映画美学校アクターズ・コース ブログ

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映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。アクターズ・コース俳優養成講座2023、9/1(金)開講決定!

「映画」と「演劇」はどのように異なるのか/講義レポート「高橋洋×佐々木透」

こんにちは!ムビシク応援隊のSです!
さてさて連日の更新となった今回は、先日映画美学校 脚本コースで行われた特別講義「高橋洋×佐々木透」の講義レポートをお送りします!

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映画美学校脚本コース主任講師の高橋洋さん(写真左)と、今回の修了公演を担当する佐々木透さん(写真右)。

 

「映画」とは何か、「演劇」とは何か、そしてその両者が両立することとは…
示唆に富んだアツいレポートを、今回の修了公演に出演する四柳智惟さんが以下のようにレポートしてくれました!

このレポートを読めば脳内がスパークすること間違いなし!
必読!!

 

映画と演劇はどのように異なるのか
高橋洋×佐々木透の対話より


2月11日。映画美学校脚本コースの講義内で、脚本コース主任講師の高橋洋さん(『リング』シリーズ)と、『Movie Sick ムービーシック』作・演出の佐々木透さんによる対談が行われました。

この対談は、今回のアクターズ・コース修了公演を行うにあたり「映画美学校全体を巻き込む」という佐々木さんの意向に基づき行われました。

佐々木さんは戯曲の構造について常に考えており、今回映画美学校からの仕事を受けたとき、「映画」と「演劇」の違いは何か、「映画」をどう「演劇」に取り入れるのかを考えたそうです。
初めに、佐々木さんはト書きの違いについて触れました。
「自分自身は、ト書きをあまり書かず、所作動作を限定せずに空白を作るほうが、面白い作品が作れると考えているが、高橋さんのシナリオを読むと、非常にト書きが多く、小説的な美しさがあり大変興味深かった」
と語ります。

それに対し、高橋さんは
「取り上げられたシナリオはホラー作品であり、人間の外側の物語なので、視覚情報が多く、それに伴ってト書きが増える。対して、人間ドラマはト書きが減り、セリフの比重が多くなる」
と語る。
「自分自身も通常は現場の自由度を高めるために、空白を作る」
と答えます。

この議論の後に受講生から質問が入り、今回の「コースをまたいでコラボしていく発想」についての話に切り替わります。

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高橋さんは、アクターズ・コースの立ち上げのころから振り返る。
「そもそもアクターズ・コースの立ち上げは、映画と演劇両方に対応する役者を養成することを目的としていた」
「「映画」と「演劇」、それぞれの想像力をどのように取り入れると面白いのか」
「これまでの修了公演を観ていて、演劇には「編集」はないと思っていたが、人物の入りとハケによって芝居のどこに重心が来るのかを編集していると感じた」
「このことはワンシチュエーションものの映画にも当てはまり、低予算など物理的制限がかかるなか、これからはこのような映画が主流になっていくのではないかと思っている」

そこから、今度は高橋さんから佐々木さんへの質問が。
「現在、演劇は、テレビ中継でも見られており、その中には映像のカッティングなど、編集も行われているが、「映画」とは異なっている。それはもはや演技の質の段階で違っている。これはなぜなのだろうか」
高橋さんは自身の経験から
「舞台の稽古と、映画の稽古は、はたから見ていると同じものである」
と語る。しかし、
「監督は演技が決まると、カメラポジションを探すようになる。そこから、舞台の映像は記録となり、映画はカメラに向けた演技になるという違いが生まれる」
と語った。

佐々木さんは
「映画の脚本の長い歴史に、脈々とそういったセリフの書き方というのは流れているのではないか」
と指摘する。

高橋さんは、そもそも映画はサイレントから始まったと語る。
「サイレントで高い水準まで映画は作られたが、トーキーの技術が発達することによって、一度演劇のようなセリフの言い方となる」
「そこから、いかにセリフを言うのかが研究され、日常の再現ではなく、不自然だが、本当らしい映画言語というものが開発される。そのあたりは、平田オリザさんの発想に近い」

佐々木さんは、平田オリザさんの功績を話しつつ、今の演劇界の現状に触れる。
「巷には口語体の演劇があふれており、次は何かと探している状態である。演劇言語というものがあるとしたら、そこから何か新たな物語が生まれる可能性がある」

それを受け、高橋さんは、ロマン・ポランスキーの作品を例に挙げる。
ポランスキーは従来の戯曲の映像化の中で優れているものの典型であったが、高橋さんは、映画言語に持ち込めていないとも思っている。
「舞台の映画化を考えたとき、これからは映画言語にもっていく実験をしなくてはならない」

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『Movie Sick ムービーシック』の公演に当たり、佐々木さんは語る。
「少し前から演劇界には映像を流す若干の流れがある。しかし、それは「映画」であるかといわれると「映画」ではない。演劇において「映画」とは何かを考えている」
視点が変わることで、見え方が変わる。これは映像でしか起こせない。このことを演劇で起こせないかと佐々木さんは考えている。

高橋さんは
「これまで、映画が演劇を取り入れるという逆のことは行われてきた。どうなるのだろうか」と、期待をうかがわせた。

※これは、2月11日、映画美学校脚本コースで行われた講義を要約し、編纂したものです。
文責:四柳智惟

 

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2017年3月2日[木] - 3月5日[日]
アクターズ・コース2016年度公演
『Movie Sick ムービーシック』

作・演出:佐々木透(リクウズルーム)
リクウズルーム代表。ク・ナウカシアターカンパニーで演出家・宮城聰のもと俳優として活動。退団後、執筆活動に取り組む。「日本の劇」戯曲賞2013最優秀賞受賞、第5回泉鏡花記念金沢戯曲大賞受賞。 文学への深い知識、鋭い感性と美意識を持ち、”戯曲構造”と”物語の可能性”を探る事をテーマに創作活動を行う。

出演:浅田麻衣、太田英介、大西美香、金岡秀樹、
   鈴木睦海、鈴木幸重、外崎桃子、仁田直人、
   塗塀一海、四柳智惟、米川幸リオン
  〔アクターズ・コース映画・演劇を横断し活躍する俳優養成講座〕
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公演日程
2017年3月
2日(木)19:30〜★
3日(金)19:30〜★
4日(土)14:00〜/19:00〜
5日(日)14:00〜/18:00〜
★=終演後アフタートーク開催〔30分程度を予定〕

※未就学児童の入場はご遠慮ください。 
※受付開始・当日券販売は開演の40分前、開場は開演の20分前 
※演出の都合上、開演後はご入場をお待ちいただく場合がございます。

会場:アトリエ春風舎
〒173−0036 東京都板橋区向原2−22−17 すぺいすしょう向原B1


チケット料金(日時指定・全席自由、予約・当日とも)
一般:2,300円
学生:1,800円※公演当日、受付にて要学生証提示

予約受付はこちらから!
→ 映画美学校アクターズ・コース2016年度公演『Movie Sick』 予約フォーム