[特別企画]本橋龍さん×生西康典さん対談【前編】
映画美学校アクターズ・コース2019年度公演『シティキラー』、公演として皆様にご覧いただくことは叶いませんでしたが、連続ドラマとして『シティキラーの環(わ)』配信中です!
第8環まで繋がっていく『シティキラーの環(わ)』。その後は演劇版フルバージョン配信も予定しております。ご期待ください!
そして去る2月21日(金)、『シティキラー』作・演出の本橋龍さんと、美学校講師である生西康典さんとの対談が行われました。この企画は、アクターズ・コース第9期受講生の瀧澤綾音さんが、美学校をかつて受講していたつながりがあり、実現しました。
対談は1時間にもおよび、とても楽しい時間となりました。
今回は対談の前編です。
ぜひ、ご覧ください!
[プロフィール]
生西康典
1968年生まれ。舞台やインスタレーション、映像作品の演出など。
作品がどのようなカタチのものであっても基本にあるのは人とどのように恊働していくか。
美学校 実作講座「演劇 似て非なるもの」講師。
https://bigakko.jp/course_guide/mediaB/engeki/info
インスタレーション作品:『風には過去も未来もない』『夢よりも少し長い夢』(2015、東京都現代美術館『山口小夜子 未来を着る人』展)、『おかえりなさい、うた Dusty Voices , Sound of Stars』(2010、東京都写真美術館『第2回恵比寿映像祭 歌をさがして』)など。空間演出:佐藤直樹個展『秘境の東京、そこで生えている』(2017、アーツ千代田3331メインギャラリー)。書籍:『芸術の授業 BEHIND CREATIVITY』(中村寛編、共著、弘文堂)。
[対談参加者]
本橋龍、生西康典 、瀧澤綾音
秋村和希、星美里、百瀬葉、山田薫
小駒豪(『シティキラー』美術・照明)浅田麻衣(『シティキラー』制作)
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生西 本橋さんって本名なんですか?「本橋龍」って
本橋 あ、本名です。
生西 すごい名前ですね。
本橋 あ、本当ですか?
生西 「龍」ってだって・・・
本橋 ねえ。そうですよね(笑)
生西 完全、活劇の主人公みたいな感じ。
本橋 「村上龍」からとったって母親が言ってました。
生西 あ、そうなんですか?
本橋 母親が『コインロッカーベイビーズ』がすごい好きらしくて、それで「村上龍」からとったって言ってて。
生西 へえーーー
本橋 ぼく、コイン・・・
生西 ロッカーベイビーズ(笑)
本橋 なんか、そこからとったって、なんか・・
生西 自分で産んどいて(笑)
本橋 そう、そうなんですよ。そうなんですよね。でも「龍」っていうのはでも、ちょっと前は微妙にコンプレックスで。なんかかっこよすぎるなって。
生西 そうですよね。強すぎますよね。
本橋 うんうん。だからなんだろう、いわゆる普通の名前っていうのもわかんないけど、二文字の名前とかの方がいいなあって思ってましたね。でも最近は気に入ってきてる。
生西 お母さんって、何年生まれ?
本橋 お母さん、何年生まれだろう・・ちょっと・・わかんないっす(笑)
生西 何歳くらい?
本橋 50歳くらい・・50・・・何歳か。
生西 多分僕、同じくらいなんですよ。
本橋 はいはい、あ、本当ですか?あ、そうなんですね。
生西 僕いま、51なんで。たぶん、村上龍のその頃のを読んでたってのは同世代くらい。
本橋 あ、なるほど。
生西 それくらい本橋さんと歳が違うんだなって。
本橋 僕は、村上龍さんのものでいうと、ちょうど僕が中学くらいに『13歳のハローワーク』ってやたら流行って。みんな、読めー!みたいな感じで。俺もお父さんに「お前読んだほうがいい」って。
生西 すごい売れてましたよね。
本橋 そうそうそう。「若い人みんなあれを読みなさい」みたいな流れがそんときにあって。
生西 逆にその頃はもう読まなくなってて。あ、昔「W村上、龍と春樹どっち派?」みたいな感じがあって。
本橋 なるほどね。
生西 僕は完全に「龍」のほうを読んでたんですけど。
本橋 へえー、そうなんですね。
生西 春樹のほうはとっつき悪くて。今は完全にね、村上春樹さんのほうがなんかすごい持ち上げられてますけど。
本橋 うん、ですね。あんまり最近は、名前上がらないかもしれない。
生西 瀧澤さんに聞きたかったんですけど。
瀧澤 あっ、はいっ
生西 今日って、この場っていうのはなんで設けられたんですか?
瀧澤 広報の時に・・・「広報会議」みたいなのをしてて。広報するために、「SNSに広報する人」、「お店とかに広報する人」とか・・あと私は美学校に行ったりとか。
生西 瀧澤さん、広報の係もやってるんですか?
瀧澤 あ、みんなでやってます。
生西 あ、みんなで。
瀧澤 全員でそれを分担してやってて。その会議の時に、「あ、私、前行ってた美学校ってところに行きますー」って言って。そのときに、「演劇 似て非なるもの」っていう講座に通ってて、生西さんっていう方が講師で、みたいなこと言ったら、山内(健司)(※)さんが「あっ、じゃあ本橋さんと生西さん、対談すればいいじゃん!」って(笑)
※アクターズ・コース主任講師 山内健司さん。山内さんは劇場で本番があるため、この対談に立ち会うことができません
生西 あ、山内さんがおっしゃったんですね。瀧澤さんの発案じゃないんだ。
瀧澤 そうなんです(笑)それで、あ、はあー!と思って。ああ、私は思いもよらなかったなと思って。
生西 あ、そうなんですね。いや、なんだかわからないけど瀧澤さんに言われたから行かなきゃいけないんだろうなって。
しかも、なんか今日が通し(稽古)でしょ?だから今日来れないかみたいなこと言われて。無理なら稽古の時でもいいんでって言われて。でも、稽古の後になんか喋ってくれって言われても。。。通しでも喋るの大丈夫かなーって思ってたんですけど。
本橋 まあ、個人的には全然作品に関係ない話でいいかなと思いつつ。でもまあ広報って考えたら・・・
生西 そういうふうに言われたんで。「(広報に)使ってもいいですか?」って喋る前から言われて、そんな使えるようなこと喋れんのかなーって。
瀧澤 ごめんなさいっ・・・
生西 いえいえ。
本橋 あ、でもその広報会議っていうのも面白くて。山内さんが先導して、最初に「客席にどういう人がいてほしいですか」みたいなのをみんなで付箋みたいなのに各々書いて。普通にまあ例えば「演劇をやってる人、こういうところ」だとか、そういうのとは全くなんだろう・・・亡くなった・・
生西 人とか?
瀧澤 あ、そう。私、「亡くなったおばあちゃん」って書きました。
本橋 っていうのとかをもう、無造作に付箋に書いていって。壁に貼っていって。そのうえで、「こういう人で客席を満たすためにどういう取り組みをしていこう」っていうことで、みなさんそれぞれで係を分担して。で、それの一環としてっていうこと。
瀧澤 そうです、そうです。
本橋 瀧澤さんがこれ(企画)決まった時「夢みたーい」ってすごい感激してて。
瀧澤 なんかすごい、だって・・・不思議だし。
本橋 ここに生西さんがいらっしゃるってことが・・どうなんですか?実際いらっしゃってみて。
生西 でも人の稽古って見ることないから。
本橋 そうですね
生西 ただまあ、通し稽古だからいわゆる稽古とは違うか。
本橋 そうですね、あんまり稽古の場所っていうのはね・・でも演劇をやってると、人によると思うんですけど、稽古すごい長いですよね。それに対して本番上演するのってすごく短いから。
生西 短いですよね。
本橋 やってる体感として、稽古の時間の方がむしろメイン、ではないけど・・なんか、うん、っていう感じはあったりして。でもそうですね、人の稽古・・・でも結構、なんかいろんなとこ見に行かれる人っていますけどね。
生西 あ、そうなんですね?えっ、「稽古見せてください」って?
本橋 あ、でもたまに「ちょっと見学に来たいです」とか。今回の稽古もね、見学にくる人がいて。
それも広報ワークショップの一環で、いろんな人に稽古場に来てもらってコミュニケーションとれたらいいなっていうので。小さいZINEみたいなのをみんなで作って「稽古、ラフに見学して大丈夫なんですよー」みたいなZINEをチラシにこう一緒に挟んで渡したりっていうこととかやってたりするんですよ。
生西 本橋さん、稽古って知らない人がいると気になりませんか?
本橋 あ、自分の気持ち的に、「誰がいてもOKですよ」っていうふうなのはあるけど、やっぱり誰かいると絶対変わりますよね。さっきも通し終わった後に生西さんがいらっしゃったじゃないですか。やっぱりちょっと喋りながら、「あ、俺ちょっといない時の自分とちょっと違うな」って思いながら。「ちょっとなんかカッコつけてんな」っていうのはあったりとかしました。それ、感じました?
瀧澤 あっ・・雰囲気が。全体の雰囲気がちょっと。
本橋 あ、それはあるよね、絶対に。
生西 通し稽古なら、知らない人がいてもむしろ観客役みたいな感じでいいんだけど。稽古にいるとすごくその人意識しちゃうかも。だから、稽古できないかもしれない。
本橋 むしろ、できない・・・できないっていう・・・
生西 前に、ある公演で「稽古の時間も見せる」ってことをやってて、すごい楽しみに行ったんですけど。明らかに観客をいじりながらやってて。これ、稽古してねえじゃんみたいな。すごいがっかりして帰りました。
本橋 なるほどね。それはそっか・・そうならざるをえない感じだったのかな・・。でもなんか、気持ちとしては、知らない人が出入りしてくるような環境で稽古したいな、みたいな気持ちもあって。
ていうのは、最終的にやっぱり、上演でお客様が入ってきて。そういう状況がもう、稽古の時点である程度慣らされていたほうがよいな、とかは思っていて。
実際に出演してくださっている方々にも「好きに出入りしてくれ」って話してて。全然、スマホゲームとかやってていいし、寝てていいし、みたいなことを言っていて。うん、その延長でふらっと知らない人が入ってきても。
でもやっぱりどうしても見学ってなると「あ、どうもいらっしゃい」ってなっちゃいがちなんですけど。そういうところももうちょっとオープンにできる稽古場みたいなものが個人的にできたらいいなって、その都度思ったりするんですけど。
瀧澤 私なんか、「動物園みたいに見にきてもらいたい」って言ってらっしゃったのすごい印象的で。
本橋 ああ、言った言った。
生西 動物園。今日、(作品の中で)動物園の話出てきましたよね。
本橋 動物園、ぼく、すごい好きで。
生西 あ、好きなんですね。
本橋 はい、好きですね。ん、好き・・・よく行くんですよ。
生西 なんか、(作品の中で)ゾウガメが・・
本橋 ああ、そうですね。行くけど・・なんだろうな。あそこがすごく「わー、いい場所、素敵ー!」っていう感覚ではなくて。行くたびにすごく考えさせられるなって思って。ていう意味で、大学の頃とか授業をさぼって、週2くらいで動物園行ってた時期とかも。年パスとかとって(笑)動物園行ってた時期があって。
特に演劇をやっていて、それに関連することを動物園に行くたびに色々考えるなと思って。
生西 投影してたってことですか?(世の中の)縮図、みたいな感じではなくて?ただ動物を見てるっていうか、仕組み作ってるのも人間ですよね。
本橋 そうですね。でもすごく親和性があるとは思ってたんです。演劇っていうものと動物園で見られてるってこととは。
生西 そう考えると、なんだか悲しいですね。
本橋 えへへ。でもなんか・・あんま、演劇やってて綺麗なものではないなっていうのはすごく感じていて。演劇やってたのは高校とかん時にたまたまその場のノリで演劇部に入って、そのまま引き続きって感じだったんですよ。
生西 あ、そうなんですね。
本橋 なので、結構なし崩し的に続けてて・・続ける流れができてたからやっていたけど、一時期もう演劇やめようみたいな思ってた時期があって。その時期に、あの、旭山動物園ってあるじゃないですか。北海道の。
生西 ええ、ええ。
本橋 あそこで、行動展示っていわれる展示方法・・・動物の、本能的な動きを展示の仕方で誘発させて、見てて楽しい!みたいな、エンターテイメントとして作ってるっていう展示方法に興味が出て。それを調べてるうちに、「もし、出演してる人たちとかがあくまで本能的な、生理的な行動をしてそれが、見てる人にとってすごく面白い」ってなったら、いいな。って思って。そっからなんか立て直して、演劇楽しくなったっていうのはありました。
生西 じゃあ動きとか、動線というか・・その役者さんの動きっていうのは、あまり細かく指示されない?
本橋 そうですね・・(瀧澤を見て)どんな感じですか?やってて?
瀧澤 そういうふうに、受け取ってました。あと、本橋さん「バブって」「バブってろ」みたいな・・
本橋 「バブみ」ってわかります?あの、赤ちゃんの「バブ」・・最近の若者言葉で「バブみ」っていうのがあるんですけど
瀧澤 あ、そうなんだ。
本橋 あ、そうそうそうそう。多分、若者言葉。「バブみ」っていうのがあって。要するに甘えちゃうみたいなのを、「バブみ」っていうんですけど。
最近、いかに「バブって」いけるかだなっていうふうに思ってて。それは演劇に限らず、こう、生活の知恵じゃないけど・・みんながみんなバブってたらいいなっていう。それは単純にワガママをどんどん言っていくことっていうよりは、ちょっとそこに可愛げがあるというか。どんどんちゃんと自分の欲求は言っていって、っていう状況になれたらいいんじゃないか、って思っていて。っていうことで言ってたみたいなことはあります。
瀧澤 そのおかげですごいリラックスして稽古場にいれて。緊張すると自意識とかでてきちゃって、余計な・・なんていうんですかね、硬くなっちゃったりするけど、リラックスしているから、その分のびのびみんなができるかなーって。思ったりします。
生西 まだ、バブみのことがあまり理解できてないんですけど・・
瀧澤 のびのびみたいな。私は、のびのび、みたいな(ことじゃないかと)
本橋 まあ、ね。うん。
生西 自分の主張をしつつ、可愛げを?
本橋 そう、ですね。
生西 世の中、うまく共存させるために?赤ん坊はもともと可愛いから。
本橋 そうですね。あ、たとえば・・俺もそんなにそれについて詳しく考えているわけじゃないけど。「これを動かして」っていう要求があったときに、(硬く)「これを動かしてください」っていうより(口調を変えて)「えー、これ動かしてほしいんだけどー」って言われた方が
瀧澤 そういう感じなんですか?(笑)
本橋 いや、まあ、それが全てじゃないけど
生西 すごい腹立ちそうですね。
一同 (笑)
本橋 あ、でもそう、それで「こわーい」って言えるっていうか、うん。
生西 ツッコめるくらいの?
瀧澤 ああ、そういう感じの・・・?
本橋 まあ、俺も言っててよくわかんなかったけど。単純にみんなが自分の要求を、関係を崩さず、ポジティブに保ちながら要求をお互い言い合える状況があればいいなっていうのはシンプルに思うんですけど。演劇最近作られたりとかってていうのはしてないですか?
生西 してない・・
本橋 演劇に限らずこう、集団で創るときの、縦関係的みたいなものが生まれるなあっていうのに一時期すごい悩んでた時期があって。そういうことってなんかあります?感じたりとかあります?
生西 意識したことなかったんですよ。そういう力があるみたいなことは。もともとあると思ってないし。
本橋 なるほどなあ。
生西 僕は、もともと演劇はすごい遠い存在で。本橋さんと逆なんですけど。
本橋 はいはいはい。
生西 高校とか大学くらいのときって、映画だったり音楽だったり、本だったりすごい好きだったんですけど、演劇だけすごい偏見があって。
本橋 うんうん。
生西 なんか気持ち悪いなって。みんながなんかこう、密接にうにうにやってる感じがすごいやだなーって思ってて。多分見たサンプルが悪かったんだと思うんですけど。ずっと遠かったんで。だからむしろ、観出したのってそんなに前からじゃなくて。自分が創り始めたのもそんなに前じゃなくて。
だからどうやって創ったらいいのかわからないまま創ってるんで。だから逆に言えば、すごいとんでもない要求をしてたりするんだけど、その時は気づかず、後で「あ、よくこんなことやってくれたな」とやっと気づくみたいな。だから、それくらいの感じなので、全然意識できてないです。
本橋 あー、なるほど。僕、演劇のスタート地点が・・なんだろうな・・多分、外の人が「演劇を体験したいけど、演劇ってなんとなくこうだよね」って思ってるような印象のところの中でがっつり初期の頃やっていたから、そこに対する違和感だとか、そういったことは・・・ありますね。
生西 個人的に、ロールモデルがなかったんですよ。最初創り始めたときって、1公演しかやんない公演いっぱいやってて。
本橋 あー。
生西 装置とかもつくったりしてたんですけど。照明が上下する装置とか、そういうのをメディアアートの人に頼んでつくってもらったりとか。そんなことまでやってるのに、全部1公演しかやってなくて。人も集めて。でも、そんなもんだよな、って思ってたんで。
本橋 聞いてて気になったのが、いわゆる演劇というものをやりだしたなっていうときに・・
生西 いや、それは多分・・やりだしてないかもしれない。
本橋 演劇っていうふうにそもそも思ってなく、やってて、ってことですか?
生西 どうなんですかね・・・
本橋 創られているものを、演劇と認識は、そもそも今もしていない、ということなんですかね?
生西 いや、どうなんでしょうね・・
本橋 ああ、そうですよね・・・演劇ってなんなんですかね?(笑)なんなんですかね?っていうか・・・うん・・・
生西 それこそ、街歩いてて、ふと見た光景とかの方が演劇に見えたりすることがあります。むしろ、それらしく舞台上でやってるものの方が全然演劇に見えなかったり。だから、自分の中で「演劇」って多分あるんだと思うんですけど。そういう意味でいえば。
本橋 うんうん。
生西 すごく空々しく感じたりして。街歩いてて見る、はっと見た風景の方がよっぽど演劇じゃん、って思うことがあって。なんかうまく言えないですけど。
本橋 あ、でも・・僕もそういうふうに・・同じことではないかもしれないけど。思うことがありますね。
生西 嘘とか本当っていうんじゃないですけど。すごく空々しいなっていうか。自分には関係ないような気がすることが多くって。
本橋 ああ・・今聞いてて思ったのは、僕もそういったことを考え始めたきっかけを考えて。不思議なもんで、あ、僕もともとは脚本を自分で書くときに、自分の実際にあったエピソードだとか、人が、参加してる人が体験したエピソードを脚本にするっていうことをしていて。実際に体験したことを演劇としてやったらすごく嘘っぽくみえて。あれ?とか思って。「これ多分演劇的に見えちゃうから、多分、もうちょっと自然な感じにしないとね」みたいな話をやってる人としだして。これどういうことだろう?と思って。そういうときになんか色々疑問が出てきましたね・・たぶん、演劇として舞台に置く上で、何かないといけないんだなあ、というか。衣装だとかもすごい考えるんですけど。普段着てきてる服を着てる状態で、「じゃあそれ、衣装としてじゃあそのままいきましょう」ってふうにして、いざこう舞台にそれで立ってもらうと、「なんか衣装っぽいね」みたいな見え方がしたりとか。「なんか狙ってる感じがするね」みたいな。そういうことを結構考えてましたね。
生西 自然ってなんなんでしょうね。「自然に見える」の「自然」ってなんなのかなって。
本橋 結構、コントロールが・・・舞台の上に「あ、自然だね」って見てて思えるものを創る上で、コントロールは必要なんだなって感じましたね。自然・・そうですね・・
生西 すごく、自然じゃないですよね。
本橋 そういうところから、だんだんと・・・むしろ、はっきりしたセリフだとか、決まった動きだとかっていうところのほうに、自然を感じだしたタイミングがあった気がしますね。そうですね・・うん。
なんで舞台上で「自然」をつくろうかって思ったか、みたいな。ちょっと別な話だけど。まるで演劇じゃないようものが舞台で蠢いてるっていうことはすごくずっと興味があって。ちょっと前まではかなり、日常が置いてあるみたいなものを意識してやっていたけど、最近は結構ファンタジックなものがつくれたらいいなっていうふうに、興味が動いてるっていうのはあります。
生西 舞台上の、場所とか重なり方がすごい面白かったです。
本橋 ああ、ありがとうございます。
生西 それが見ててちゃんとわかるし。
本橋 それもね。なんか・・なんなんですかね・・
まあ、元ががっつり演劇をやってた立場だから、よく多くの演劇で取り扱う、「舞台の中に複数のエリアがあって、で、そこは家の中と全く別の場所。カフェだったりとかが隣に並んでて、まったくそこは別のとこ」としてやってるけど、でもすぐ近くにいるよねっていう・・そういう当然のことってのは、演劇やり始めた初期の頃からあれー?と思っていて。そういうことから、今に至ってるって感じはありますね。お客さんがいるとか、もね・・たとえば今こうやって喋ってるのも、絶対(相手への)意識があって、でもこういう録音とかあって、ある程度ここで(観客に)こうやって喋ってるっていう・・
生西 (椅子の角度を見て)この角度が不自然ですよね。
一同 (笑)
本橋 こうなってね
生西 なんだこれは!っていう
本橋 この絶妙な、対談角度ですよ。
瀧澤 なんかそれっぽく・・並べてみちゃった。ごめんなさい。
生西 まあ、そうなんですよね。こうなりますよね。
瀧澤 (同時に)なんか・・・なんだろう・・なんでなんだろう・・・
本橋 (同時に)それでいうと・・あ、ごめんなさい
瀧澤 あ、ごめんなさい、独り言でした
本橋 いや俺も、結構思いつきでベラベラ喋っちゃって・・独り言(笑)
電車の中とかで、いや、電車の中じゃなくてもいいけど。たとえば、仲間たちと集団でいて、でも2人でこうやって話すときに、この人たち(喋る以外の仲間)も意識しながら、この2人で共有してる情報も、なんか説明的になりながら話してるような状況とかもあるじゃないですか。あれも僕は「これは演劇と同じことだな」って感じてて、そういうことも創る上で、すごく、うん。
そういったことの気づきから、どんどん演劇をやることが楽しく、解放されたような。「あ、演劇ってこうやってできるんだ」っていうことになっていきましたね。
生西 結構意識されるんですね。周りにいる人に。
本橋 僕はすごい意識しますね。僕、ずっと「情熱大陸」をやりながら生きてると思ってて。ずっとナレーションが一人でいる時とかも、「この時・・・本橋は・・黙った」みたいな(笑)別にそんなはっきりナレーション考えてないけど。ずっと自分の大作ドキュメンタリー番組みたいなのをやってる気分なんですよね。だから人の目線だとかは昔からかなり意識します。
生西 逆に電車とかって、日本の場合電車の混み具合がすごいのもあるんですけど、目の前にいるのにいないことにしてるほうが多いじゃないですか。みんなスマホ見てたりとか。触れ合っててもその人いないことにしてるし。昔だったらぶつかったら「ごめん」みたいなこと言ってたのが、モノとして扱ってるから、謝りもしないみたいな感じになってて。むしろ、逆に「いるけどいないこと」にしてることのほうがすごい日常で感じるなーと思ってて。僕はむしろそっちの方がすごい気になってるんですけどね。「天の声」は全然僕には聞こえない(笑)
本橋 ああ・・・なるほどね。ああでも、すごくわかります。
生西 「いるけどいないことにしてる」とか「起こってるけど起こってないことにしてる」みたいなことのほうがすごい多いじゃないですか。だって今の日本の状況ってすごいSFみたいだし。悪いSFみたいな状況なので。
本橋 そうですね・・・。結構、電車の中とかでも。あ、話変わるけど、満員電車とかすごいですよね。
生西 すごいですよね。
本橋 あれなんなんだろうって(笑)満員電車、でも俺結構好きなんですよね。
生西 しかも、日本の電車って、時間帯によって座席が上がるじゃないですか。あれって完全に貨物ですよね。
本橋 貨物(笑)確かに確かに。
生西 奴隷船みたいだなと思って。だって実際、アフリカからアメリカに連れてこられたときって、結構死んでるんですよね。めちゃくちゃ詰め込まれて。あと、詰め込まれた人たちも、アフリカっていったって言葉が無数にあるから、いろんなところから集められてて。お互い言葉が通じないみたいな人たちがすし詰めにされて船でアメリカに運ばれて、3分の1くらい死んでるけど、3分の2は生きてりゃまあいいか、みたいな。果物運んでるみたいな感じなのかね。
本橋 ああ・・確かにそうですね。
生西 人間が人間扱いしてないし、されてないようにすごく感じるんですけど。だからむしろ演劇とかで人が集まってつくってる場って、(他人に)向き合わざるをえないし、それがめんどくさいんですけど。でもむしろそういう場があまりないから。そういう意味では大事だなって気もしてるんですけど。だから若いときに一番嫌だった、そういう場が。
本橋 ちょっと話変わっちゃうかもしれないんですけど。今ここで作品づくりをしていて、こんな贅沢な時間を持っていいんだっていうくらい贅沢で。
ていうのは、なんだろうな・・・さっきも言ったとおり係分担っていうことになってて。僕いつも自分一人で主宰して演劇をしてて。たとえばじゃあ、「ちょっと手足りないからこの人に衣装のことお願いしよう」っていったら、「すいません、追加でこういったギャランティでちょっとお願いします」って言って渋々依頼してっていう・・できるだけWin-Winにっていうことばかり考えていて。
それが今、すごいフラットにやらせてもらっていて。自分のやってることとしては、すごく特殊な、今までにあまりないようなつくりかたをさせていただきつつ、すごく、でもこうあるべきだなあみたいなことも感じるっていうか。Win-Winみたいなことばかり最近、世の中的なことも含めて考えてしまうんですけど。もっとシンプルにいけるはずなのになあ、みたいなことも最近この稽古場ですごく思っていて。ありがたい時間だな、なんて思ってますね。全然関係ない話になっちゃうかもしれないんですけど。聞いてて今、そうだなあと。
(続)
収録:2020年2月25日 構成:浅田麻衣