映画美学校アクターズ・コース ブログ

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映画美学校アクターズ・コースの公式ブログです。現在はアクターズ・コース修了生を対象とした「アクターズ・コース俳優養成講座2020年度高等科」が開講中!

アクターズ高等科・講師エッセイ/近藤強さん

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「アクターズ・コース俳優養成講座 2020年度高等科」は6名の講師がそれぞれゼミを担当しています。そのゼミの内容は、講師の皆様がそれぞれ企画しました。今回は『脚本分析 〜シーンを分割する〜』『俳優レッスン』を担当する近藤強さんにエッセイをお願いしました。


アクターズのブログで講師や受講生をインタビューする企画が続いていたので、自分もインタビューされるのかなと思っていたらエッセイを書いて欲しいというお題を頂きました。なので、今回は私、近藤強が徒然のままに綴っていきたいと思います。まずは今回のアクターズコース高等科で担当している脚本分析ゼミについて。 

普段はビューポイントという身体系の講義を受け持っているのになぜに脚本分析ゼミをやるに至ったのか。

理由の一つはコロナの影響でリモート授業やることになっても出来る内容にする必要があったということ。もう一つは、ここ数年続けている俳優レッスンというシーンスタディークラス。このクラスの中で、一つのシーンを同じ感じで演じ通してしまう時に、シーンをビート(区切りの単位)に分けて考えてみては?という話をしたことがあり、今回はそれをじっくりと時間をかけてやってみたかったから。シーンをビートに分ける時は、「新しい人が入って来たり、話題が変わったりしたら、1区切り(1ビート)と考えて、ビート毎に動詞を割り振る」というのが基本の考え方。シーン毎に目的があり、動詞は目的を達成するための道具。いろいろな演技本にも書いてあって、読めばなるほどとは思うのだけど、実践してみるといろいろと難しい。今回はそれを一人ではなくみんなで一緒に考えてみたいと思ったわけです。脚本分析ゼミという名前だけど、読解クラスと言うよりは、俳優がどのように演技を組み立てるのかという視点からシーンを分析する感じ。

 「俳優のためのハンドブック」(原題:A Practical Handbook for the Actor

今回はこの本を参考書として使用。全8回で何とか全部読み通しました。この本の良い点は、タイトルにハンドブックとあるように、演技するプロセスをとても実践的に解説している点、そして薄くて読み易い点。アメリカにいた頃に読んだ本で、僕が2年間通ったネイバーフットプレイハウスという演劇学校の卒業生でもある劇作家・演出家のデイビッド・マメット氏のワークショップを教え子たちがまとめたものです。マメットは日本ではそれほど有名ではないけど、米国演劇界では大御所さんです。わかり易い英語で、例も多用しながらマメットの提唱する演技法を解説しています。今回のゼミでは、日本語版を使いながらも、原本を参照して色々と注釈を加えました。シンプルな英語で書かれてはいるものの、英語ネイティブ向けの本なので、米国の演技クラスで使わる独特の言い方がたくさん使われています。そのニュアンスを限られた語数で翻訳するのはむずかしくて、かなりの部分は口頭で補足しました。

例えば、「Be in the moment」「Be Specific」「Work off your partner」はよく使われるフレーズで、それぞれ「その瞬間にいる」「具体的であれ」「相手役から刺激をもらって演技する」みたいな意味です。シンプルな言い回しだけど、文脈によってちょっとずつ違う意味合いもあり、実際に意識してみると腑に落ちるまでにはなかなか苦労しました。瞬間を生きるって、実際には何を頼りにそこにいようとするのか?具体的ってどう言うこと?何が具体的なの?自分に引き寄せるの?相手から刺激をもらうって?などなど一つ一つごつごつ考えてみた。

f:id:eigabigakkou:20210107142944p:plain脚本分析ゼミ 講義風景

分析対象として使用したのは、平田オリザ作の「隣にいても一人」です。最後まで分析する予定でしたが、結局やれたのは1場だけ。思った以上に時間がかかったのは、見積もりが甘かったのと、現代口語の戯曲をスタニフスラフスキー的な「すべての行動には目的がある」という考えで分析するのは結構難しかった。一見派手なイベントが起きていない場の流れをどう解釈するのか。ある意味、チェーホフの戯曲を分析するようで個人的には楽しめたけど、参加者には少々申し訳なかったです。

この苦行のようなゼミに1期生や複数の期の修了生、約10名が参加をしてくれた。コースを修了してからも、こうしてまた学びの場に戻って来てくれたことがとても嬉しいです。美学校で演技を始めた人、会社員として働きながら演技を学んでいる人、現代演劇の最前線で活動している人など様々な修了生たち。演技に興味を持ったきっかけは色々でも、生活の中に継続して学ぶことが浸透している感じがして嬉しくなります。俳優という仕事への関わり方に関わらず、演技を学ぶことを通して日常が少しでも違って見えたら良いなあと思ってます。

f:id:eigabigakkou:20080226154350j:plainニューヨークで所属していた劇団Collision Theoryの『Time /Bomb』の舞台写真

僕の場合、演劇を始めたきっかけは膝の怪我でした。バスケットボール部の練習中に膝を痛め、1年以上バスケットが出来なかったから、演劇部に入りました。演劇部を選んだ理由は毎日練習していたから。毎日練習がある生活に慣れていたので毎日練習する文化部を探したら、吹奏楽部と演劇部、そして化学部(実際には麻雀クラブ)のみ。楽器は出来ないし、麻雀も弱い、でも映画は大好きだったので演劇部へ。男子は1年生の自分と2年の先輩一人だけ。他に1年女子が5名、2年女子が1名。その後、大学の演劇サークルに入り、大学卒業後に米国のアイオワ大学の演劇学科へ編入して1年間通いました。大学では、舞台美術、シェイクスピア、脚本分析、演劇の歴史、演技I、ムーブメント、などなどいろんな講義を取りました。が、大学での勉強量多さに挫折して、ニューヨークの演劇学校に入り直しました。そこで2年間マイズナーテクニックというメソッド演技の一つを勉強しました。演劇学校は毎日9時から4時まで、マイズナー、ヴォイス、スピーチ、歌、バレエのレッスン。あんなに集中して一つのことを勉強したのは多分これが最初で最後かも。

どうしてわざわざアメリカまで行って演技を勉強したのか?
理由は演技を体系立てて学んでみたかったから。演劇サークル時代に思い切った演技ができず、ギャグとかも苦手で、演技ってどうすれば上手くなるのか悶々としてました。だから、そんな自分もちゃんと勉強したら演技が上手くなれるかもと思ったわけです。

f:id:eigabigakkou:20080226155052j:plainCollision Theoryの『Abduction Projectのキャスト・スタッフのグループ写真 

3年間演技の勉強をして、思っていた成果は得られたのか?
よくわかんないというのが正直なところ。演劇学校を卒業した後も機会があれば、いろんなワークショップに参加してみました。Viewpoints、スズキメソッド、ルコックシステム、モダンダンス、タップダンス、シーンスタディー、インプロなどなど。どれも極めたとはとてもじゃないけど言えないが、いろいろな考えに触れたことで、演技のプロセスを言語化することには慣れたし、いろんなやり方があっても良いと実感した。同じ山頂を違うルートで目指している感じかも。 

僕の場合、やり方なんて何でも良いかもと思えるまでにかなりの時間と移動距離がかかったわけですが、美学校生を羨ましく思うのは、最近はアクターズコース以外でもいろいろと学ぶ機会があること。そして、フィクションコースもあるので学んだことをすぐに実践する場もあるし、製作者と一緒に学ぶ場があること。ひとりで出来ることは限りがあるし、心挫けそうになるので、一緒にやれる仲間を見つけることは俳優続けるための重要な要素だと思っています。その仲間をこれから監督、脚本家などになる人たちの中から見つかられるのは本当に羨ましい。

f:id:eigabigakkou:20210107144141j:plain徒然なままに長々と書いてしまったのでこの辺でおしまいにしたいと思いますが、最後に厚かましくも宣伝を。
3月31日から4月5日に「更地の隣人〜夫が生きてることを願う女と、妻が死んでることを願う男〜」(作・演出:平松れい子)という作品をアトリエ春風舎にて上演します。ここ数年、平松さんとビューポイントのワークショップで短いシーンをたくさん作ったのですが、今回、平松さんがそれらのイメージを基に戯曲を書いてくれました。そこで、10年以上ぶりに重い腰を上げて自ら企画して上演することを決めました。最後にこれを書くとなんだかヤラセ記事みたいだけど、今回の企画立ち上げのきっかけは美学校修了生たちだと思います。先日のミームや修了生が主宰するビューポイントワークショップ、映画や舞台での修了生の活躍。皆さん、俳優だとか演出家だとか、ジャンルや形式とかを軽々と超えていてすごいなあと元気をもらう日々です。自分もこの自由さに20代の頃に触れたかった。現在、9期までで100人近い修了生がいて、彼らの活動を見ていたら自分でも何かをしてみたくなった?かどうかはわかりませんが、間違いなく影響を受けています。だから、皆さん、観に来てね。現場からは以上でした。2021年もよろしくお願いします。

 

近藤 強(こんどう つよし)
1971年生まれ。愛知県出身。三重大学人文学部卒業後に渡米、ネイバーフッドプレイハウス修了。2007年に帰国し、青年団に入団。レトル所属。
青年団以外にはウンゲツィーファ、玉田企画、犬飼勝哉などにも出演。映画:『ミッドナイトスワン』(2020/内田英治)「あの日々の話」(18/玉田真也)『ジェファソンの東』(2018/深田晃司)など。
俳優活動以外には、舞台通訳、企業研修ファシリテーターとしても活動。

http://tsuyoshikondo.com/

Demo Reel/デモリール 近藤強 - YouTube

  

構成:浅田麻衣