修了生トーク(6)小田篤さん(1期高等科修了生)
まだまだ紹介したい人がたくさんいる。そんでもって、さあきたよ。満を持して、の小田篤。映画美学校アクターズ・コースの顔といったら本人はまあ否定するでしょうけれど、それくらい存在感あるんです。
そんな小田さん、この度長尾理世さん(2期修了生)と共同で初監督した短編映画『牛乳配達』が第8回したまちコメディ映画祭in台東の短編コンペティションに見事入選しました!ぱんぱかぱーん、おめでとう!
華々しい監督デビューを飾った小田さんに今の心境を真面目に語っていただきました。どうぞ!
初監督作「牛乳配達」の第8回したまちコメディ映画祭in台東、最終選考ノミネートおめでとうございます! 映画美学校映画祭で拝見して存分に笑いました。まずは本作の見所を存分に語ってください!
ありがとうございます! 嬉しい! 「牛乳配達」は脚本家の五十嵐晧子さんと一緒に脚本を作りました。王道のコメディを目指したつもりです。出演してくれた方々の創り出してくれたアクの強い、愛おしく魅力的なキャラクター達、撮影してくれた中瀬慧さんのめちゃかっこいい画、そして牛乳配達員役の僕の普段の仕事通りの老練な牛乳さばき! この辺りが見所かと。9月21日に浅草公会堂(キャパ1000人!恐い!)で上映、審査されますのでまだ未見の方がいらしたら是非会場にお越しいただければ嬉しく思います!
この 映画は元々2期修了生の長尾理世さんプロデュースの「月刊長尾理世」という企画中の1本で、長尾さんとともに監督・主演を務められていますね。長年俳優活動をされている小田さんですが、監督は初めてでしたっけ。ぶっちゃけ、どうでした?
今回確かに監督を名乗っておりますが、正直いわゆる監督ってほどの仕事はしてないんです。僕も長尾さんも監督としてはど素人だし、脚本は五十嵐さんにほとんど書いてもらったし、現場では一緒に創ってくれた友人達が皆監督の出来る人達だったもんですから、全員演出状態。でも絶対に喧嘩にならないという稀有な現場でした。ひょっとすると映画創りでも監督不在のゼロトップシステムが成り立つのではないか、と思ったりもしています。ただやはり今回が特別で、皆のそれぞれへの信頼とリスペクト、年月で培った関係があってこそ出来た所業で、いつもそんなわけにはいかないよなあ、とも思いますけど。
それにやっぱり誰かが必ず最後まで責任を取らなきゃいけないわけで、撮影終了からついこないだまで長尾さんと二人で新たに音を録音したりアフレコしたり編集を模索し続けたり。でも編集も楽しかったなあ。ほんとちょっと変えただけで物語がみえたり言葉が浮かび上がったり。
美学校に入ってから何人かの講師の方に監督やってみた方がいいよ、と言われていた事もあったし、なにより僕はアクターズコースに1期生として入って、実はそれより前から映画美学校とは一俳優として交流していたこともあって、さてさて映画美学校に俳優科が出来たって事はどういう事だろうか、といつも考えてて、それに対する答えの一つ、一番わかりやすい答え、が俳優が監督になる、て事だろうな、とも思ってましたので、まずは答えを一つ出せてよかったな。と思ってます。まだいくらでも答えはあるので模索していきますけど。
最近は舞台出演も続いていましたが、小田さんといえば『ラザロ』(井土紀州監督)や『大拳銃』(大畑創監督)などインディペンデント映画の人!という印象です。監督という選択肢も加わりましたが、今後はどんな創作活動をしていきたいですか? 何かをつくる時の小田さんのモットーは?
そうなんですよね。内実はどうであれ、今後「牛乳配達」を観て下さった人には僕は監督として認識されていく。その事は逃げずに受け止めたいなと思っています。当たり前か。
最近は僕に音楽制作の依頼をして下さる方もいたりして、僕はいったい何屋なんだろうか? とか思ったりもしたけど、最近は何屋とかもういいか、と思ってます。しいて言うなら牛乳屋です。僕は映画や演劇が大好き! というモチベーションから入ってなくて、だから映画界をどうしようとか演劇の未来を、とかどうしてもうまく考えられなくて、映画美学校で出会う皆さんはしっかりとそこを考えてらっしゃるからほんとなんか申し訳ないなあといつも思ってます。出会った人、この人と何をしたら一番楽しいかなあ? という事しか考えてなくて。それは映画や演劇を創る事だったり、ピクニックやバーベキューをする事だったり、恋をする事だったり、全部同じ地平だと思ってます。表現者やアーティストと言うのはおこがましいけどクリエーターの端っこには自分は居る、とは思ってるけど、創り出す事も、消費する事も、両輪であり根源はあまり違わないな僕の場合。ただ人と出会って面白そうな事、ワクワクする事が浮かんでしまったら、その欲望には忠実でありたいな。と。こんなんでモットーになりますかね?
なりますなります。さて、美学校を経て少し時間が経ちました。改めて今のご自分に生きてるなーと感じるところは?
それはもう腐るほどありますよ腐らせませんけど。どっからいこう。俳優としてはそれはもう僕の知らなかった事を沢山教えてもらいました。映像の現場って時間があまり無いから(もちろん事前に準備はちゃんとしていくんだけど)現場で初めて会う方と芝居してみて「あ、うまくいかないぞ」て事も多々あって、そんな時にとりあえずこれを使ってみようってツールを沢山持てた。それから俳優が自分から発信していく、監督するもそうだし企画立てるもそうだし、そんな事出来ちゃうんだ、って眼を開かせてもらったのも大きいです。それとやっぱり出会い。人も、だけど僕の知らなかった色んな事も。人も事も本当に刺激的で、それは今もずっと続いていて、衝撃を受けたり翻って自分を見たり。一番は、人も事も、僕なんかが思っているよりもっともっと懐が深いのだ。と気付いた事、ですね。
俳優としてご自分の売りと、もし今の悩みがあればこっそり教えてください。
俳優としての売り、は無いです正直。むしろあればどなたか教えて下さい!色んな面白い、いい俳優をみてただただコンプレックスを抱くばかりです!
では最後に、今後の野望をどうぞ!
野望!結婚したい!は置いといて、やっぱり欲望に忠実でありたいです。もちろんなるべく人に迷惑をおかけせずにですけど、ある人が言ってた僕の大好きな言葉があって、「大人こそ夢をみて実行に移した方がいい。子供の頃はいざ実行に移しても、色んな面倒くさい事が降りかかってきて挫折してしまう。そりゃそうだ。子供なんだから。でも、大人になった今なら、どんな面倒くさい事が降りかかってきても、それを一つ一つ解決していくだけの知恵もねばりももう持っている。」ほんとその通りだな、と思います。
……あ、あった!ありました野望!武道館!!何屋でどうやってかはさっぱりわかりませんけど!
はい、最後はいつもの小田さんでした。
美学校の至る所にいる小田さんですが、真面目に答えていただいたインタビューがこうして記録になるのは初めてかも知れません。小田さんはいつも本気です。小田さんはいつも全力です。人一倍汗かいて、走って、よく見て、周りを巻き込んで、引っ掻き回して、背負って、みたいな爆走ドライバーです(ちなみに彼は運転がたいへんうまいです)。いつも近くと遠くを両方見て、なんとか面白いこと起こしてやろうと葛藤して格闘し続けています。会えてよかったな。て、みんな思ってるんじゃないかな。
小田さん、そろそろ幸せになってください。
これからも何かとよろしくどうぞ!
(広報アシスタント・中川)