映画美学校アクターズ・コース ブログ

映画美学校アクターズ・コース ブログ

映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。アクターズ・コース俳優養成講座2023、9/1(金)開講決定!

俳優レッスン/積み上げる、実践する

通年で日曜日に実施していた俳優レッスンを行います。基本はダイアローグのテキストを2時間×3回の自主稽古を経てレッスン日に上演していきます。定期的な演技の実践をすることで、各人の課題に取り組み、技術の向上を目指します。(別途稽古時間有り)。(*高等科要綱から抜粋)

山内健司さん、兵藤公美さん、近藤強さんが担当する実技ゼミ「俳優レッスン」。
要綱にある通り、俳優レッスンはアクターズ・コース修了生を対象に開かれていたレッスンでもある。受講生時代修了公演が終わって、今後どうするか、自分はどうしたいのかということを考えていた当時の私にとって、「継続した学びの場」があること、立ち返る場所があるということは非常に心強い存在であった。

ただ、この俳優レッスンは、講師からフィードバックを与えられるだけの講義ではない。レッスン日に向けて自主稽古を設けて、自分たちで課題に向けて稽古を重ね、それを発表しなくてはならない。自分は今回、第2タームを受講している。その模様をレポートに起こしてみようと思う。
(文:浅田麻衣 ) 

レッスン日までの稽古について

レッスン初日では、各々が取り組む課題(脚本)の選定とペア作りを行う(基本的にダイアローグだが、モノローグを希望する場合は1人で取り組んでも良い)。みんながやりたい課題を持ち寄って読んでみるのだが、それがまず楽しい。自分が知らない脚本に出会えたり、また、「課題には向かないかもしれないけど、ただ読んでみたい」という理由で脚本を持ってくるのももちろん可能。
私も今回、10年前に自分が取り組んだ脚本で当時けっちょんけっちょんにお客様にも言われ、個人的にも「なんでこんなにもできないんだろう」と撃沈した脚本を持ってきたのだが、久々に読んで「あれ、なんで当時あんなに自分は苦しんでいたんだろう‥‥」と思うことしばし。(当時の悲惨な思い出が払拭されたのは面白いけれど、その理由がなんなのか考えてみよう)

f:id:eigabigakkou:20210210141402p:plain

レッスンまでの稽古について

ペアが選定された後は、それぞれで稽古開始。
私が一昨年に参加した時はアクターズ・コース第1期の方がペアで、お互い顔は知っているけど、芝居を一緒にやる機会があるなんて思いもしなかった方だった。そのため、まず「初めまして」から始まり、関係を築き合うところ、共通言語つくりから始まった俳優レッスンだった。
今回私のペアは第8期の修了生さんで、一緒に修了公演『革命日記』で共演もした相手。レッスン日までにお互いの予定を合わせ、稽古日を組む。

当日、レッスン日

レッスンは朝10:00〜。この日は兵藤さんが担当。午前中に発表ということで、身体もそれに合わせて起こしていかないといけない。
全員揃った後、まずは「名前鬼」で身体と頭を起こしていく。

※「名前鬼」とは(色々バージョンがあるようですが、ベーシックなものを)
1、参加者で円を作り、1人ずつ自分が呼ばれたい名前を発表。
2、1人鬼を決めて、円の中央に鬼が立つ。
3、鬼にタッチされそうになったら、自分と鬼以外の誰かの名前を呼ぶ。
4、呼ばれた人に鬼が交代。呼ばれた人は「はい!」と挙手をしながら返事をして、亜dれかにタッチしに行く。
5、鬼にタッチされる前に名前を呼べればセーフだが、名前を間違えたり、名前が出てこなかったりして名前を言えずに鬼にタッチをされたらアウト。

「名前鬼」は連続して思考する頭と身体が必要になるので、兵藤さん曰く、稽古前によくやるワークとのことだった。確かに演技中の身体と頭に状態が似ている。
それが終わったら、各ペアで発表スタート。

f:id:eigabigakkou:20210210161618p:plain(個人的には、ただ「やってしまった」感で敗北感でいっぱいでした。稽古始めたばかりの、あの「やってしまった」感は一体なんなんでしょう) 

終わった後は、まず「やってみた感想」を聞かれる。これはどの講師が担当される時も同じ。受講生時代も演じた後はまずこれを聞かれていた。そしてそれを基にフィードバックや、講師から見ての感想、提案が為される。
この「やってみた感想」がなかなか難しい。受講生時代言われていたのは、違和感があったところをそのままにしない、なるべく具体的に、明確に話す。そしてそれを払拭したいのか、もしくはそのままでやってみてもいいのか、今後のプランを明確にデザインするということ。勿論具体性が持てない場合は曖昧なままでもいいが、まず共有するために言葉にするということは「自分で創れる俳優になる」というアクターズ・コースの根幹になることだなと思う。

f:id:eigabigakkou:20210210162524j:plainこの日の自分メモ

この日は、お互いにやってみた感想を話し、その後兵藤さんからの意見と今後のプランについて話し合い、発表終了。

f:id:eigabigakkou:20210124110231j:plain
その後は他ペアの発表を見る。この日は対面での講義が初見だったので、それぞれがどのように仕上げてきたのか、見るのがまず楽しい。そしてフィードバック後に芝居をもう一度返す組があったのだが、そこでの変化も面白かった。

当然のことだけど、二人で稽古している時と決定的に違うのは「観客がいる」ということ。ある組で、観客の方で笑いが生まれたシーンがあったのだが、それは演者としては予見していなかった笑いだったとのこと。ちょっと対応に困ってしまった、という感想が演者から出たが、兵藤さんから「じゃあ笑いがおさまるまで待ってしまっていいんじゃない?」という提案が出る。演者が観客も同じ呼吸に連れていけている証拠だから、そこは笑いがおさまるまで待ってしまってもいいだろう、と。呼吸、リズム、呼吸。

f:id:eigabigakkou:20210124122220j:plain

最初俳優レッスンについて知った時、期を跨いでのレッスンということで、知らない人に当たった時、まずお互いの創作姿勢を知るところから始まるって途方もなく大変だし、自分たちで創作するということに自信が持てなかったため、数年受講を迷っていた時期があった。明確な目的意識がないと、台詞覚えも演技も曖昧な状態でやってしまうということがあるのでは?という危惧。

確かに自分たちで積み上げなくちゃいけないことも多いし、予定も立てなくちゃいけなくて大変な面はあるけれど、過去2回やって少なくとも意識として「適当にやる」ということはないし(まあそもそもそんな意識を持つ人が受けないですよねということも気づいていなかった)途中停滞した時も、「停滞してるわ」という危機感がお互いに生じるので、過去やった演技のワークを引っ張り出してきたり、全く違うアプローチでやってみたりと、俳優視点から創ったらこうなるんだ、ということが見えて面白かった。

あとレッスン日は2回。過程を楽しみながらやっていこうと思う。


文責:浅田麻衣