(笑)
白塗りしてたかな? 当時の山の手事情社のテイストだったと思います。
—2008年に、現在アクターズ講師でもある近藤さんが出演されていた『革命日記』はどんなものだったんでしょう?
若手公演として、初演は春風舎ですね。評判も良くて、座組みの雰囲気もすごくよかった。これで更に回れたらいいねって話になって、本公演になり、海外を周り、いわば出世魚のような作品だなと。
面白かったよ。平田作品は「日本人の姿」みたいなものを描く作品がすごく多いんですよ。どの作品もそうっていえるかもしれない。この間の『ソウル市民』もそうだし、『日本文学盛衰史』もそうだし。『革命日記』も正しくその系譜ですね。日本人の集団の姿ってものを描いた作品ですね。
平田の作品の再演って面白くて、息の長いものがすごく多いです。20年前の作品でも、今上演すると、鏡のように日本人の姿を写すってことがあります。最近でびっくりしたのが、『南へ』っていう作品がありまして。1990年初演なんですけど、それを3年くらい前に若手公演でやったときに、2010年代半ばの日本の姿がそのまま映るっていうのがすごい不思議な感じがして。もう2、30年前の作品なのに。『革命日記』も、きちんと丁寧に上演したらおそらく2019年の日本人の姿がやはり映る・・そういうことは感じてます。・・どうだ、立派なインタビューだろう?(笑)
—立派ですよ(笑)
できるんだよ、こういうことも(笑)
—あれ、演出ってこれが初でしたっけ?
正確に言うと、1987年に一回だけやってます。青年団の上演履歴のHPにも載ってるんだけど、『欲望という名の林檎』を青年団の若手公演でやってますね。
—それはオリザさんが書いた?
書いた。『南へ』の基になった作品ですね、実は。アルチュール・ランボーの『酔いどれ船』っていう詩があって、それをモチーフにした作品です。
—ではそれ以降の、満を持しての2019年演出ということで!
満を持さないよ(笑)まあその時以来ですから、ほとんど初めてじゃないの?その時は現代口語演劇の影も形もない・・いや、影くらいあったか。
—現代口語演劇は90年入ってからでしたっけ?
そうね、その翌年くらい、僕が若手公演やったその次の作品くらいからかな。『光の都』って作品があったんですけど、その時初めて、「普通の声でお芝居しようよ」っていう。要するに、普通の声で芝居しなかった最後の時代に演出やりました。
—からの、2019年に演出を。
32年ぶり!イェーイ。
—ずっとオリザさんと一緒に活動している、っていうのもあると思うんですが・・今回オリザさんの『革命日記』を作品に選んだっていうのはどういった理由からですか?
一番のモチベーションは、平田戯曲をやりたいっていうのがありましたね。それが大きくて。あと、僕が『革命日記』に出てないっていうのも一つあります。考えたんですね、僕が出演していて隅々まで知ってる戯曲か、そうじゃない戯曲にするかってことを。で、一応、出てないものを選ぶのも面白いかなっていうのがあって。
ただ、やはり、平田戯曲を一回演出としての立場でやってみたいっていうのが、僕の個人的な欲望であります。
あと、この4、5年、俳優っていうことにこだわらず、自分でやったらいいじゃんっていうことをすごく思ってて。いい歳して今さらなんですけど。別に誰に怒られるわけじゃない、自分で書いてやったらいいし、誰に怒られるわけじゃない、自分で演出して自分でやればいいっていう、なんでも自分でやろうっていう気持ちが強くなって。その一環として、演出をやってみようっていうことです。
—オリザさんの演出、俳優の山内さんはどういったものを感じていますか?
平田がやってる演出っていうのは、言葉の振付に近いものがありまして。有名な「そこで2秒間を空けて」とか、あるいは「そこで語尾を上げてください」みたいな。
俳優の作業としては、「なんだろう? なんか言われてる・・・」みたいな、あとは自由にやっていいんですが。言葉がなんていうかな・・・「見える化」といいますか、聞こえるようにするといいますか。「見える化」のほうがイメージに近いかな。言葉を正確に「見える化」していけば、今回の作品も2019年の日本人が映るんだろうなっていう確信はあります。アクターズ2期の修了公演でも松井くんが『革命日記』をやってる(※注2)んだけど、その時松井くんの演出の方針としては平田演出のコスプレをする、みたいなことを言っていたのね。それの前にも、アクターズ1期の修了公演が『カガクするココロ』で、これも平田オリザ作品を松井くんがやったんだけど、その時は更にすごくて「平田のように演出をやってみよう」っていうのが松井くんの一つの演出のモチーフだったね。あれ面白かったね。
ただ、今、松井版『革命日記』をビデオで見てみると、やっぱり、松井演出だなあっていう感じが実は大きいですね。主にその言葉を一回肉体化、自分のものにしていくっていうときに、言葉を身体になじませていくっていう過程が、当時の松井くんの演出を強く感じました。守られた振付のように動く、喋るってこととは全然違う。まあ、青年団もそうなんですけどね、松井くんの場合はさらにそれが進んで、非常にノイジーに、一度正確に言葉とか台詞を入れた上で、俳優の演技をなんていうか、身体になじませるって言い方でいいのかな・・・・いや、俳優がなじむかもしれませんね。ちょっと抽象的なんですけど。それが松井くんっぽいなって今見ると非常に思います。
※注2:2013年、アクターズ・コース第2期初等科修了公演として『革命日記』が上演された。演出は、松井周さん(サンプル主宰)
—では、今回山内さんはどのように『革命日記』及び受講生にアプローチしようと考えてらっしゃいますか?
演技の基本的なこと、そのシーンは一体なんなのか、このシーンは一体何が起きているのかっていうことをちゃんと考える。で、何が起きているのかっていうのを起こすために、どういうふうな構造、仕組みを作って演技をすれば起こせるのか、っていうことを丁寧につくっていく。演技をする構造を丁寧につくっていくっていう、割と基本的なことを強力にやりたいと思っています。そこはなんとなく熱くやって、とかさ、そこはなんか挫折感をにじませて、とかさ、雰囲気みたいなことではなくて。もっと演じるための言葉ってあって。演じるのに役に立つ言葉というか。
例えば、「その瞬間マウンティングしてるんだよ」とか、じゃあそのマウンティングするっていう言葉であなた自身はモチベーション持って演技できますか?っていうのを丁寧に探っていくみたいな。割と地道なことを基本的にやっていく。そういうことが作業の大部分を占めることではあります。それをやっていけば、おそらく、平田の戯曲は今の時代を写すんじゃないのかということも思うんですけども・・・あともう一つ考えることがないでもないです。
やっぱり今のアクターズ生だと、20代〜30代で、平田とは2〜30歳年が違う。そういう言葉を喋るにあたって。たとえばコスプレのように昔の学生運動の人達に手を伸ばしていく、演じるのか、そういうことでもないような気がしていて。『革命日記』っていう作品を2019年にどうやって成立させるかっていうときに、今であること、その人達そのものであること、今の「革命する身体」みたいな、直接性ですね。それを見つけたいっていうことは考えますね。本当の意味でのアップデート。今の出来事にしていこうって、思ってます。
【了】
(インタビュー・構成:浅田麻衣)
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映画美学校アクターズ・コース 2018年度公演
『革命日記』
作:平田オリザ 演出:山内健司
〈出演〉
青柳美希、五十嵐勇、奥田智美、斉藤暉、佐藤考太郎、柴山晃廣、
浅田麻衣、釜口恵太、那須愛美、四柳智惟(以上、俳優養成講座修了生)
〈スタッフ〉
舞台美術アドバイザー:鈴木健介(青年団) 照明:井坂浩(青年団)
宣伝美術:北野亜弓(calamar)
演出助手:菊池佳南(青年団/うさぎストライプ)、釜口恵太、四柳智惟
修了公演監修:兵藤公美 制作:浅田麻衣、那須愛美 協力:青年団
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2019年3月6日(水)〜11日(月)
6日(水) 19:30
7日(木) 19:30
8日(金) 14:00/19:30
9日(土) 14:00/19:00
10日(日) 14:00
11日(月) 14:00
※今公演は、2019年2月15日(金)〜3月11日(月)こまばアゴラ劇場にて開催されます青年団公演「平田オリザ・演劇展 vol.6」の演目ではございません。ご注意下さい。
※受付開始は開演の30分前、開場は開演の20分前です。
※記録撮影用カメラが入る回がございます。あらかじめご了承ください。
〈チケット〉
予約・当日共
一般:2,500円
U-26(26歳以下):1,000円
資料請求割引:2,000円(詳しくは映画美学校ホームページをご確認ください)
※26歳以下の方は、当日受付にて年齢が確認できる証明書をご提示ください。
※未就学児はご入場いただけません。
※資料請求割引:チケット購入時に映画美学校の資料を請求してくれた方に500円の割引を行います!(申し込み時に資料の送付先となる連絡先の記入が必須となります)
<チケット取り扱い>
CoRichチケット! https://stage.corich.jp/stage/96711
<資料請求割引>
映画美学校の資料を請求いただきました方は当日2500円のところ、2000円で鑑賞いただけます!
下記よりお申込みください。お申込み後、映画美学校より随時学校案内などの資料をお送りいたします。
〈会場〉
アトリエ春風舎
東京メトロ有楽町線・副都心線/西武有楽町線「小竹向原」駅下車
4番出口より徒歩4分
東京都板橋区向原2-22-17 すぺいすしょう向原B1
tel:03-3957-5099(公演期間のみ)
※会場には駐車場・駐輪場がございませんので、お越しの際は公共交通機関をご利用ください。
〈お問い合わせ〉
映画美学校
〒150-0044 東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS B1F
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