映画美学校アクターズ・コース ブログ

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映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。アクターズ・コース俳優養成講座2023、9/1(金)開講決定!

『S高原から』公演終了後座談会(第3回/全4回)

大好評のうちに幕を閉じた、映画美学校アクターズ・コース 2017年度公演『S高原から』。

その出演者、そしてアクターズ・コース講師による座談会の模様をお送り致します。

(収録:2018/3/9)

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【座談会参加者】

加藤紗希釜口恵太神田朱未小林未歩髙羽快

高橋ルネ田中祐理子田端奏衛豊島晴香本荘澪

(以上 映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座2017受講生)

川井檸檬、木下崇祥(以上 『S高原から』出演者)

井川耕一郎、兵藤公美、山内健司(以上 アクターズ・コース講師)

 

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小林 佐々木(田中が演じた役)が凄く難しかったですよね。一言一句が凄く難しい役だなと思ったんですけど。

 

田中 どこらへんがですか?

 

小林 なんか、1個間違えると…

 

高橋 用語の説明だから?

 

高羽 説明的なセリフだから。

 

小林 「あの、なんか」は「なんか、あの」ではダメ、みたいな。

 

田中 まぁでも、台本通りに読んでやると、「なんか、そういう」よりも「そういう、なんか」って言いやすくなるから、読めば全然っていう感じでした。私はそれよりも、最初にタバコの演出をつけられたのに、それがなくなったのが悔しいです。

 

田端 イカレてるけどね、サナトリウムでタバコ取り出すやつなんて(笑)。

 

兵藤 セリフが入って来て、なんで自分の言葉になっちゃうのかが私にはよく分からないんだけど…なんでそんなふうになっちゃったのかしら。

 

高羽 自分の場合は、自分の言葉というよりはうろ覚えで、セリフの伝わるであろう情報の部分が言えているところで、自分の中で勝手に心の中でクリアしていた気持ちになっていて。それをボソッと言っていたら、そこを玉田さんに「この台本は、そういうところまで神経が行き届いて組み立てられているセリフだから、こうやって書かれている意味をもう1回しっかり読み直して、反芻して、自分なりに感じ取って、これをそのまま言えるようになって下さい」って言われて、ああなるほどって思いましたね。勝手に自分が、この情報が言えていればいいと思って無意識にやっていたところがあったなと思いましたね。リズムとかテンポとか間みたいなところまで、セリフの語尾やなんでここが「。」なのかみたいなところでどういう意味合いがあるのかとかをあんまり考えてなかったので。そこでやっぱり覚えた気になっていたから、台本にもあんまり稽古中以外は目を通していなかったから、そこで改めてもう1回台本を読み直そうと思いましたね。

 

小林 語尾のニュアンスが自分の中で勝手に変わっているっていうのが一番多くって。湯川さんとかも「語尾をよく変えちゃう」っておっしゃっていたんですけど、自分の言いやすい言い方でしっくりきちゃっているから「〜よね」とか「〜わよ」とか、それに変わった瞬間に崩れ出すみたいな…いま頷いていましたけど、檸檬さんもあったんですか?(笑)

 

川井 いや…(笑)

 

木下 結構一言一句だったよ。どもるとかはないけれど。

 

川井 俺は最初からもう、ホン読みの時点から好きな言い回しで言っちゃっていたから、いつか訂正されるだろうなと思っていたら全く「違うよ」とか言われずに、放し飼い状態でやっていたから凄く楽だったけど(笑)。

 

木下 なかなか玉田は「語尾変えないで」とかは言わない。ただ、確かに稽古とかで聞いていて「これ、ニュアンスちょっと違うな」「ちょっと気になるな、こういうニュアンスで来られると」っていうのはあったから、多分玉田もそういう意味で変えないでと言っていたのかな。違う言い方をすると、多分玉田企画の時は「同じニュアンスだったら語尾を変えていいよ」っていう感じなんだけれど、多分この芝居の場合は語尾とかを変えちゃうとニュアンスがそもそも変わってしまうから、その通りにやってくれっていう感じだったんだと思う。

 

川井 俺の場合は、多分玉田さん的にも、物語的に一番キーパーソンじゃない。俺がどんなに違う言い回しをしたところで、皆さんのストーリーは順調に進んで行くから(笑)。

 

全員 (笑)

 

川井 そういう意味でも玉田さんはストップをかけなかったのかなぁと思って。

 

木下 語尾とかで言ったら、俺は「〜わよ」とかスゲェ嫌だったもん。

 

全員 ああー。

 

木下 ホン読みの時に兵藤さんが「この役は女性もやったことがあって、その時のセリフがそのままになっている」みたいな話をしてくれた時に、その日の帰りに「あの”〜わよ”って書いてあるところ、あれは男言葉に直していいの?」って聞いたら「ああ、いいよ」ってその時は言ったんですよ。で、いざ何回か稽古した後に玉田に「やっぱあそこ、そのままでいこうか」みたいなことを言われて。「書き換えてくる」って言われていたから「ああ、じゃあ男言葉に書き換えてくれるんだ」と思っていたら、そしたら全然書き換えてこないから「どうなっているの?」って聞いたら「いや、そのまんまでいこう」って(笑)。

 

全員 (笑)

 

木下 でもそうやったから、それがキャラクターになったような。

 

田端 そうですね。語尾が「〜わよ」だったからテキトーなやつに見えるように助長されたような気がしますよね。

 

木下 元々テキトーなやつにしようと思っていたんだけど、あれを言える人ってなかなかいないじゃないですか。しかも、いまの僕と同じ年くらいの人で「〜わよ」って言う人はほとんどいないから、相当変なんだろうなって。

 

兵藤 あの「〜わよ」っていうので、そういうコミュニケーションを取る人なんだって一発で分かるっていうか。

 

小林 勝手に以前の上演の際にチャーリーさんが演じていた役の人がそういう口調で喋ったと思っていて。だけど、いざ映像で見たら違いましたね。

 

木下 うん、普通に男言葉で喋っていた(笑)。

 

小林 稽古後半に、以前の公演のDVDを玉田さんがやたらと見たらいいとおっしゃった時期があって。ウチらに脅しをかけるように「DVD、面白かったっすよ」って言って、急遽上映会が行われて。DVD見た人って…手を挙げてもらっていいですか。

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高橋 全員見たんじゃない? 一緒には見ていないかもしれないけれど。

 

小林 とよしー(豊島)とかはどうでした? 自分の役と比較して。

 

豊島 うーん…結構自分がやっている感じと違う感じに見えて。だから役作りのアプローチとして、それで何かを変えた方がいいのかなとかはならなかったけれど、純粋に村西(釜口)と大島(豊島)のシーンのやり取りの間とかテンポとかのバリエーションというか、豊かなコミュニケーションがなされているなって感じて。その場で自由にポンポンポンポンとやっているような感じがしたから、そうやりたいなぁみたいな気持ちにはなりました。

 

小林 あけちゃんとかはどうでしたか?

 

神田 「怒ってるー」って思いました。「最初から凄く怒っているなぁ、何があったんだろう」っていうか。「まぁ怒るよな」とも思いつつも、自分とはやっぱり大きく違うなとは思いましたね。でも最初、私が台本を読んだ時にイメージしていたのは、やっぱりそれぐらいキツくて、自分の主張がはっきりしている人だった。どちらかというと、稽古の初めはそういうつもりでやろうと思っていたんですけど、「あのー、すいません」って話しかける、その一言目から玉田さんに「もっとこの場にスーッと、まるで気づかれないように入って来て下さい」と言われた瞬間から、自分の中で演じた上野のキャラクター像っていうのが大きく変わって、そこから凄くやりやすくなったんですよね。自分に近いというか。寄り添おうとする部分があるというか………………あれ、質問、何でしたっけ?(笑)

 

全員 (笑)

 

小林 いや、合っています(笑)。

 

田端 いいこと言い過ぎてみんな黙っちゃった(笑)。

 

豊島 あけちゃんの「(身振り手振りつきの)早く治して」とか、最初はもうちょっとオモローな感じで、あけちゃんは年上でキャピってするけど「いやいや、いいから」みたいな、ちょっと笑いが起きるシーンだったじゃないですか。(田中)祐理子のタバコとかも、キャラクター性を生かして笑いに持っていく・面白くしていくのかな、そういうところで玉田企画っぽくなっていくのかなと思ったのが、最終的にはそんなに笑いに無理矢理持っていくっていう方向じゃない、純粋に言葉のやり取りで勝負みたいな感じなったのが、凄く面白かったというか。チャーリーさんも言っていたじゃないですか。もうちょっと笑いに持って行くかと思ったって。

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木下 俺も最初そう思っていたけど、それは稽古を見る前に思っていたこと。稽古を見る前にセリフは変えないっていうことは聞いていたんですけど、「あ、じゃあ演出とかで、もうちょっと何かオモローを差し込んでくるのかなぁ」と思っていたんですけど、最初の読み合わせの次の稽古を見た時に、「あ、そんな感じでもなさそうだな」っていうのは何となく思った。というよりも、まぁ笑えるけれども、あれはニヤニヤするというか、その人物がより深くなる要素じゃないですか。「あ、この人ってタバコを吸うキャラクターなんだ」とか。そういうふうに、見ていて色々な情報がバッて入ってくるから、そういう面白さは重要というか、必要な感じはしていた。

 

兵藤 タバコは自分でやり出したってこと?

 

田中 いや。

 

兵藤 じゃあ玉ちゃんが最初に…

 

田中 (被せるように)玉ちゃ…

 

全員 (ツッコむように)玉ちゃん(笑)。

 

田中 (笑)玉田さんが言い出したやつです。

 

兵藤 でもナシにしていったんだ、それ。ふーん、面白い。

 

木下 そういう小さい部分をやるのが、自分でやる時は凄く好きなんですよ。ガムを噛んだりだとか。

 

兵藤 檸檬くんが、チャーリーが立ち上がった瞬間に「殴られるのか!?」「やんのか!?」みたいに反応するのとかね(笑)。

 

木下 あれは春風舎での稽古の時に出来たんだっけ?

 

川井 春風舎の稽古の時に「川井くん、もうちょっと近付いて」って言われたから。それだけだったはずなんですけど…(笑)

 

木下 いや、俺が「近付いていって」って演出をされて、その次に「川井くんも近付いて下さい」っていう演出がついて、それでやってみたらいきなりファイティング・ポーズみたいなのをやったんだよ(笑)。しかも全然近付いてねぇし(笑)。

 

全員 (笑)

 

川井 確か本番の前日くらいに演出を付けられて、稽古が終わった後に2人で「あそこだけちょっとやりましょう」ってなって、自然にそういう身振りが出ちゃったんですよ(笑)。

 

木下 それを2人でやっているのをスゲェ遠くから玉田が見ていて。「いまこんな感じなんだけど、大丈夫?」って聞いたら「うん、これでいこう」って。

 

全員 (笑)

 

小林 世の中の森羅万象が怖い、でしたっけ?(笑)

 

川井 全てのものに意識がいっている、みたいな。

 

小林 すっごい敏感だから、何があってもすぐ反射的に手が出るみたいな。

 

木下 分かる(笑)。もう全身からアンテナが出ている(笑)。

 

豊島 え、それは玉田さんがそう言ったんですか? 森羅万象が怖いって。

 

川井 いや、それは…

 

小林 役作りとして。

 

川井 多分、あのサナトリウムで、本間(川井が演じた役)が多分、一番お客さんと近い人なのかなと思って。まだサナトリウムに入ったばっかりだから。そう思っているんですよ、僕の中では(笑)。

 

小林 近い結果、ああなる(笑)。

 

兵藤 じゃあみんな最初ああいう感じだったんだけど、もうどうでもいいやーみたいになるんだ。

 

全員 (笑)

 

川井 実は本間が一番正しい反応の人なのかなって(笑)。

 

高羽 係分担みたいなところはどうでしたか? こういうのも僕はもう何もかもが初めてだったので。

 

木下 春風舎って大変じゃないですか。例えば、生活係の人はトイレを掃除したりだとか、近隣住民の人に迷惑が掛からないようにしましょうだとか。だから、初めて春風舎で公演をやった時は、全員青年団の俳優さんと一緒にやったので、「あれ、何だろうこの係」って俺も不思議に思った。

 

高橋 青年団では生活係ってポピュラーなんですか?

 

兵藤 超ポピュラー。

 

受講生 へえー。

 

高橋 私も今回の座組で初めて知りました。

 

兵藤 制作が大抵やるよね、お弁当のこととかケータリングのこととか。でも、青年団はそれを俳優が担うっていうやり方でずっと来ていて。

 

木下 大体生活係をやる人は凄い厳しいっていう(笑)。

 

高橋 今回一番忙しそうだった。やることが多くて。

 

兵藤 公演中はね。でも係って、大体同じような仕事量なんだけど、うすーくながーくやる人と、密に一定の期間でキュッとやらなきゃいけない人とか、色々ある。だから、係は誰が一番大変というわけでもなく、負担の期間が様々っていうことなんですよね。それもまぁ、一応演劇がどうやって出来ているかっていうのを知るのが映画美学校のアクターズ・コースの目標なので。みんなが「劇ってこうやって出来ているんだ」っていうことを知る。それで、劇場での振る舞い方も分かるっていうことを目標にやっているので、それは1期からずっとやっている。

 

高羽 今回は、広報でSNSとかブログとかを凄く丁寧にしっかりやっているなと思ったんです。僕は広報ワークショップには出られなかったのですけど、もともとアクターズ・コースとして毎年ああいう取り組みがあるものなのか、それとも…

 

山内 年によって違う。

 

小林 広報という係を決めて、その後にやりたいことは毎年みんなバラバラらしくって。それで、私と那須さんでどんなことをやりたいかというのを挙げて決めていった。彼女は本当にSNSをとにかく活用したいっていう企画を出したから、今回はTwitterもやるということになって、ブログも使うということになった。だからそういうことはあまりやっていない期も多分あったと思う。

 

高羽 全員の個別インタビューとかも?

 

小林 那須ちゃんゴリ押しで。山内さんとかが「大丈夫?」って会議で凄く心配されて「これは負担が大きいものだから、1回ちょっと考えた方がいいと思う」って(笑)。でも那須さんは「やります」って(笑)。

 

豊島 さすが(笑)。

 

小林 「あ、大丈夫ですー、やりますー」みたいな(笑)。でもインタビューは本当に良かったですね。みんなのことが色々と知れたので。

 

山内 ちなみに「これはやって」とかは1つも言っていないからね。稽古がどうなるかも毎年違うから、それもあって決めようがないっていうのもあるし。あと、広報でTwitterを1人で運営するだけでも結構大変だから。だから「出来る範囲を楽しめる範囲でやって」「最低限のことはこういうことをやっているから」っていうことをお伝えして。チラシを何万枚入れて、こういう人に招待を出して、とかそういうことは共有して、「これに足してやりたいことがあったら出して」って言ったらどーんって。凄かったね。お見事でしたね。

 

高羽 那須ちゃん、ずっと稽古場でも自分の出番がない時は裏で記事を打っていましたよね。

 

山内 だって最後の方なんて「2時間あったら1本記事出来ます」みたいなことを言っていて(笑)。凄いよね。

 

小林 那木くんの記事とかがめちゃくちゃ尖っていて。

 

豊島 めちゃくちゃ面白かったね。

 

山内 面白かったねぇ。「現代口語劇って簡単じゃないですか」って(笑)。

 

全員 (笑)

 

豊島 最初めっちゃ尖っているけど、最終的にめちゃくちゃアツく語るっていうのが那木さんぽいなと思って。

 

田端 あれ、如実に分かるよね。あ、こいつ徐々に酔っぱらっていったんだって。

 

高橋 那木さんのインタビュー、凄い反響があって。全然この『S高原から』のTwitterとか見ていない友達が、飛んで飛んでリンクで那木さんのインタビューを読んだらしくて、「あの人カッコいいね!」って。

 

全員 (笑)

 

高羽 それくらいの距離感が一番いいかもね(笑)。

 

田端 そうだよね(笑)。見た目もハンサムだし。

 

高羽 そうそう。それくらいの距離感でカッコいいって思っているだけが一番いいのかもしれない(笑)。

 

高橋 (高羽を指差し)失礼!(笑)

 

田端 那木さんもこの記事読むから!

 

全員 (笑)

 

 

【第4回=最終回は3/25(日)に掲載予定】