映画美学校アクターズ・コース ブログ

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映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。アクターズ・コース俳優養成講座2023、9/1(金)開講決定!

なぜ「映画美学校」なのに「演劇」なの? / 映画監督・古澤健さんより

こんにちは!ムビシク応援隊Sです!
もうムビシクという呼び方、勝手にガンガン使っていきますよ!

さてさて。
ムビシクチームは今週木曜日が最後の稽古休みでした。
出演者の皆さんも少しは身体を休められたでしょうか… いや、きっと公演のことで頭がいっぱいになっているのでしょうね。

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アクターズ・コースがスタートして6年。
半年の講義を終えての集大成が「修了公演」なのですが、知り合いからよく聞かれるんです。

「なぜ「映画美学校」なのに「演劇」なの?」

そんな疑問に、アクターズ・コース初年度より携わって頂いている前主任講師である映画監督・古澤健さんからコメントを頂きました!

それではどうぞ!

 

 

:::::「なぜ「映画美学校」なのに「演劇」なの?」:::::

映画の作り方というのは、とても単純であるように思えて、しかし非常に謎めいている。
自分がいち観客であるときには、設計図としての脚本に従って、そこに書かれている出来事を写しとり、物語がわかるように編集をすればいい、そんなふうに考えていたように思う。
そして実際、作り手となったぼくは、おおまかに言えばそういうことを毎度やっている。
しかし、「どうやって映画を作るんですか?」と問われて、そのように簡略化して説明すると、撮影現場で、あるいは編集室でとらわれる、あの謎めいた感じ、が失われてしまう。
どうしてそんなことが起きてしまったのだろう、というのが映画作りの正直な実感だ。
当然、すべては計画通りに行われている。合理的な段取りがなければ、撮影現場はたちまち混沌と化してしまうだろうし、映画は生まれないだろう。
その合理的な段取りは、様々な場所(サークルや映画学校や撮影現場……)で、教えうる技術として伝えられている。
映画美学校でも同じようにそれは「技術」として教えられてきた(「映画美学校」という正式名称は実は2年目からであり、初年度の名称は「映画技術美学講座」であった)。
脚本の技術、撮影・照明の技術、録音の技術、編集の技術、スケジュールの技術……。
感性に逃げるのではなく、技術の集積として映画作りを捉えること。それが正しかったことは、映画美学校で生まれた無数の映画群が実証している。
が、同時に実作を積み重ねることで、どうにも表現しがたい「あの感じ」を何度となく味わうことになった。
あれはなんだろう?
その謎めいたなにか(の一部)を、ある時期以降、映画美学校では「演出」と呼ぶようになった。
しかし、そう呼んではみたものの、映画の演出とはなんであるのか? たとえば脚本の技術については数多くの名著があるが、映画の演出についてだけ書かれた書物はほとんどない。
それは誰もが知っていながら(不思議なことにそれは誰もが知っている。しかし誰もそれを教えてはいない。自分が知っているという自覚もない)、明確な輪郭を与えられていない。
が、あるとき、ひとつ、これは確かではないか、という仮説が立てられた。
「芝居を見ること」
言葉にするととても単純で、当たり前すぎる。
しかし「芝居」を「見る」とはどういうことなのか? 目の前で起きている「芝居」の中から映画を「見出す」ことでもあり、映画から遠い「芝居」を出発点にしながら映画への道筋を「見つける」ことでもある。
しかしそれではまだ「芝居」はまだ視線の先にある対象、客体でしかない。
あの謎めいた感覚のうちのひとつ、それは「芝居」がぼくたちに映画を「発見させてくれる」ことだ。そんな「映画」があったんだ!という素朴な驚き。
ここにきてようやく、映画美学校に俳優の居場所が絶対に必要であるという認識が生まれた。
俳優たちの居場所から、レンズを向けられたその場所から、映画作りはどう見えるのか。そもそもそのような場所をどのように発見するのか(そこが俳優たちの「居場所」たりえるにはどうすればいいのか)。
そこでどのような対話がなされうるのか。
作り手たちの、呼びかけの「言葉」を鍛えなくてはならない。そのためには俳優たちと出会わなければ始まらない。
そして一方、俳優たちが自身の「言葉」を鍛えるためには、映画などとは比較にならぬほどの歴史をもった演劇の力も必要となるだろう。なぜならそこには鍛え抜かれた思考法や技術があるから。
映画の作り方が本当にわかるのは、もう少し時間がかかるだろう。
しかしそのためには、とにかく技術を徹底的につきつめることしかない。その出発点として、映画と演劇が出会う場所が必要とされている。

古澤健
高校生の頃より8ミリ映画を撮り始める。『home sweet movie』が97年度PFFにて入選(脚本賞)。98年、『怯える』がクレルモンフェラン短編映画祭に招待される。『超極道』で脚本家としてプロデビュー。脚本作品として『ドッペルゲンガー』『こっくりさん 日本版』など。監督作品としては『ロスト☆マイウェイ』『making of LOVE』『アナザー Another』『今日、恋をはじめます』『クローバー』など。最新作は4/15(土)公開の『ReLIFE』。 

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2017年3月2日[木] - 3月5日[日]
アクターズ・コース2016年度公演
『Movie Sick ムービーシック』

作・演出:佐々木透(リクウズルーム)
リクウズルーム代表。ク・ナウカシアターカンパニーで演出家・宮城聰のもと俳優として活動。退団後、執筆活動に取り組む。「日本の劇」戯曲賞2013最優秀賞受賞、第5回泉鏡花記念金沢戯曲大賞受賞。 文学への深い知識、鋭い感性と美意識を持ち、”戯曲構造”と”物語の可能性”を探る事をテーマに創作活動を行う。

出演:浅田麻衣、太田英介、大西美香、金岡秀樹、
   鈴木睦海、鈴木幸重、外崎桃子、仁田直人、
   塗塀一海、四柳智惟、米川幸リオン
  〔アクターズ・コース映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座〕
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公演日程
2017年3月
2日(木)19:30〜★
3日(金)19:30〜★
4日(土)14:00〜/19:00〜
5日(日)14:00〜/18:00〜
★=終演後アフタートーク開催〔30分程度を予定〕

※未就学児童の入場はご遠慮ください。 
※受付開始・当日券販売は開演の40分前、開場は開演の20分前 
※演出の都合上、開演後はご入場をお待ちいただく場合がございます。

会場:アトリエ春風舎
〒173−0036 東京都板橋区向原2−22−17 すぺいすしょう向原B1


チケット料金(日時指定・全席自由、予約・当日とも)
一般:2,300円
学生:1,800円※公演当日、受付にて要学生証提示

予約受付はこちらから!
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