月刊 兵藤公美 with 四方智子 12月号(最終回/全3回)
「ラジオのようなブログ記事」──それが『月刊 兵藤公美 with 四方智子』。
俳優・兵藤公美(映画美学校アクターズ・コース講師)が、映画美学校事務局の四方智子と共にお話する企画です。
第5回の12月号は「私、野菜が不足してる」という公美さんの一言から紆余曲折あって、何故か台湾料理屋さんで鍋をつつきながらの収録となりました。演劇・映画の10年先の話やら、デジタル化の影響の話やら、全然関係ない話やら……今回も毎度のごとくのフリートークです。
──で、話を戻しますと、フィルムだったらまた新たに作り直すのに、編集の修正も含めると、ものスゴいお金と時間が掛かるんです。だから「試写も、昔は劇場と同じはずだった」ってことですよね?
四方 当時はそもそも「その後で直す」っていう概念がないわけですよ。「もうフィルムに焼くよ!?」っていうところで最後の調整は終わっているはずなんです。
兵藤 それがいまは?
四方 いまはデジタルだから……
兵藤 ああ! そういうことか!
──直せちゃう。
四方 いつでも戻れるんですよ。
兵藤 そっか。文明の発達によって苦しむ人が出て来てるわけね。
四方 そう。
兵藤 じゃあ四方さん、私、海老食べていい?
四方 どうぞ。
兵藤 やったー。
四方 それでいま、スゴく困ってます。
兵藤 デジタルになったことでいままでとルールが変わっちゃったってことだ。ルールっていうか常識が。
四方 粘れるんですよ。さすがに、お客さんに観せる時に毎回バージョンが違うのはどうかと思うっていうのはありますけど……。そんな感じで、1度完成させても、戻れるんですよ。なぜなら簡単に完パケ出来ちゃうから。
兵藤 じゃあもう映画は、どこで完成かはなくなっちゃったってことね!
四方 えっと、いまのところ、まだなくなってはいないんです。というのは、非効率なんで、上映館が多い作品であればあるほど、1回直したらまたその後新しい上映用の素材を作って、それをまた送らないといけないじゃないですか。その費用だけでめっちゃ掛かりますので。だから、上映館の多い作品に関してはまずそういうことはないんですけど、自主映画界はもう鬼のようにあると思います。
兵藤 あー、そっか。
──都内の単館映画館1カ所でしか掛からない、ブルーレイディスクが1枚あればいい、じゃあそれを差し替えれば出来るでしょ?って論理なんです。1回でも業務で映写をやったことがある人間なら分かりますけど、それは上映チェックで音量とかも再確認が必要だし、そもそも最後まで問題なく再生出来るのかのランニングチェックも必要になるということなので、上映に責任は持てなくなるんです。それを分かっていないからなのかなんなのか知りませんけど、「いい状態でやりたい!」っていう感情が先行しているから、そもそもそういう想像すらしようともしていないんだと思います。
四方 「明日からこれでいいすか?」みたいな。
兵藤 なるほど。へぇー! なんか面白いね。映画は今までは出来なかったけど、やっぱり観てて監督がこうしたいと思ったら……
四方 変えることは出来ちゃいますね。
──作り手側だとそう思うんでしょうね。自分もそっち側だったらそういう気持ちもなきにしもあらずですが、それで多大なる負担を背負う人間が出ますよ。
兵藤 演劇もたまにある。でもそれは、初日が明けたら大きい変更はもちろん出来ないんだけど、例えば何かのセリフが足されるとか、そういうことってあるから、映画もそれが出来るようになっちゃったってことだね、ある意味。
四方 だから区切りがないんですよ。「ここで終わり」がないんです。
兵藤 終わらせなくてよくなっちゃったんだ。
四方 そうそうそう。しかもいまはもう監督1人でも編集出来ちゃう環境があるので、延々続いちゃう。それに対してどうなんだろうと思うところは、私は未だにスゴくあります。
兵藤 うーん……そこはなんか物議を醸しそうですなぁ。
四方 でもそれをやってくるのは、基本的に自主映画とか低予算作品に関わる人たちしかやってこないので、物議にすらならない。
兵藤 そうか、それはそうだね。お金が絡んでたらそんなこと出来ないもんね。
──単純にそれは契約として筋が通っていない話ですよね。「この日までに完パケを納品して下さいね」「こちらの上映データで最適になるように設定して責任を持って映写します」って約束しかしていないのに、そこに作り手の都合を押し付けるのはおかしい。それはまた別の話です。だから最初に、自主映画だろうが低予算作品であろうと「ビジネス」として、ちゃんと何事も契約書・文面で双方合意しておかないとダメだと思いますよ。シネコンだったらねぇ、全国何十館もDCPを送っているのにもう1回納品って話にはなりづらいですけど。
四方 でも最悪、出来ないこともないんですよ。なぜなら、いまはハードディスクを1個1個郵送するからお金が掛かるじゃないですか。通信がちゃんと網羅されれば、ここからダウンロードして下さいで済んじゃうから。
兵藤 あー、そういうこと。
四方 そうすると、差し替えがより簡単になっちゃうから、メジャーの作品もそういうことになっちゃう可能性もあります。
兵藤 じゃあこれ以上発達してほしくないね。
四方 う〜ん…………
兵藤 でもそんなことないのか。新しい映画の世界が切り開かれるのか。新しい映画の価値観が。
四方 だから「毎週毎週バージョン違います」みたいなのでお客さんを入れるみたいな、そういうビジネスモデルが出来るのかどうかですよね、分からんけど……蟹頂き!
兵藤 それってどうなのかなぁ〜。
四方 とは思いますよね。
兵藤 でもそしたらさ、なんかわからないけど、スゴく価値が下がりそうな気もする。「本物はどれ?」みたいな感じで。
四方 (笑)。でもなんか、昔でいうところの、公開版とディレクターズカット版みたいなことだと思えばそこまで違和感もないわけで。技術的にいうと、それを届けることが、実はスゴく簡単になりつつはある。
兵藤 そういうことか。でもそれをやるかどうかはまた別の問題。
四方 そうですね。どこをどう大事にするかで。
兵藤 そういうことだよね。機材的には可能ってことだよね。
四方 この間、DCPを検査している、ハリウッドとかのも全部調査・研究してる慶應大学の先生のお話を聞いたんですが、結局デジタル化した方がめっちゃお金掛かってるんですよ。
兵藤 フィルムより?
四方 うん。
兵藤 そういう欲望が出てくるから?
四方 手軽に始められるんですよ、デジタルっていうのは。ただ、1つのハードディスクが10年持つのか20年持つのか、まだ誰も知らないんですよ。
兵藤 未だに?
四方 だって現在進行形ですから。始まったのはまだ、たかだか20年ちょっと前からですから。だから、フィルムは100年保つっていうのは、実際に100年掛けて分かったけど、同じようにデジタルのハードディスクとかもその時間を掛けないと、本当に保つかどうかが分かんないんですよ。
兵藤 ふ〜ん。
四方 その上で、何かが壊れた時のためにバックアップを取らなきゃいけないということになったら、もういまは撮影データだけで結構大きいんですね、4Kとかも普通になっているので、容量がスゴいんです。その全部のデータを取っておく、プラス、バックアップも取っておいたとしたら、エラい量になるんですよ。そうするとお金掛かるじゃないですか。たとえ1個2万円のハードディスクでも、それが100個になったら200万円になるわけだし。
──10年後にそのハードディスクを起動出来るパソコンを持っているのかって問題もありますよね。windowのOSなんてしょっちゅうアップデートされますし、それで互換性がなくなる可能性もあります。macだと接続のためのUSBポートがなくなったりもしますし。
四方 そうそう。
兵藤 あー、なるほどねー。ちょっとショボい例だけど、プリンターを新しくしたらパソコンも買わなきゃいけなくなって「どっちも買うのかよ!」みたいなことね。
四方 (笑)。で、それは商売になるから、機器を売りたい会社が当然いるわけですよ。いままでwindows98で開いていたものが「もう保証しませんよ」ってことになったら、今度はまた新しいハードディスクにデータをコピーしなきゃいけない。そうなるとハードディスクを買わなきゃいけないじゃないですか。そうやってお金がかさんでいくんですよ、いまのところ。だけどフィルムって、ずーっと変わらなかったから、100年保ったんですよ。
兵藤 なるほど! なんかもう、スゴい金儲けの渦じゃないですか。
四方 学校の作品のアーカイブをどうしようか悩んでいた時に、フィルムだとなかなか上映する機会がないから、やっぱりデジタル化したいなと思うけれども、それがアーカイブにはならないという。だからアーカイブにするには、いまの技術ならネガからデジタルに出来るわけだから、取っておく意味でネガをちゃんと取っておくのは大事じゃないって感じで…………なんか今日、真面目な感じの話になりましたね。
──…………十分雑談あったので大丈夫だと思います(笑)。
四方 初回以上に何も考えてないで喋ってるから大丈夫かなと思って。
──そうか、こういう話、この間山形に出張した時に聞いたりしたんですね。
四方 そうそう。違う分野の人と話しててスゴい楽しかった。野村総研の人とかもいて。その人は、これから映画の配信、これからどうなる問題について話してたり。
兵藤 それはどう言ってたの?
四方 DVDが出てきた時にも「映画業界潰れる」とか騒がれてたけど潰れなかったから「いけんじゃん?」って。その人がそう言っていたというよりかは、それを聞いていたみんなが「まぁそんなに怖がらなくても大丈夫かも?」みたいな感じになってた(笑)。
──そういう技術革新みたいなので変わったことはありますか、演劇は。
兵藤 演劇で? チケットの予約とかは変わったけどね。
四方 照明の操作、あれはちょっと感動しました。パソコンで制御して全部やってるじゃないですか。
兵藤 そっかそっか。フェーダーとかね。でも、私が青年団に入った時に既にそれでやってたから。
四方 ウソ!?
兵藤 青年団はね。最初に入団して、新人はオペをやってたんだけど、ボタン1個押すだけだったよ。それはパソコンじゃなかったけど、卓で。
四方 卓はまだ分かるんですけど、パソコンはちょっと盛り上がった。
兵藤 ああ、いまはプログラミングするよね。確かにね、それは昔とは違うわな。
四方 そうじゃないと大変ですけどね。
兵藤 でもそんなに変わんないのか。でも、台本とかがさ、もうiPadだけ、みたいなのとかさ。今はまだ紙媒体にするけど。
四方 映画もそうなるのかなぁ。いまの映画の現場ってどうなんだろうね。
──この間バリバリの撮影部の人と話したんですけど、もちろんみんな紙媒体のものは持っているけど、iPadみたいなのを使っている人もいるみたいですよ。実際、僕がまだ現場に出ていた時に、CM撮影とかではそういう撮影部の人がいました。撮影部とかの機材もどんどん進んでいくから、スマホのアプリとかでステディーカムの制御とかしなきゃならないことも頻繁になったりするようですよ。
兵藤・四方 へぇー。
──録音部の人とかでも、どこがOKテイクだったかのメモとかをデジタルでメモしておいて、逐次クラウドに保存していたりする人もいますね。バックアップのためにもって。
兵藤 昔は全部メモ取っていたって感じなんだろうね。
四方 手書きでしたよ。じゃあスクリプトとかもそうなのかなぁ。もはやスクリプターがいる現場の方が少なそうだけど。
──大きな商業でなければ助監督がスクリプトもやらされてたりしますからね。
四方 でもiPadを買う気にはどうしてもなれない。
兵藤 私、iPad買おうと思ってて。
四方 言ってましたね。
兵藤 まだ買ってない。
──iPad買ってどうするんですか? ノートPCだけじゃダメなんですか?
四方 特に用途はないんだけど、ほら、パソコンより軽いじゃない?(笑)。メールがちゃっと打ちやすくなるかな、とか。でもいま使ってるスマホ大きいし、やっぱり文字を打つのは私はキーボード、なんですよね。だから…………なんだっけ、こういう、あの、スマホ特有の打ち方。
兵藤 フリック(入力)。
四方 それが未だに出来ないから、スマホで打つよりもパソコンで打つ方が100倍早いから、なんかちょっと込み入ったメールとか、海外に送らなきゃいけない英語メールとかはやっぱりパソコンになっちゃうし、とかね。
兵藤 そっかそっか。パソコン使わないからなー、ホントに。
四方 まぁ職業ですよ。仕事によって。
兵藤 私は本当に全てがiPhoneで出来ちゃうから。
──大学の授業の評価とかはさすがにパソコンでやるんじゃないんですか?
兵藤 成績入力ね。昔はスマホでは出来なかったんだけど、いまは出来るの。だから、前は家に帰ってパソコンでそれをやらなきゃいけなかったんだけど、時間があってやれる時にすぐ出来るようになった。
四方 スゴい時代。どうなるんでしょうね、10年後の劇場とか。
兵藤 10年後の演劇はそんなに変わんないんじゃない? 俳優がいないと演劇って基本、成立しないからさ。結構アナログだよね。
四方 映画はどうでしょうね。映画館、なくなると思います?
兵藤 みんなNetflix?
四方 私、10年後の自分に予言をしようと思うんですけど、シネコンが少なくなってると思うんですよね。
──おっ、その心は?
四方 シネコンで観る映画って、多分Netflixとかの配信でも両立出来るような気がするけど「ここに行かないと観れない映画」みたいなものが確立して来てくれないかなって、希望的観測ですけど。
兵藤 でもさ、そんなの東宝が許すかな?
四方 ねぇ、どうでしょうねぇ、分かんないけど。でもメジャーが配信事業を本格的に始めたら、一気にそうなるような。
兵藤 あー、そっかー。
──まぁ「どっちが儲かるか」で考えるんでしょうけどね、企業なので。
四方 そうそう。メジャーにしてもビジネス的に見るだろうから。配信はまだそんなにお金になっていないから躊躇しているのかもしれないけど、TV局はもう配信になってるから、いま。
──最近増えましたね、TVは。だから生放送とか報道とかよりも、配信でも見てもらえるドラマとかをとりあえず増やしているみたいですよ。
四方 だから舵を切ったらもうタタタタタターって行くと思いますよ。
兵藤 そしたら意外と単館が生き残っていく?
四方 う〜ん、ただかなりニッチなんで、あとはどこまで届けられるようになるかが勝負かな。局地的な部分がもうちょっと共存出来るようになったら、その可能性がありそうな気がします。
兵藤 でもさ、シネコンの映画と単館の映画ってはっきり分かれちゃってるじゃん。だから、シネコンがなくなったとしても、単館は影響を受けるのかな。
四方 割を食うとかって感じではない気がする。昔のように、ちょっと当たる映画はよりいい劇場に行くみたいなのが、いまはちょっと違くなって来てるから…………でも分かんない。私はいまその現場にいないから。でもやっぱりシネコンに行ってから観る映画を決めるっていう時代はちょっと過ぎたような気はする。
兵藤 そうだよね。
四方 〆、頼みます? 麺?
兵藤 うん!
──撮影の技術がスゴくなっているから、例えば野球中継とかでスゴい台数のカメラを設置すれば、それぞれを即時に合成して、360度のVRで仮想空間としてのスタジアムで観戦する、みたいなのも技術的にはもうそろそろ出来るっぽいんですよ。
兵藤・四方 へぇー。
──一塁側で観たいとか、外野で観たいとか。もっと言うと、ピッチャーの横で観戦とか、キャッチャーの後ろで観戦するとかも原理的には出来るかもしれないみたいなんです。
兵藤 実際の野球のライブを観る上でそれも選択出来ちゃうってことか。映画の4DX的なことか。
──だから演劇でも、スゴいいっぱいカメラを設置すれば……
兵藤 そういうことだよね。いまそう思った。
──公美さんの横で芝居を体験出来るようになっちゃうかもしれない。
兵藤 そういうの、やりそうな人たち、いるかもね。イベントとして、劇の中で劇をみれますみたいなのとか。
──まぁ映画の中に入ってしまうと、それはもうゲームになっちゃうかもしれないんですけど……ところで、四方さんが今日喋ろうと思っていた1個ってなんだったんですか?
四方 …………言っていいですか?
──なんか予想がつくんですけど。
四方 じゃあどうぞ。
──体重減ったとかそういう話じゃ……
四方 全然。現状維持……あ、7月からは3~4キロくらい減ったんですけど、そこからは変わってないです。
兵藤 …………で? なんですか?
四方 映画の学校なのに、ドラマの話をしますよ! 今年の秋のドラマ、私の大好きな野木亜紀子さんのドラマ、『獣になれない私たち』が始まっているんですけど……
兵藤 『カルテット』の人?
四方 『カルテット』は、坂元裕二さん。
兵藤 あぁ〜〜、そう……
──(笑)
四方 『逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)』とか『アンナチュラル』とかの人で、『逃げ恥』のガッキーと満を持して再タッグでスゴく楽しみにしてたんですけど、それよりも面白いドラマを見つけてしまいまして……
──…………なんでしょう。
四方 『大恋愛』ですね。
兵藤 日本のドラマ?
四方 そうです。若年性アルツハイマーになってしまう戸田恵梨香と、それを支えるムロツヨシ。
兵藤 ムロツヨシって、スゴくあの、元気な人だよね?
四方 そうですね。
兵藤 スタンダップコメディアンみたいな。
四方 そうそうそうそう。
兵藤 じゃあコメディなの?
四方 じゃないんです! あんなコメディアンだったムロツヨシが、ちゃんと普通にドラマをやった結果、シナリオは大石静さんなんですけど、私、ドラマの次の日から3日間くらい、本気でムロツヨシに惚れるっていう。
兵藤 (爆笑)。恋じゃないですか! だから肌の調子いいのかな?
──(爆笑)
四方 恋してるから? やーだー。それを見てたら「あれ、なんかムロツヨシ、かっこうええ!」ってなっちゃって。
兵藤 それはどこのポイントでそう思ったの?
四方 1話では、イマイチ具体性はないんですけど……
兵藤 ちょっとした仕草とか? 荷物持って上げるとか? 面白いこと言うとか?
──スッゴイ聞きますね(笑)。
兵藤 コーヒースゴく美味しく入れるとか?
四方 そういうことでもなくてー。
兵藤 どういうことなのー。
四方 なんだろう、1話目は1回しか見てないからそこまでの所作とかは言えないんですけど、なんかスゴいカッコ良かったんですよ。それからは録画するようになったんですけど……
兵藤 ちなみにムロツヨシはどういう衣装を着てるの?
──なんでそんなことが気になるんですか(笑)。
四方 スゴい貧乏なんです。
兵藤 畳四畳半くらい?
四方 まぁ六畳くらい。
兵藤 じゃあなに、Tシャツとか着てるの?
四方 基本的にはTシャツに……
兵藤 やっぱり半ズボンとか?
四方 いや、半ズボンじゃなくて長ズボン。
兵藤 長ズボンね(笑)。
四方 あとは働いているのがアーク引っ越しセンターなので、その制服。
兵藤 あー、ステレオタイプねー。
四方 基本ぶっきらぼうなんです。
四方 自分が暗記するほど大好きな小説、その小説家がムロツヨシだったんです。その後は鳴かず飛ばずで、今は書いてない。
兵藤 あー。なるほど、そりゃ好きになるわ。論理的に好きになる。それで?
四方 2話目でアルツハイマーが分かって、戸田恵梨香は元々婚約していた松岡くん(松岡昌宏)との婚約が破談になって、戸田恵梨香ももう記憶を失っちゃうからムロツヨシとも連絡を取らなくなるんです。それで「あれれ」となったムロツヨシがご飯に誘うわけです。そこで戸田恵梨香は「私、やっぱり婚約者と結婚するから付き合わない」って嘘をつくんです。ムロツヨシに迷惑掛けたくないから。
兵藤 よくある断り方ね。
四方 だけど、ここが都合いいんですけど、たまたまムロツヨシが引っ越しの仕事に行った場所が、戸田恵梨香が住んでいる隣のマンションだったんです。そこの住民の人に「婚約解消になった」ってことを教わるわけですよ。
兵藤 都合良く噂話しするんだよね?
四方 でもムロツヨシは連絡しない。で、ある日、ムロツヨシと2人で行った居酒屋に行って1人で飲んでいた戸田恵梨香が、帰り道で急に具合が悪くなり、それで思わずムロツヨシに電話を掛けちゃうんですよ。で、迎えに行く。その後、ムロツヨシの家で全部白状します。そしたら「それが原因で結婚がなくなったことに喜んでいる自分に驚いている」って言うんです。で、「どんな病気だろうと、そんなの問題ないよ」みたいなことを言った時に…………ファーって。
兵藤 …………
四方 いやー、泣いちゃった。
兵藤 …………。それは、結ばれた1話目が終わってから、どれくらい経った後の出来事なんですか?
四方 そんなに経ってないと思います。1ヶ月も経ってないはず。
兵藤 それなのに「僕は君が病気でもいい」みたいなことを言う人は…………いません!
──(笑)
四方 だからファンタジーなんです!
兵藤 なるほどねー。
四方 それが例えば超イケメンだったら「ないわー」ってなるんですけど、そこがムロツヨシっていうのがデカいんですよ。
兵藤 リアリティを帯びて見えたんだ。
四方 そうそうそう。そんなことあるなんて思ってないですよ。だけど、それがムロツヨシなんですよ?
兵藤 それが東出くんだったら嘘だと思うんだ。
四方 でもね、ムロツヨシにキュンキュンする女性が多いんですよ。「ムロツヨシがカッコ良過ぎる」って。
兵藤 ホント!? じゃあムロツヨシでTwitter検索するとスゴいことになってるんだ。調べてみよう。ちょっと私、トランプの中間選挙対策を調べてたから、さっき。
四方 …………なぜ?
兵藤 いつもだけど発言がヤバ過ぎてどうなってんだろうって。
──トランスジェンダー排除みたいなやつですよね。
兵藤 そうそうそう。(検索して)ホントだ! キュンキュンするって書いてある!
四方 毛色は違うんですけど、『101回目のプロポーズ』の武田鉄矢みたいなもんですよ。
兵藤 ああー! ポスト武田鉄矢ね。
四方 まぁポスト武田鉄矢って言われたらそれはそれでどうなんだろうと思うんですけど……
──(爆笑)
四方 そのドラマが10年間を描くらしいんですよ。だからここからどうなって行くの?って。
兵藤 じゃあ1回1年くらいは進まないとダメじゃん。
──多分そうは進まないと思いますけど(笑)。最後いきなり5年後とか飛んだり……
四方 最後は自分と戸田恵梨香との日々を小説にする、っていう展開は見えてる。でも、ノーマークの作品だったのでビックリしたんですよ。2話目なんておかわりしましたもん。
兵藤 2回見たってこと? どうしてどうして? あの時のあの顔がみたいとかそういうこと?
四方 そういうわけでもないんですけど……
兵藤 そういうわけでもないの?
──(笑)
四方 もう1回じっくり、みたいな。
兵藤 それは自分に当てはまるみたいなこと?
四方 全然ないですね。
──アルツハイマーではないと(笑)。
四方 もうファンタジーの中で都合のいい人が出て来たってことなんですよ。「こんな男がいたらいいのに!」みたいな。
──自分に関することは否定されない、何でも肯定してくれる感じですかね。
四方 そうそうそうそう。
兵藤 じゃあ第3話の展開を予想をしようよ!
※隣の席のサラリーマンの方々が、楽しそうにし過ぎて、お互いの喋り声が聞き取りづらい状況に──
兵藤 ……(小声で)隣の人たちボリュームがおかしい。
──(爆笑)
四方 (小声で)ストレスたまってるんですかね。
兵藤 (小声で)そだねー。
──「(小声で)」っていうのがこれからずっと付くことになるので、デザートでも頼んでお開きにしましょうか(笑)。
【了】