映画美学校アクターズ・コース ブログ

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映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。アクターズ・コース俳優養成講座2023、9/1(金)開講決定!

アクターズ歴代TA座談会!佐野真規さん(第1期TA)、石川貴雄さん(第2期TA)、しらみず圭さん(俳優育成ワークショップTA) その2

こんにちは、広報アシスタントの川島です。

前回に引き続き、歴代TA(ティーチング・アシスタント)の座談会をお送りいたします!

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アクターズ・コースにいると顔が変わる!?
一番近くでアクターズ生を見ていたみなさんのお話は、まだまだ続きます。

それではどうぞ~!

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川島 修了後の今も私たち俳優育成ワークショップ生としらみずさんはよくお会いしたり、何かを一緒にやったりしているんですけど、講義外でそういうのってありますか?

 

佐野 『月刊 長尾理世』もそうだけど、アクターズ・コースを修了した後に映画美学校映画祭で自分達で芝居を作って一緒にやったりだとか。

 

石川 そうだ、佐野さんは中川ゆかりさん(アクターズ第1期高等科修了生)を演出していた。

 

佐野 それは高等科の講義で山内さんの「一人芝居プロジェクト」というのがあって、それを発展させる形で中川さんが映画美学校映画祭で演劇をやるから「一緒にやろうよ」と声を掛けてもらってやりました。

 

石川 そうだね、映画美学校映画祭は大きなポイントかも。前は映画の上映だけだったけど、学校が渋谷に移転したのもあって演劇も出来るようになったんだよね。

 

佐野 演劇やりまくりましたね。

 

石川 僕も1、2期生といきなり90分くらいの長編とかをやって、茶円茜さん(アクターズ・コース第1期高等科修了生)が一階教室でやったり。

 

川島 アクターズ・コースに関わるまで演劇とかってやったことありました?

 

佐野 いや、全くないです(笑)。

 

石川 そう、だからここではじめて演劇をはじめてやった。それは大きい経験かなぁ。
アクターズ・コースに関わる動機として、演技って、芝居ってみんなどうやっているんだろう、役者ってどういうことを考えているんだろうってことを知りたい、というのがあって。
一方で、映画と演劇ってどう違うんだろうみたいなことをどこかで考えたりとかして。「一緒じゃん!」と思う時もあったりだとか「やっぱ違うな」とか思う時もあったりだとか。結構最初のうちはそんなことばっかりで、飲み会になるといつも皆に聞いていたような気がするなぁ。


しらみず やっぱり演劇と映画の芝居って違うんですかね?

 

石川 でもね、そういう話をしなくなったよね。関わったばかりの時は凄く気にしていたのよ。

 

しらみず 考えなくてもいいんじゃないか、ということなんですかね。

 

石川 いや、取り立てて考えるというよりは、当たり前に考えなくちゃいけないし。

 

しらみず 最初は構えて考えていた、と。

 

石川 そうそう。だから、最初の兵藤さんの講義で演劇をやるじゃない。あの時に「面白い、けどこれは撮れないな」っていうのをはじめて知るわけ。

 

佐野 映画とは違う、という意味でね。

 

石川 演劇と映画はどう違うのか、なんてことを頭の中で考えてはいても、実際に稽古を見ながら「目の前の芝居として面白いけど、これはカメラを構えても撮れないわ」みたいなことを普通に知って。そういうのをいちいち発見したかのように持ち帰っていたね。

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川島 この前、吉岡紗良さん(アクターズ・コース第3期修了生)と高橋隆大さん(アクターズ・コース第2期高等科修了生)にインタビューをしたのですけど、その時にも「映画と演劇というのを区別しなくなった」というような話をされていたんですよね。それも今石川さんがおっしゃったみたいに同じだと思ったから区別しなくなったわけじゃなくて、自由に行き来していたから「こっちはこっちで、あっちはあっち」という考え方をしなくなったっていう。

 

佐野 ああ〜なるほどね。それは面白いね。二人も同じこと言っていたんだ。もちろん違いは絶対あるとは思うんですけど、そうじゃなくて、例えば俳優がいて芝居をするっていうことは基本的には変わらないし、アプローチの仕方みたいなのが……

 

石川 そうでしょうね。だから、カメラがあるのだったらもちろん芝居も変わるし、ということであって。映画か演劇かという考え方ではなくてね。

 

佐野 それこそしらみずくんがフォローしていた話じゃないけど「芝居はやることは変わらないんだから大丈夫だよ」みたいな(笑)。本当に大雑把な感じで捉えるようになったんじゃない(笑)。
両方当たり前のようにやるというのは結構デカいかもしれないですね。もちろん修了してからどっちを活動のメインにしていくか、みんな選んでいったりするけども、学校の段階では分けずにね。

 

石川 川島さんってここに入る前も俳優活動はやっていたよね?例えば撮影現場に行った時に、何か変わった? 自分の演出側の人たちとのアプローチとかやり方とか。

 

川島 ここに入る前の芸歴が凄く短かったし、知り合いとだけで映像を作っていた感じなので、どこか自分が俳優としているというよりは「俳優部を担当しているだけ」みたいな気持ちがあったんですけど、ここに入って俳優扱いをしてもらって、俳優として存在するということに少し慣れたので、それから現場に行く時は「俳優として何が出来るだろう」みたいな、ちょっとした責任感みたいなものは生まれたかなぁ。
あとフィクション・コースの人と関わることも多かったので、少し制作側の事情も知ることが出来たから「今は多分こんなことで困っているのかなぁ」みたいなことは見ていて少しだけ分かるようになったかもしれません。知らない人がスタッフにいてもそんなにビビらなくなりましたし(笑)。

 

佐野 変わることといえば、1期2期とかはもちろん受講期間が初等科・高等科とそれぞれ1年ずつあって長かったのもあるんですけど、現場や講義を経て顔が変わっていく感じがありましたよね。最初入って来た時と、例えば3ヶ月くらいして兵藤さんの講義が終わると「あれ? こんな顔だっけな?」みたいな。
もちろん人によって時期はバラバラで、それは凄く面白かったです。『ジョギング渡り鳥』の撮影後に変わった人もいましたね。「お前、今か!」みたいな(笑)。
※『ジョギング渡り鳥』(以下、『ジョギング』):アクターズ・コース第1期高等科実習作品。

 

川島 私たちも「修了公演やると顔が変わるよ」とよく色々な方に言われていたんですが、どう変わるんですかね? 覚悟が決まった感じですかね?

 

石川 それはあるんだろうね。やっぱりデカいじゃない。中々味わえないよね。それまでに修了公演くらいの規模の創作をやった人はどうかわからないけれど、変化するきっかけかもね、経験として。人として凄く頼もしくなるよね。

 

しらみず それは凄く良く分かります。

 

佐野 そうそう、その感じ。本当に顔っていう意味じゃないのかもしれませんね。


石川 修了公演からみんなも一度「作る」っていうことにがっちり取り組んで、そこからフィクション生もアクターズ生も垣根なく「作る」ということで話がしやすくなるんだと思う。映画でも演劇でもいいんだけど、作品を作るうえで、お互いにどうアプローチしていこうって話が普通に生まれるようになって、そこからはもうTA云々というのは抜きに。

 

佐野 同じ土俵に立てる感じですかね。

 

川島 「自分で作っていこう」みたいな気持ちになるというか。

 

石川 そう、そういう視点が生まれるじゃない? やっぱり演劇は自分たちで作りますもんね。修了制作を経験すると、自分の芝居のことだけでなく共同で「モノを作る」ということを中心に考えようになるから。川島さんとしらみずくんだって何かを「作る」ということに関して、普通に同じ土俵で、そういう関係で話せるでしょ?

 

しらみず そうですね。僕は修了公演を見ていて、もう完全にみんなのことを尊敬していましたもん。「俺だったら出来ねぇな」と思いながら(笑)。

 

佐野 確かにそれは思うわ(笑)。

 

石川 だってまずあんなセリフ覚えられない。

 

しらみず やっぱり顔が変わったんですかね(笑)。畏敬の念というか「凄いな」と本当に思って。正直、一番最初はTAとしてやっている時っていうのは、自分の感情を入れないようにしようと思っていたんです。ある種、俳優として見ていないというか、判断を含めて、受講生達が何をやりたいのかっていうのを中心に考えて、講師の人が何をやりたいのか、ということだけで、講師の判断は入れるけどそれに対して僕が「こうだったんじゃないか」と言うことが間違った判断になるとイヤだなと思って、それを極力入れないようにしていて。でも修了公演見ていて受講生の顔が変わっていて「凄いなぁ」という風に思った。

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佐野 なるほど。

 

しらみず だから、修了公演で俳優としてみんなのことを完全に尊敬しちゃって、後から、俳優としてもっと喋りたいなという気持ちが凄く強くなりましたね。何を感じて、どういう風に動いているのかなぁというのをもっと喋りたかったし、もっと喋ればよかったなぁというのは凄く思いました。

 

石川 同じ土俵というと偉そうだけどさ、俳優としてみんなを見て、それは感じるよね。

 

しらみず 俳優としてもそうですし、自分はアシスタントなので晒してないんですよね。もし演出家とかをしていたら晒さないといけないじゃないですか。

 

佐野 なんだろう、しらみずくん、凄く「晒す」って言うよね(笑)。

 

石川 そうだね、じゃあ晒そうよ!

 

全員 笑

 

しらみず だから、今の自分の課題なんですよね(笑)。

 

川島 しらみずさんはアクターズ修了生だから、たまに人数が足りない時は芝居に入ってくれる時があって、当たり前の話ですけど凄く本気でやってくださるじゃないですか。で、そのことを話した時に、「だって皆さんがそんなに晒しているから僕も晒さなければ」みたいなことを言ってましたね。

 

石川 でもそれはあるかもしれない。以前は「ちょっとだけ出てよ」「イヤだよ、恥ずかしい」みたいなことがあるけど、アクターズ生とやっているとそんな気持ちになれないじゃない?だから「出て」って言われたら俺もスタッフ作業の一つとして「役者」っていうのがあって、みたいな気持ちに……なりません?

 

佐野 俺、そこまでなってないかも(笑)。もちろん「やれ」といわれたらやるけど、そこはスタッフとしてはやるけど、ちょっと違う感じが。

 

石川 ああ、もちろん違いますよ。ただ、前ほど「恥ずかしいな」とか言っていられないなというのは思うようになったかな、という気はしたな。

 

川島 よく役者じゃない人が役者をやると恥ずかしいと言いますよね。私たちも恥ずかしいからそれはそうなんですけど、「私たちは恥ずかしいことしているんだな…」ってたまに思って。

 

しらみず 言い方悪いですけど、やっぱり俳優って本当に堅気じゃないなと思います。

 

全員 笑

 

しらみず 普通の社会生活じゃないところで壁を一個踏み越えないと出来ないな、という風に思いますし。だからこそ、それを安全に出来るという環境が必要なんだろうなという気はしますよね。映画美学校のアクターズ・コースって凄く特殊だなと思うのは、「自分が安心して演技出来る場所」っていうのを自分たちで作らなければいけないという意識が強くて。だからこそ、そこを自分たちで作ってほしいなというのは凄く思っていた。受講生が不安に思っていることとか違和感を感じていることというのを僕は正直分からないので、声に出して言ってくれたらその場で「安心出来る場所」に出来るように「それを言ってくれないと分からないから、言ってくれ」っていう話を僕は凄くしているつもりだったんです。それに対して言ってくれたというのが大きかったのかな。

 

石川 みんな、この地下スタジオを掃除しているもんね。

 

しらみず なかなかフィクション生は掃除しないですよね?(笑)

 

石川 フィクション・コースは「自分たちの場所」というのがないからね。

 

佐野 ここで裸足になって稽古をやるとゆう発想がまずないからかな。ここはあくまで教室として土足で使う場所でしかなくて、感覚が違ってくるのかも。

 

川島 修了公演の前とかになるとだんだん生活染みてきますからね(笑)。

 

しらみず そうですよね(笑)。毎日いるという感じですからね。
『ジョギング』のラスト、エンドロールでこの地下スタジオが映るじゃないですか。感慨深い感じがしますよね。

 

石川 そうね。あれはアクターズ・コースに関わった人とでは見え方が全然違うよね。

 

川島 しらみずさんは俳優養成講座のTAも務められるんですよね。5期にあたる俳優育成ワークショップのTAをやって頂いて、次の6期に当たるTAを担当するにあたっての抱負を(笑)。

 

しらみず 抱負というのはあんまりなくて、基本的にはさっき言ったことと一緒なんですけど、やっぱり俳優っていうのは自分を晒さないと出来ない作業だと思うんですよね。コミュニケーションをするというのもそうで、フィクション・コースとアクターズ・コースでコミュニケーションの方法がちょっと違うという話も、俳優は自分が晒さないといけないからコミュニケーションをしっかり取って信頼関係を築いて自分が安心できる場所を作っていかないと、という想いがより強いんじゃないかという気はしているんですよね。

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同じ様に、学ぶ際には自分たちでその環境を作っていくっていう意識を持たなければいけないし、学ぶにしてもただ講義を受けていたら「どこまで自分の中に残ったのだろう」という違和感もあると思っていて。まー、例え意識が変わってもそれがすぐ身になるといったら多分そうじゃないですけど、兵藤公美さんとかも言っていましたけど、続けていく中で「あ、こういうことだったんだな」ということも多いと思うんです。でもだからこそ、自分から学びに行って欲しいし、自分の求める場所を作っていってほしいなと凄く思うんですよね。そこで、そのアシストというか、手伝いが出来たらいいなという想いはあります。

 

佐野 アクターズ・コースってよく「継続した学びの場」にしたいって講師の人も言うけど、技術って当然半年で身に付けられることではないと思うんですよ。もちろん身に付けるためにやることではあるんだけど、それをいかに未熟な状態でやっていくかっていう場を作るということもあるし、それを川島さんも言っていたみたいに経験がないから分からないようなことの「立脚点」を自分の中に幾つか持てるように準備するための場所、というのもあるのかもしれないですね。
その中でTAとして、もちろんしらみずくんと僕と石川さんでは立場が違ったかもしれないけれど、フィクション生だったからこそやり取り出来たことも多分あったはずで。俳優のことは分からなかったけれどフィクション生のことは逆に分かるから「ここのコミュニケーション、どうしよう」とか「ここで何を悩んでいるんだろう」みたいなことをフォローする、みたいなことは確かにTAとしてやっていたかもしれないですね。

 

石川 僕もTAとして、というより、僕自身が「演技ってどうやってやるんだろう」という気持ちから入って来たから、多分演出側としての方が強くて。
演出って「見る側」じゃない。外から見る人の、ある意味残酷な「芝居をやっている同士ではちょっと言えないな」というような、ちょっと離れた言葉・厳しい言葉を僕とかは「見る側」という前提でいるから言えてしまうところがあって、多分それで受講生も何かを知ることもあったのかな。だからこそ、それで凄く良い関係が作れるのかなって。
もちろん一回「厳しいことを言うようだけど」と前置きはするんだけど「外からはどう見えているのか」というのは自分でやっているつもりのものとは違うことがあるじゃない。それはなかなか言えないかもしれないけれど、僕が「見る側」だから言えたというのがあったのかもしれない。

 

佐野 それはTAとして良い役割ですね。

 

石川 いつもみんなの芝居を講義で見ているしね。

 

佐野 継続して一年とか半年とか同じ人たちの芝居を見るというのは面白い体験だし、関わり方としてTAの役割というのはそこかもしれないですね。講師だったら自分の担当の講義が終われば代わっていってしまうから。

 

石川 それは一つの関係としては珍しいものかもしれない。一回とか二回とかしか見ていない人から色々言われても、ちょっとムッとしたりもするじゃない? でもずっと見ているから言えてしまうところがある。

 

川島 信頼関係もありますしね。

 

石川 その関係の延長で、自分たちで芝居をやったりしたのかもね。去年はしらみずくんも含めて、1期の小田(篤)さん、2期の田中(孝史)くんとも映画美学校映画祭で芝居をやったし。
映画美学校映画祭ってアクターズ生にとっては結構面白くて。フィクション生にとっては、映画祭の前に撮った作品の上映じゃない。それももちろんお祭りなんだけど、アクターズ生にとっては当日にその場で本番をやれるからなかなか面白くて。

 

佐野 学校で学んだことを、同じように学んだ人たちとやり取りして作品を作るというのはちょっと特殊な経験ですよね。修了公演だったら既に決まった演出家がいるけど、そうじゃなくて自分たちで演出家を呼んでやる。外だったら違うバックボーンの人たちとやるから、今まで習った講義の内容は通じないかもしれない。もちろん新しいことをやるからそれを「復習の場」という言い方をしていいのか分からないけれど、それって確かに面白い場になっているなと思うんですけどね。

 

しらみず またそういうのが出来たら面白いですね。修了してから、アクターズの期を跨いで。「映画美学校でやっている芝居って何なの?」みたいな。

 

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佐野さん、石川さん、しらみずさん、ありがとうございました!
そして、しらみずさん、俳優養成講座もよろしくお願いします!